平成16年10月25日/idea

 まずは、検討状況報告の内容について、【情トラ】なりに思ったことを掲げてみます。

(p.1)「新しい時代の公」の推進に関する今後の取組については、学識経験者、NPO、地域の団体、企業、自治体職員で構成する「新しい時代の公」推進調査委員会、県職員による「庁内検討会」、インターネットを媒介として県民同士で議論を深める「ネットで県民参画」等を設け、多方面から検討を進めています。

 ⇒「新しい時代の公」推進調査委員会での議論は、http://www.pref.mie.jp/shiawase/kentou/index.htmに掲載されているが、なぜ県職員による「庁内検討会」での議論は、公開されていないのか(、それとも、【情トラ】が見つけられないだけ??)。「検討状況報告」であるならば、県職員の検討・議論も報告し、情報を共有させてほしい。
 また、いわゆる一般市民の声がほとんどないと言えるのではないか。このパブリックコメントにしても、ある程度、関心を持つ人からしか期待できないとも考えられる。巻き込むべきは、あまり関心を持たない人、無関心でいる人のはずであって、たとえば、無作為抽出のアンケートを実施するなどの方法も必要なのではないか。

(p.3)県民一人ひとりが、地域の活動に参加することにより、地域の人どうしのネットワークが生まれ、地域や公のことへの関心が強くなると考えられます。そして、地域の人のネットワークが広がり、強化されることは、地域の潜在的な力を向上させ、地域社会の課題解決能力を高めることにつながります。

 ⇒「県民一人ひとりが、地域の活動に参加すること」が新しい公ということか。現状では、ネット上での同じ興味や趣味嗜好をもつ人びとの繋がりのほうが、新しい公のあり方として実感できる面が多いのではないだろうか。

(p.3)県民一人ひとりにとっても、自分の存在が、地域や他人のためになっているという実感が、人生の充実感につながるともいわれています。

 ⇒果たして実感や充足感だけでよいのかという疑問がある。やはり、何らかの(金銭的なものに限らない)報酬が得られることが必要となるのではないだろうか。

(p.4)主に行政を公の担い手として作られた、現行の制度、システムでは、「新しい時代の公」には、対応できないことがあることを自覚して、行政のあり方を見直すことも求められます。

 ⇒具体的にはどのようなことを行政の側が考えているのか。組織編成なのか。人事なのか。予算編成なのか。それともその他の何かなのか。
 また、そもそも、行政は規制をするものという側面もあり、行政に関与してほしくないという事例もないとはいえないのではないか。

(p.4)県は、多様な主体が共に公を担う社会において、期待される役割を果たします。

 ⇒「期待される役割」とあるが、一体「誰が」期待しているのか。行政に対する不信感がないとはいえないことも自覚する必要はないのか。

(p.4)より住民にとって身近な役割を果たす行政主体としての市町村を尊重し、連携を密にして、広域自治体として期待される役割を果たしていきます。

 ⇒市町村は、県に対して、「どのような」期待をしているのか。何らかの詳細なヒアリング等はされているのか。また、県と市町村との人事交流などの具体策はあるのか。

(p.4)行政は、県民から付託を受けた最も大きな公の主体として、公に関わる情報や資源をもつという自覚をもって、(後略)

 ⇒果たして「行政」に対して、県民は付託をしているのか。県民が選んだのは、首長であり、議会議員であって、「行政職員」に対しては明確な付託を与えているとはいえないのではないか。

(p.5)公の担い手は、県だけではないということを常に自覚し、多様な主体の存在と個性を認め合い、パートナーシップの精神にもとづき、多様な公の担い手との協働により、より大きな成果を生みだすように努めます。

 ⇒一般市民や一般企業と比べ、行政が格段に大きな組織であり、高度な専門性を持つ事実は今後も変わらないと考えられる。そして、何より(多額の借金があるにせよ)莫大な予算を有しているのが行政である。そうした現実をふまえると、パートナーシップの精神といっても、どうしても行政優位という結果になるのではないか。
 このことを克服するためには、難しいかもしれないが、たとえば、何らかの事業を実施するときに、県とあるNPOが協働するのではなく、あるNPO単独で実施させて、それを県は評価するだけというあり方も考えられないだろうか。
 また、たとえば、行政問題に精通した弁護士が、新しい公の担い手を支援するなどのあり方が模索できないか。さらに言えば、NPOなどの活動を行うために早期退職する県職員に対して、退職金の上乗せをするといった制度なんかできちゃったり(!?)しないものか。

(p.6)県民と行政の役割分担の考え方

 ⇒あまりにも抽象的すぎる説明であるように感じる。まだ具体的なものは出すことができないのかもしれないが、それでもひとつふたつは具体例を出してもらえないとイメージが浮かびにくい。

(p.7)県の役割かどうかの考え方

 ⇒市町村との意見交換の前に、その市町村は、当該市町村民の意識やニーズを把握できているのか。

(p.7)開かれた自治体として取り組む3つのポイント

 ⇒そもそも、県庁内での情報共有はできているのか。また、積極的な情報公開・情報提供は、あくまで県庁組織としてのものしかないのか。県職員個々人からの情報提供は考えられないのか。

(p.8)、「みえNPO研究会」(1998年4月三重県設置)は、延べ1500人の県民の皆さんの参画のもと

 ⇒延べ人数ではなく、実数ではどれぐらいなのか。行政職員を含めた数ではないのか。参加者の年齢層や性別ごとの数は把握していないのか。把握していたとして公開することはないのか。



■【情トラ】の全体的な感想(あえてこーゆー表現にしているという側面もありますので、あしからず(^ー^))
 そもそも、こうした「新しい時代の公」という考えがでてきた背景として、行政が全てを担えなくなった現実があるのではないでしょうか。それは、財政的な問題に起因するものであるでしょうし、また、課題のあまりの多様性にも要因があるでしょう。(もし、その推測が外れていないならば、)そうした現実を直視した結果、「何でも行政が担うことはできませんよ、だってお金も(能力も)ないんですもの」と、より小さな政府となることを県民に対して正直に言う必要があるのではないでしょうか。
 この点については、一方では「行政が関わらない公の領域がある」としながら、他方で「県民のみが担う場合においても、活動の内容によっては、今後、行政が担う必要性が生じる」とするところなど、果たして、「大きな政府」と「小さな政府」のどちらを目指しているのかがわかりません。
 協働などというよりも、「この分野に関しては、行政は今後一切いたしません(orできません)ので、県民が何とかやってください。やってもらえる場合には、その分の税金はとりませんので。」といったアプローチの仕方もあるのではないかと考えているところです。
 また、この報告のなかでは、議員の役割が全く記載されていません。これは、まだ議論が尽くされていないからだと思われますが、「新しい時代の公」に関して、議員の果たす役割にはいろいろな可能性もあると考えられるのでしょうから、最終的なものにはきちんとまとめていただきたいと期待しています。
 なお、この議員の役割(というか議員が必ずしも必要とされなくなるかもしれないこと)については、「鳥取県日野郡民行政参画推進会議」という例もあります。この日野郡では、今後、過疎化に伴って問題が増えていくにもかかわらず、地元出身の県議会議員の数が少なくなる/議員がいなくなるという事態に陥ることに対応し、郡民会議が設置され、その委員の選出は、推薦を受けた人びとのなかからの抽選によることにしているそうです。こうした抽選方式によると、従来の選挙による議員選出方法よりも簡便ですし、なにより、老若男女、職業もバラエティ豊かな委員が集まることになって、会議はすごく活き活きした議論が行われ、議論の内容も、子育て・教育・IT・環境といった実際の生活に根付いたものとなっているとのこと。こうした新しい会議の場というものは、今後の地域自治のあり方のひとつのヒントになるのではないでしょうか。
 つまり、抽選だと誰に当たるかわからないわけですから、誰もが心構えをし、それ相応に政治を知っている必要があります。これは、2009年度から導入される裁判員制度とも似たような趣旨を持ち、これまでのお上に頼るという統治客体意識から、自らが重い責任を負うという統治主体意識への転換が図られることになる期待があるわけです。