洗髪設備設置義務付けに係る条例改正について

 先般の報道により話題となった「洗髪設備設置を義務付ける旨の条例改正」について。

 あくまでメモでしかなく,誤りが含まれる可能性も大いにありますが,全国の状況をウェブ上にて個人的に把握できた分のみを以下に掲げておくことにします。


【条例改正検討中】

 「大分県理容の業を行う場合に講ずべき措置及び理容所について講ずべき措置を定める条例」第3条第9号には「洗面台や器具等の洗い場には、排水設備を設けること。」と規定されていますが、公衆衛生上の観点から洗髪設備及び手指、器具等の流水式洗浄設備の設置について、明確に規定するように表現を改めるここととする条例改正を予定しています。
 なお、美容所についても同様の条例改正を行う予定としています。

 条例改正により,理容師又は美容師が洗髪を必要と認めた場合や利用者が洗髪を要望した場合等に適切な施術ができることから,理容及び美容の業務が適性に行われるとともに,一層の衛生確保により,理容所及び美容所における公衆衛生の向上が図られます。

  • 群馬県(条例改正提案を決定との報道あり:平成21年9月30日/パブコメ実施:平成21年10月16日(金)〜平成21年11月16日(月))

 県衛生食品課は義務化の理由を「公衆衛生の向上を重視し、総合的に判断した」と説明している。

 検討委員会では、緊急に条例化する必要はないと言う意見があった一方で、近年、アタマジラミ症等が増加してきている状況の中で、衛生実態調査の結果、衛生状態が良好ではない施設の存在等は、衛生面がなおざりになっているのではないかとの指摘や、国家資格を持つ理容師及び美容師が衛生的な見地から、汚染拡大の予防措置として洗髪した後にカットしたほうが良いと判断した場合でも、洗髪設備がなければ、その衛生的知識を生かせず、結果として公衆衛生の確保を十二分に果たすことができなくなるとの指摘もあり、法の目的を達成し公衆衛生の全体のレベルアップを図るという視点からも洗髪設備は必要であるとの意見もありました。

 理容師法及び美容師法の目的は『理容師(美容師)の資格を定めるとともに、理容(美容)の業務が適正におこなわれるように規律し、もって公衆衛生の向上に資することを目的とする』としており、公衆衛生の向上を目的としております。

 また、理容業及び美容業は、県民生活に密着した無くてはならない業種であるとともに、ひとたび衛生状態が悪化した場合、県民生活にとって非常に悪影響を及ぼす、衛生面において特段の注意を必要とする業種でもあり、これら理容業及び美容業の衛生の維持向上を担っているのが理容師及び美容師であります。

 そこで、理容師及び美容師は、より一層の公衆衛生の向上といった観点から、客の頭髪が汚れている場合等毛髪の状態によっては必要に応じて洗髪を勧めることなど衛生の確保にも十分に配慮することが求められており、あわせて、整髪料が頭髪に合わない場合等不測の事態へ対応しすぐに洗い流せるよう、作業の安全を確保することも求められております。

 以上のことをふまえ、県としては、法の目的が公衆衛生の向上であることから、総合的に判断した結果、利用者への多様なサービスの提供や、理容師及び美容師が、その衛生知識を生かし、公衆衛生の確保を十二分に果たせるようにするためには洗髪設備が必要であると判断しました。

 近年、理容業や美容業においては、消費者ニーズの多様化に伴い、カット専門店やシェービング専門店、出張理(美)容など多様な営業形態が見られるようになりました。
 また、新型インフルエンザなどの新たな感染症の出現や、結核や麻しんなどの従来からある感染症が再び注目されるなど、県民の公衆衛生に対する関心や危機意識が高まっています。
 こうした状況の変化に的確に対応し、公衆衛生の一層の維持向上を図るため、理(美)容師法施行条例を一部改正し、洗浄設備の設置規定を整備することといたしました。

 理(美)容所及び理(美)容の業における衛生措置については、理(美)容師法、理(美)容師法施行規則及び理(美)容師法施行条例で規定されており、衛生上の安全が図られています。
 近年、社会の高齢化やライフスタイルの変化など社会状況の変容に伴い、理(美)容業における社会的ニーズも多様化しており、新しい営業形態の出現や営業方法の変化が見られます。
 しかし、これまでの規定ではこのような新しい営業形態への対応ができず、衛生水準の確保について指導が十分行えない状況にありました。
 このため、新しい営業形態、営業方法にも適切に対応できるよう、理(美)容の業務を行う上で必要な衛生措置を「理(美)容師法施行条例」に規定することとします。


【条例改正済み】

  • 北海道(平成12年以前から洗髪設備の義務づけを行っている模様)
  • 青森県(平成12年以前から洗髪設備の義務づけを行っている模様)

 県食品生活衛生課は改正案の狙いについて「カット専門店に洗髪設備をつけて、短時間でシャンプーもカットもできるとなれば、店と客の双方にとって選択肢が増える。これをきっかけに、既存の理容・美容業界を活性化させることが、ゆくゆくは消費者である県民のためになる」と説明している。

 刈り毛や整髪料などが目に入った場合や,客の頭髪にアタマジラミが感染していた場合などの異例の事態に備えるため及び洗顔・洗髪に対する県民のニーズに応えるために,洗顔・洗髪設備の設置を条例で義務付けるものです。

 県生活衛生課は「刃物を使う仕事なので、不測の事態に備える意味でも、衛生水準の確保が必要」と説明している。

 理容所・美容所において「給湯が可能な洗髪設備」を必要な設備としました。

 理容所・美容所における衛生管理の一層の向上を図るため、講ずべき衛生上必要な措置に、洗髪設備の設置を追加しました。

  • 愛知県(ただし,カット専門店については公衆衛生上支障がないとして適用除外としている模様)

 理容所・美容所において必要な設備として洗髪設備を明確にしました。

  • 長崎県(平成12年以前から洗髪設備の義務づけを行っている模様)


【条例改正見送り】

  • 岩手県(条例で義務づけるまでの必要性はないとして条例改正を見送り)

 平成18年9月定例会 決算特別委員会(平成18年10月18日(水))
 なお,強調部分は,引用者による。

ザ・グレート・サスケ委員
 私は環境保全について、理容所の関係についてお尋ねいたします。
 平成16年の3月9日に、理容師法第12条第4号に規定する、条例で定める衛生上必要な措置として、岩手県理容師法施行条例第3条に、洗髪設備を設けることとの条項を加えるよう請願が出されました。これは近年、理容所の業務形態の多様化に伴い、設備等もまた多様化されているが、洗髪設備は理容所において極めて重要な設備であり、従来、本県における理容所はすべて洗髪設備を設けている。また、今後開設する理容所にも同様に、すべて洗髪設備を設けるよう措置することが必要であるとの内容でした。
 頭髪あるいは頭皮等に伝染病疾患がある場合には、公衆衛生上、憂慮すべき事態になりかねないことや、この予防策として、散髪後にその場で直ちに洗浄除去することが公衆衛生上、最善の策と思慮するからであると。理容所の衛生環境の維持・向上のためでもあると。これについて、当時の環境福祉委員会では、理容所における洗髪設備の必置義務の条例化については、衛生水準の向上に関して、収集する情報をもとに今後の国及び他都道府県の動向を勘案して、総合的に判断することとの意見を付して採択されました。
 先ごろ、盛岡市内において、突如、洗髪設備のない理容所が開業されました。平成17年度は、理容所に対しどのような指導を行ったのでしょうか。どのような情報を収集して、どのような動向を勘案して、どう判断されたのでしょうか、お尋ねいたします。


〇加藤環境保全課総括課長
 まず、これまでの対応状況についてお答え申し上げます。
 平成16年3月の請願採択を受けまして、洗髪設備の必要性を検討するため、平成16年11月に、理容業界の関係者、消費者代表、そして公衆衛生の専門家など5人を委員とした理容所衛生措置検討委員会を設置いたしました。この委員会におきましては、洗髪設備のないカット専門店が進出している都府県は29あること。さらに、条例を設けている都道府県は9道県あることなどを踏まえて検討が行われました。そして平成17年3月、次のような報告書が提出されたところでございます。
 すなわち、利用者への多様なサービス提供や、より一層の公衆衛生の向上といった観点からは洗髪設備を設置することが望ましいが、条例で義務づけるまでの必要性はないと考えられる。また、国におきましては、理容所の洗髪設備の設置につきましては、法律上─これは理容師法になりますが、洗髪設備の必置義務までは課していない、このような見解を示しております。
 県といたしましては、当検討委員会の検討結果を受けて、県理容生活衛生同業組合からの請願のありました理容師法施行条例に洗髪設備の必置義務の条項を加えることについては、条例化をしないということとしております。
 なお、利用者とのトラブルを防止するため、保健所に洗髪設備を設けない理容所の開設申請があった際には、利用者にそのサービスの内容を十分に説明するよう、指導することとしたところでございます。したがいまして、先ごろ盛岡市内に開業しました洗髪設備のない理容店につきましても、これまでの店舗と同様の基準で検査を行うとともに、サービスの内容について十分に説明をするよう、指導を行ったところでございます。

  • 東京都(衛生上の問題はないとのことから洗髪設備の設置を義務づける条例改正を見送り)
  • 神奈川県(衛生上の問題はないとのことから洗髪設備の設置を義務づける条例改正を見送り)
  • 栃木県(衛生上の問題はないとのことから洗髪設備の設置を義務づける条例改正を見送り)

 二〇〇五年、洗髪設備の義務付けを県に要望。この時は県が「法律では設備設置の義務はなく、必要性を感じない」とし見送った。

  • 千葉県(衛生上の問題はないとのことから洗髪設備の設置を義務づける条例改正を見送り)

 『カット専門店』では、髪の毛をカットした後に、吸引装置やドライヤーの送風、ブラシまたはハケ等を用いて毛くずを除去しています。あなたは、衛生上、このことをどう思いますか。

  • 特に問題はないと思う(24.5%)
  • 快適ではないが,不衛生であるとは思わない(52.1%)
  • 不衛生である(14.1%)
  • その他(4.9%)
  • わからない(4.3%)
  • 大阪府(衛生上の問題はないとのことから洗髪設備の設置を義務づける条例改正を見送り)

 理容所では、理容師法及び大阪府理容師法施行条例の規定により、器具の消毒や手指消毒のための流水設備を設置することとなっておりますが、当然のことながらカット専門店においてもこれら施設基準を満たしており、洗髪をしないこと、あるいは洗髪設備がないこと自体で衛生上問題が発生するとは考えておりません。

<大阪府環境衛生課・課長補佐>
 「現段階ではそんな問題も現実に起こっていませんし、恐れについても、それほど重大な感覚はない」