ライブドアの弁護人は、捜査にどう対応しているのか?

 単なる疑問。ほとんど報道されていないようなので、一体、どのような対応をしているのかと思って。
 あくまで私限りの想像で、どのような対応が可能であるのか、チョットだけ考えてみたのですが、そのうちの2つが次に掲げるような積極策(?)。多分こうした対応をとってはいない(or とることが(事実上)不可能なの)でしょうけど。

  • 差押え処分に対する準抗告(刑訴法430条1項)
    • 原則として、「必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押さえることができる(刑訴法222条1項の規定により準用する99条1項)」と規定されるように、差押えに際しては、その物に被疑事実との関連性があることが必要。
    • この点につき、たとえば差押えられたサーバ等に保存されたメールの全てが、被疑事実に関係しているとは思えないワケで。「被疑事実との関連性・必要性が認められないデータは差押えできない」として準抗告することも可能なのではないか。
    • 私の管見の限りでは、準抗告を行った旨の報道はなかったはず。
    • 一応、参考になると思われる判例は次のとおり。
      • 令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊する危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許される(最決平10.5.1)
      • インターネット接続会社の会員によるわいせつ図画の公然陳列を被疑事実とする捜索差押許可状に基づいて、当該会社の管理する顧客データを差し押さえた処分につき、被疑者に関するデータは被疑事実との関連性、差押えの必要性は明らかであるが、その余の会員に関するデータについては、そうした関連性、必要性が認められない(東京地判平10.2.27)
    • なお、電子データであれば、可視可読性はなく、また、偽造・変造・消去等が容易であることから、差し当たりの対策として、まとめてサーバ等を占有移転することは「必要な処分(刑訴法222条1項の規定により準用する111条1項)」であり、そのうえでメール等を判読し、被疑事実との関連性・必要性が認められるものと認められないものに分別することが「差押えの処分(刑訴法218条)」なのであるとも考えられよう(この場合は、準抗告対象の差押処分が、分別終了までは未だなされていないことになるのかな。)。
  • 任意の事情聴取への付き添い
    • いわゆる任意の事情聴取に対しては、刑訴198条1項但書の規定に基づき、その出頭要求に応ずるかどうかは、被疑者の任意、すなわち、自由な意思決定に委ねられなければならない。
    • その際において、「弁護士付添いのもとであれば、事情聴取に出頭します」と言わせることも可能ではないか、などと思うのですが。
    • 特に任意の段階においては、「事情聴取においては、弁護人は立会うことはできない」旨の明文規定などはありません。実務上は相当程度困難であることは自明でしょうが、今回の件においては、任意の事情聴取を受ける時点で既に弁護人の依頼をされているのでしょうから、そうした主張もできなくはないのではと思うトコロ。


 しかし、刑事事件に精通している弁護士に依頼しているのでしょうか。それとも証券取引法等に精通している弁護士に、、イヤ、そのどちらにも依頼済みなのでしょうか、、ね?


【追記】非常に興味深いエントリ。
ふぉーりん・あとにーの憂鬱: 「正義」のコスト
 本当に「日本の捜査のやり方の下では、ほとんど『防御』の余地はない」のか。
 個人的にはイロイロと「余地はありうる」のではないかと浅薄ながら考えているのですが、実際問題として「余地はない」のであれば、それはそれで制度(運用)上の問題点として議論すべきことなのではないでしょうか。


【追々記】同様の問題関心からのエントリ。
アメリカの風景 シカゴの法律事務所から:ライブドア問題と民主主義 - livedoor Blog(ブログ)
 より具体的で深みのある考察がなされていて、参考になりました。