条約締結に際しての「国会の承認」
少なからず驚いたことをメモ。
憲法上,内閣は「条約を締結すること」(73条3号)をその事務として行うとされ,それに対し,国会は「事前または事後に承認すること」(同号但書)をその事務として行うとされる*1。
では,この「国会の承認」の対象とは,具体的に何であるのか。
このことにつき,何故か当然のこととして「条約(本文そのもの)」,換言すると,「国会承認とは,法律案の審議と同様に条約の内容を確認したうえで,その内容も含めて承認するものである」と考えていた次第。条約と法律との関係については条約優位説が通説とされていることからすれば,「法律に対して行っていることは,条約に対しても行っているだろう」というように考えても,ある意味自然ではないかと思わなくもない。
しかし,実際は,あくまで憲法は,「条約を締結すること」(73条3号)につき,「国会の承認を経ることを必要とする」(同号但書)と規定しているのであるから,条約内容の本文などは「国会の承認」の対象とならず,いわば単なる参考資料にすぎない,とのこと*2。ちょっと吃驚。
国会の御承認をいただく対象になりますものは、条約の本文ではございませんで、先生御承知のとおり、各案件の一番最初にございますとおり、「砂糖協定の締結について、日本国憲法第七十三条第三号ただし書の規定に基づき、国会の承認を求める。」という一枚の紙が承認の対象でございまして、つまり、憲法に基づきます内閣の条約締結権、そういう締結の行為について国会の御承認をいただくわけであります。したがって、これに付随してございます協定の本文及びそれの正文その他はすべて資料でございます。承認の対象となるものではございません。
■第61回国会昭和44年5月9日 衆議院外務員会18号 高島益郎 説明員
※強調は,引用者による。