滋賀県 國松善次知事 「宇宙船びわこ号の挑戦」

ということで、全国知事リレー講座を聴講。

以下は、個人的なメモとまとめです(あくまで【情トラ】管理人の個人的ノートですので、事実誤認等あればゴメンナサイ。)。


「宇宙船びわこ号の挑戦」−自然と人間がともに輝くモデルづくり−


1 はじめに
 滋賀県とは、全国の1%県である。つまりは、面積も人口も全国の1%であるとのこと。しかし、現在、人口の増加率では日本一であり、ある分析によると2030年まで伸びつづけるということ。そして、「地・知の利」があり、地の利とは、日本の交通網は滋賀を通らざるを得ないことであり、知の利とは、工業系の大学誘致も積極的に行った結果、この10数年間に様々な専門分野を持つ多くの大学が立地し、平成15年4月時点では10大学・3短期大学を数えるとのことである。
http://www.pref.shiga.jp/daigaku/


2 宇宙船びわこ号
 琵琶湖とは、日本一の面積を誇る湖というだけではなく、400万年の歴史を有する古代湖であるとのこと。
http://www.pref.shiga.jp/biwako/koai/know/hist/hist_top.htm
また、滋賀県民だけではなく、近隣府県の住民をあわせて、1400万人が琵琶湖の水を飲料水として利用しているとのことである。
http://www.pref.shiga.jp/biwako/koai/know/water/water_top.htm
 そもそも滋賀県の県境は、そのほとんどが山の尾根が県境となっており、滋賀県に降った雨は全て琵琶湖に流れこむことから、琵琶湖の環境問題等々は、滋賀県全体にとっての非常にシンボリックな問題としてとらえることができる。
 その最初のきっかけとなった出来事が、1977年の琵琶湖に赤潮発生という事件。このときに「えらいことした!」という認識、つまりはきちんとした環境対策を怠ってきたのではないかという反省をもったとのこと。ただし、このとき「企業の工業廃水がその原因ではないか?」とはじめに疑ったが、本当の原因が「合成洗剤を含む家庭からの廃水」にあったときには、より深い対策を考える必要が生じたのであろう。だが、この「家庭廃水」問題では、女性が中心となった一般市民から、いわゆる「せっけん運動」が盛り上がり、ついには「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」が制定されることにより、りんを含む家庭用合成洗剤の使用の禁止が規定されたことは、大きな経験となったであろう。
http://www.pref.shiga.jp/jourei/reisys/honbun/ak00108171.html

 
3 モデル創造立県をめざして
 E+E=C(エコロジー+エコノミー=カルチャー)という造語、合言葉


4 自然と人間にこだわる滋賀の取組
 ○ ライフスタイルの改革
 昨年度、滋賀県庁で実施したのが、サマータイム制度。環境こだわり県と標榜しているからには、ただ議論するだけよりも、実践してみることが大事ではないか、との認識から、まずは、各職場にやるかやらないかを議論させた。その結果、おおよそ半分の職員が、2週間から8週間の間、1時間早く仕事を開始し終了することとした。
 その結果として、ねむたい(!?)とか、稼働時間が延びただけ(=残業が増えるだけ)とかいった様々な意見が出たが アンケートをとったところ、より多く取り組んだ人ほど賛成の比率が高かったということである。また、賛成者の意見も、省エネにつながるとかレジャー時間が増えたという意見を予想していたところ、「家族とのふれあい」や「地域活動への取組み」といった時間が増加したという意見が多数を占めたとのことであった。
http://www.pref.shiga.jp/d/ecolife/gaiyo-summer.pdf

 ○ 新しい産業のあり方
 3K+BI(環境、健康福祉、観光+バイオ、IT)という合言葉

 ○ 社会の新ルール


5 苦悩と決断
 ○ 財政構造改革

 ○ 琵琶湖ルール
 ・外来魚のリリース禁止、・ボート禁止区域の設定、・ツーストロークエンジンの禁止を規定した「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」(琵琶湖ルール)が、2003年4月1日スタートした。特に外来魚のリリース禁止に対しては、パブリック・コメントへ非常に多くの反対意見が提出され、県外からの琵琶湖レジャー利用者を中心にたいへんな議論となったが、一定の方向性を見出すことができたのではないか。
http://www.pref.shiga.jp/d/leisure/

 ○ 遺伝子組み換え作物
 遺伝子を組み換えたことが判明した作物について埋めさせるという対応を行ったところ、県内大学等の学者から大反対の声があがり、県議会でも大議論となった。バイオを推進するとしながら、遺伝子組み替えの長所をも認めないのはどのような認識か(?)ということに対して、ガイドラインを作成するなど苦悩と決断があった。

 ○ サングループ事件訴訟


6 地方分権三位一体改革
 いまのところ、国がきわめて横着な(!)流れをつくっているとのこと。


7 おわりに
 いまは、地域がより主体性をもって、それぞれがモデルを作り出す時代になったといえる。そうしたなかで、ここでは2つの提案をしたい。
 ひとつが、「地方自治」という語についてである。この「地方」という語は、中央政府に対する語として位置付けられているものであり、あくまで独立対等の立場で都道府県なり市町村が位置付けられるものであるのだから、現在の地方自治法を廃止して、「地域自治確立基本法」とでもいうべき新たな法律を制定するべきではないかということ。
 そして、2つめが、「参議院議員に知事がなる」ということである。地域自治は、憲法上からも「法律の範囲内で」という縛りがあるが、その法律の制定過程においては、現状では地方自治体が意見を提出する制度が存在しない。そもそも地域自治を縛ることとなる法律を制定する際には、その地域自治のことをより深く把握している知事の関与が必要なのではないか。とすると、参議院議員に知事がなるということもひとつのアイデアなのではないかということであった。
 

【情トラ】まとめ

 滋賀県民だけでなく、近隣府県の住民も含めて1400万人が飲み水として利用する琵琶湖。この非常にシンボリックな存在があるが故に、“環境”に着目したモデル作りを県のしっかりとした指針に据えることができたのだと思う。いわゆるせっけん条例の制定などは、地域自治のあるべき姿のひとつと評価できるものであろう。
 そして、現在、國松知事が中心となり推進する施策では、環境を重視するだけでなく、環境を重視することをひとつの大きなステイタスとして、産業振興につなげていくという視点が盛り込まれているところに、1歩進んだ印象をもった。通常、環境にまで配慮したビジネスを考えようとすると、コスト増などにより利益減が予想されるのであろうが、だからできないと考えるのではなく、例えば、グリーン購入などの取組みにより、環境に配慮すればするほど利益がでるのだという新しい産業のあり方を提言しているところをより広く深く進めてほしいところである。
 また、そうした提言を、単に言い放しに終わるのではなく、サマータイム制度の実施のように、何はともあれやってみようという姿勢に共感を覚えた。


※参考
http://osaka.yomiuri.co.jp/chiji/ch40415b.htm