平成17年1月10日/意見提出
次のとおり、三重県総合企画局企画開発室あてに、意見提出いたしました。
- (1)検討結果報告(素案)P.5 「『新しい時代の公』とは」 に関して
- 「新しい時代の公」という言葉だけで、行政やNPO、地縁団体等に関わりのない県民が主体的に動き出すのか。
- 具体的なイメージをもったストーリーをつくりあげることが必要なのではないか。
<(1)の意見補足>
「県民のしあわせ」に関わる「新しい時代の公」推進に向けた検討結果報告(素案)であるにも関わらず、その県民の関心を惹くような内容になっているのかどうか疑問に感じます。確かに、行政やNPO、地縁団体等々に関わる人びとにとっては、実際に取り組んでいることの課題解決になるかもしれないと、熱心に考えるかもしれませんが、それらに関わることのないところで生活している県民にとっては、まだまだ具体性がないとしか言えないと思います。
大事なことであり、必要とされることは、具体的なイメージをもったストーリーをつくりあげることではないでしょうか。
※参考までに、極端な例かもしれませんが、「新しい時代の公」推進調査報告書(案)でも数多く話題になっていた「税金」について、具体的なストーリーを考えてみました。
▼「今、あなたが納めている10万円の税金のうち、7万円はこれまでどおり納めてもらいますが、残った3万円は、『あなたの意思』で次のいずれかを選ぶことができるような日が来るとしたら、あなたはどうしますか?
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- 行政に納めてもらってもいいです
- 行政以外の公益的活動を行う団体に寄付してもらってもいいです
- 自ら公益的活動を行う資金としてもらってもいいです
あくまで、例えにすぎませんが、このような問いかけがあったほうが、県民のみなさんが、「自分だったらどうするか」と考えるきっかけとなるのではないでしょうか。
- (2)検討結果報告(素案)P.9 「『新しい時代の公』の担い手」に関して
この検討結果報告(素案)において、「新しい時代の公」とは、
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- 「多様な主体が担い手にならなければいけないもの」と想定されているのか、
- 「多様な主体が担い手になることができるもの」だと考えられているのか、
よりハッキリと明示してほしい。<(2)の意見補足>
検討結果報告(素案)の7ページに、次のような記載があります。
◆県民一人ひとりが、地域の活動に参加することにより、地域の人どうしのネットワークが生まれ、地域や公のことへの関心が強くなると考えられます。そして、地域の人のネットワークが広がり、強化されることは、地域の潜在的な力を向上させ、地域社会の課題解決能力を高めることにつながります。
確かに、地域の活動に参加することも必要なことだと考えられますが、あまりにその「参加」を強調すると、そこから離脱することを否定され、強制になってしまうのではないかとも考えます。つまり、「新しい時代の公」といって、地域共同体に奉仕する“べき”との価値観が、“強制”されないかと心配するとともに、「公を担えない者」が低く見られたりするのではないかと考えられます。
何も「公の担い手となりましょう」と言われなくとも、自らの私的関心や私的利益をもとにして、それを超えたところの「公共」のことだって考えようといった、私的関心から「公共」を考えてきた例は数多くありますし、検討結果報告(素案)でも、次のような表現があります。
◆これまで私的な活動と捉えられがちであった県民による地域のための活動を、「公」の活動として捉え直そう
(検討結果報告(素案)P.6から)
問題は、そのように「公」の活動として捉え直そうとするときに、「公の担い手となる“べき”だ」との価値観が強調されるのではないか、そして、それが一歩間違えると、例えば、「公を担わない者や、担うことができない者」を「義務を果たさない者」とみなしたりとかいった、ある種の特権意識とつながるのではないか、ということです。
そして、その特権意識に基づき、 「公の担い手」意識を過剰に自負することで、「オレたちは、公を担っているんだ。だからこそ、オレたちは正しいんだ。」と言って、異なる意見を排除することにもつながらないかとの憂慮があります。
- (3)検討結果報告(素案)P.6 「行政の役割の見直し」 に関して
この検討結果報告(素案)においては、
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- 「県がやるべきことは何か」だけではなく、
- 「県がどれだけの仕事量を担うべきか」との視点がないのではないか。
もっと県からの規制緩和や権限撤廃に関して、具体的に提言するべきであると考える。<(3)の意見補足>
検討結果報告(素案)においては、「県の取り組み」という言葉のもと、新しい組織の設置とか、新しい会議の開催とか、新しい事業の実施とか、新しいシステム・体制づくりとか、「県の仕事が増えている」だけではないかとの印象があります。
そうしたお膳立てで枠組みができあがると、行政が多様な主体を取り込んでいって、逆に「新しい時代の公」といいながら、行政の関与が増す逆説が生じるかもしれません。また、そうした枠組みができあがると、それまで県民を向いていたNPO等の団体が行政ばかりを向くようになるんじゃないかとの懸念もあるところです。
もっと多様な主体が参加するようになってからでないと、何を規制緩和できるかわからないということかもしれませんが、もしそうであるとしたら、本当にそれでいいのかとも思います。もっと「県の仕事を『新しい時代の公』に任せる」といった趣旨での規制緩和や権限撤廃が、何も「新しい時代の公」推進調査報告書(案)P.74に示されていたとおりに平成22年度からではなく、もっと早い段階から具体的に提言されてもよいのではないでしょうか。
※参考までに、<具体的な提言>を考えてみました。
▼法律や政省令、三重県の条例や規則に基づく「申請に対する処分」を行う際の処理期間の短縮化
▼県庁業務の夜間及び土日対応並びに県議会の夜間又は土日開催
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- <補足>…住民が何か用事を済ませようとするときに、休みをとらなければいけないことは、非常に大きな規制だと考えられます。また、同様に議会も夜間や土日に開催されない限りは、議会を傍聴できない人が多数を占めるだけではなく、そもそも議員に立候補できないという人もいるのではないでしょうか。
▼県庁内文書の透明化
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- <補足>…今後、県庁内で用いられる文書は、そのほとんどが電子化されていくことが考えられます。これらをネット上で常に閲覧できる体制を整備することも、可能となるのではないでしょうか。そして、こうした体制が整備されることは、現時点における「県民側から請求があることが前提となる情報公開」ではなく、「県民が何ら手続を経ることのない情報共有」が可能となると考えます。