ごみ分別違反者を特定するために行う「ごみ袋開封調査」について

クロノス・クラウン - 横浜市の「ゴミ」と「個人情報」


 いくつかメモ。
横浜市

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 横浜市は、2007年9月28日に「横浜市廃棄物等の減量化、資源化及び適正処理等に関する条例」の一部を改正し、市民・事業者ともに、分別区分、排出方法等に従うことについて義務化、さらに2008年5月1日から分別ルール違反者への過料の適用を実施することを決定しました。
 違反者への手続きとしては、分別がされていないごみ袋等を開封して調査を行い、そのごみ袋を出した家庭を特定し、指導を行う。指導後も従わない者に対しては、勧告、命令と手順を踏み、命令後1年以内に従わずにごみを出した者には、罰則(過料2,000円)を科すとしたものです。(調査や指導、勧告・命令・罰則の手続きについては、すべて横浜市職員が行います。)
 制度開始からの2ヶ月間では、開封調査数15,105、不適正排出者の特定件数3,926、指導889件、勧告2件となっており、命令及び過料に該当する事例はまだありません。
(略)

(略)
 開封調査については、分別の徹底のために必要最小限度の範囲内で、守秘義務が課せられている本市職員が行うものであり、また個人情報については、ごみの排出者を特定することのみに使用しておりますので、ご理解をお願いします。

(略)
 特に分別状況が悪いところから重点的に調査・指導を行っており、実績としましては、5月1日から1月までの9か月間で、延べ11,416か所の集積場所を調査し、分別しないでごみを出した方への指導を2,935件行い、指導後も再度分別しないでごみを出した方への勧告を10件行っております。
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  • 横浜市会平成19年第3回定例会(平成19年9月28日)

◆(荻野慶子君)
 私は、市第43号議案横浜市廃棄物等の減量化、資源化及び適正処理等に関する条例の一部改正についてに反対の立場で、請願第7号ゴミ分別で過料を科す条例反対についての不採択に反対の立場で討論をいたします。
 市第43号議案は、G30による分別を徹底するために、家庭ごみ及び事業系ごみの分別を義務づけるとともに、分別違反者に対し勧告、命令を行い、命令を受けた日から1年以内に、分別区分に従わずごみを排出した場合、2,000円以下の過料に処するというものです。(「いいことだ」と呼ぶ者あり)
 提出された議案の第25条2では、廃棄物処理法の第6条第1項の規定により、横浜市が定めた一般廃棄物処理計画に定める分別の区分及び排出方法に従い、廃棄物を排出するように定められていますが、そもそも一般廃棄物処理実施計画は単年度ごとに定められるものであり、あくまでも市長の告示という行政側の計画でしかありません。そして、この計画は、来年の2008年3月31日までという時限つきです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 一般廃棄物処理実施計画では、資源化及び適正処理等に関する条例に基づき単年度ごとの事業計画を定めるとされており、今回提案された条例案では、逆に横浜市が定めた一般廃棄物処理計画に定める分別の区分及び排出方法に従うと定めてあり、完全に逆転をしております。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 また、計画が年度ごとに定められるということは、来年3月以降、分別の内容が変わるという可能性もあり、その内容が議会の議決を得るものとはなっていないため、流動的である分別ルールに基づき条例が定められ、過料が科せられるということ自体、この条例には瑕疵があると考えます。(「そんなこと委員会でやったじゃないか」と呼ぶ者あり)
 環境への配慮が進み、各自治体も分別が細分化されていく傾向がある中で、今後何に対して過料するかについてはさわることもできず、過料することのみが議会にゆだねられるということは、議会としての責任を問われることになります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 過料という重い判断を下すのであれば、そのルールについても市長側の告示に任せるのではなく、議会での議決を必要とされるべきものであり、今回の議案は議会軽視とも言えます。(「正論だ」と呼ぶ者あり)
 そもそも過料という考え方そのものにも大いに疑問があります。横浜市は、他の自治体がごみの分別に取り組んでいる中、高性能と言われる焼却施設でどんなものでも燃やしてきました。その後、2003年1月に横浜G30プランが発表され、それまでのごみ政策から大きく転換し、ごみの分別減量化にやっと取り組み始めました。
 確かに、すべての市民がルールに基づき分別を行っているわけではありません。しかし、G30を始めてから4年経過した今でも、分別方法が市民に浸透しているとは言えず、特に高齢者の方からは、わかりにくいという声があります。
 実際にごみ分別違反者を特定し、過料を科すまで至るには、資源循環局の職員がごみの収集前に違反であるごみ袋を開封し、ごみの中から出した人を特定する住所、氏名が書かれたものを探し出すという作業が必要です。ごみはその家庭のプライバシーが詰まっています。ごみ袋を探られるという行為には多くの人が抵抗感を持っています。
 そして、改善の勧告、命令、過料に処するという手順は、段階を経ているとはいえ、職員は1年間、そのごみステーションに通い続け、取り残しのごみをすべてあけ続けなければならないわけです。また、幹線道路沿いのごみステーションでは、他の地域からごみ袋を運び込むケースもあり、ごみをあければ必ず出した人が特定できるわけではありません。このような過料であるならば、これはおどしにすぎなくなります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 さきの議案関連質疑でも触れましたが、分別違反者を特定する際に、分別困難な障害者や高齢者にたどり着くケースも想定されます。専門家でない職員が、例えば認知症である高齢者や精神的な病を持った人の生活状況や心身状態を理解できるとはとても思えません。条例案では、特別の理由がある場合はこの限りではないとありますが、どのケースは分別を免除されるのかという基準を明確につくることができない、つまり職員の主観に頼らざるを得ないという状況で、公平性が保てると言えません。
 このごみ分別違反者に対する過料は、政令市で初めての試みですが、既に群馬県富岡市では2005年からごみ分別違反者に対する過料が条例化されています。富岡市に問い合わせたところ、これまで過料を科したケースはない、なぜならば違反者の特定が困難であるからだということでした。分別違反者への過料によって発生抑制につながると当局は説明していますが、富岡市の担当者は、過料を条例化することによって分別状況が改善されたとは言えない、発生抑制につながるとは思えないという話でした。
 G30は、地域と市民の協力のもとに行うものです。罰則を振りかざして強制するものではありません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)過料に多くの労力を費やす前に、行政の責任として啓発にもっと力を入れるべきです。
 これまで多くの市民の協力によってG30が行われてきました。単年度計画に基づいた瑕疵のある条例制定は、これまでの市民の協力に水を差すものであり、市民への信頼を裏切るものであると考えます。
 今回のごみ分別違反者への過料は、自主性、主体性を尊重し合い進めていく協働の理念に反するものであるとともに、この条例案そのものが議会を軽視したものであり、まことに遺憾であると申し上げて、私の討論を終わります。(「すばらしい、条例は議会の責任でやるんだから」と呼ぶ者あり、拍手)


札幌市

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マンションを周る札幌市のごみパト隊。今月、札幌市内の特定の家に分別の新しいルールを知らせるチラシを新たに配布しました。

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ごみの違反を開封調査してはがきとか手紙とかに出ている住所をカメラにおさめて、それを元にそのおたくにチラシを入れさせていただいています
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仙台市

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 特に学生や単身の若年層が多い地域については,市職員による排出指導体制を強化して取り組みます。
 排出状況の改善が見られなければ,排出者を特定し,直接改善を指導します
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名古屋市

 名古屋市では、環境事業所が分別不十分な地域へのチラシ配布や立ち番指導、袋の開封調査で排出者を特定しての個別指導等も行い、ごみと資源の分別・適正排出の推進に努めています。