提出意見/要約

1. 観光基本法(昭和38年法律第107号)との関連をいかに考えるのか
 国において制定されている観光基本法だが、昭和38年6月20日に公布・施行されているにもかかわらず、一般国民にとってはほとんど認知されているとは思えないし、その法が制定されたことで、その目的とするところが達成されたのか、ほとんど明らかではないのではないか。
 今回の条例案においては、このような国の観光基本法の在り方と何がどう違うのか、それとも在り方自体は違わないのか、そして、そのいずれにせよ、40年前とは異なる、今、この現在の状況を、どのようにふまえた上で制定するのか等をきちんと整理しておくべきではないかと意見したい。


2.行政計画の指針としての条例の性格及び具体的な規定の提案について
 本条例案は、万が一、条例として制定すれば、「地域が一体となって観光の振興に取り組む」ことの法的根拠ができるといった考えがあるとすれば、それは本末転倒ではないか。
 実質的に条例として制定すべき内容を有するからこそ、形式的に条例制定手続を経ることが、本来的な条例制定の姿であるはずであり、その意味では、観光振興が、県政運営の中心的かつ重要な課題であることから、議会という公開の場で多様な議論が要請される結果として、条例で制定すべき内容となり、条例の制定手続でなければならないものとなるとの位置づけが可能ではないか。そして、だからこそ、県民が観光振興に関する県政に参画できる制度又は手続を、県が確立しなければならない等、県の行政運営に、県民参画等の制度設定を義務付ける条例という性格も要請されるのではないか。
 今回の素案においては、特に前文ばかりが目立って、単なる宣言文と変わりないように感じる。この点、具体的な観光振興に関する施策及びその実効性は、観光振興基本計画とそれに基づく基本的施策・具体的施策で実現されるのだろうが、この観光振興基本計画を、より実質的な位置づけを行うために、条例において次のような規定を設けることはできないか、以下に具体的な提案を行いたい。


2-2.観光振興基本計画の作成手続を、より詳細に定めることはできないか
 素案では、「知事は、計画を定めるに当たっては、あらかじめ県民の意見を聴き、観光審議会に諮問するとともに、議会の議決を経なければならない」と定めるだけで、具体的にどのような意見公募が行われるのか明らかではない。
 そこで、行政手続法の一部を改正する法律(平成17年法律第73号)により、新しく規定されることとなった、行政手続法の意見公募手続に類似した観光振興基本計画作成における意見公募手続規定を設けることを提案したい。たとえば、「提出された意見の考慮」や「提出意見を考慮した結果及びその理由を示す応答義務」等について、本件条例案に規定することは有意義ではないか。


2-3. 観光振興施策の目標達成等評価手続は、定める必要はないのか
 素案では、「知事は、毎年度、計画に基づく観光振興施策の実施状況を議会及び観光審議会に報告するものとする」と定めるだけで、評価を行うことに関し、何も想定されていないのではないか。また、県民に対する報告・公表もなされてよいのではないか。
 そこで、観光振興施策の実施状況報告にあわせて、議会及び観光審議会が、その報告を評価する等の手続規定を設けることを提案したい。たとえば「観光審議会は、知事からの実施状況の報告を受けて、それを評価するものとする」といった定めを、本条例案に含めることは有意義ではないか。


3. 国や九州各県との連携については規定できないのか
 素案では、「県内外において、広域的に連携した取組を促進すること」とあるが、もし可能ならば、たとえば九州各県や国との連携などと具体的に規定したほうがよいのではないか。