市民の自立と地域主権の自治体

 本日の講師は、 中田宏 横浜市長。人口約355万人、平成16年度予算の全会計総計3兆4,528億円の大都市の首長です。
(※以下は、あくまで【情トラ】管理人の個人的なメモです。講義内容のほか、横浜市役所のウェブサイトの情報を基に、私見も入れつつ構成しています。)
 まずは、自らの座右の銘「先憂後楽」について。この言葉はそのまま先に苦労しておけば、後から楽になる(例えて言うなら「夏休みの宿題は、7月のうちにすませておけ(!?)」)という意味にとらえられることが多いが、本当はそうではない。「世の中の人に先んじて行動することにより、後につづく人たちが楽になるようにする」といった意味でいわゆるリーダーの心得だととらえているとのこと。
 そして、横浜市政について。市長に就任してから、とにかく徹底して改革をすすめてきた。従来までの右肩上がりの時代は終わり、すべからく見直しをしなければならない認識があるが、積極的な情報の公開と提供をきちんと行うことにより、議論やすすむべき方向は自然と収束してくるものである。パワーゲームや感情論で反対があったとしても何の根拠もないことから長続きしないといえる。
 2年前、市長に就任した当初の施政方針演説において、「自由には責任、権利には義務が表裏一体の関係として意識されることが肝要」だと表明している。これは、自由と権利だけが声高に主張される社会であってはならないのであって、自由と責任、権利と義務のバランスが取れていることが重要であり、そうした社会のルールやシステムを構築し運営していくことが求められるとの確信からである。公共という概念があるが、この公共をつくるのは行政だけの役目というわけではない。誰もやらなければ、公共のために必要なことは行政の仕事になっているが、それでは行政の仕事が際限なく増えていく。これを市民やNPO、企業やいろんなセクターが担う社会とならないか。
 具体的な例として、学校の運動場を芝生にするという施策があるが、無条件に芝生化していっても、その芝生の管理を後々誰が行うかといったときに、結局は行政がやることになってしまう。そこで、芝生の管理をその地域住民が行うと手を挙げたところにだけ、芝生化することにしている。これをすすめると、結果として芝生があるところとないところがバラバラになって、差がつき公平主義に反するという考えが従前の考え方であったが、本当にこれが公平・平等といえるのか。何が公平か、何が平等かということは常に問われなれけばならず、責任が伴う公平こそ本来的な意味での公平ではないか。
 同様に、現在「ヨコハマはG30」((G30(ジー・サンジュウ)とは、平成22年度における横浜市のごみ排出量を13年度に対し、30%削減する「横浜G30プラン」の目標達成に向けた、減量・リサイクル行動のこと。)をすすめており、ゴミの15分別に取り組んでいる。横浜市はまだ埋立地などゴミ処理場の容量は確保しようと思えばできなくはない状況にあるが、問題を先送りにして土壇場になってバタバタするようではダメであって、最初からやればムダな費用も必要なくなるのである。15分別というとたいへんなようだが、これも責任のひとつと考えられるのではないか。
 大事なことは、単に題目として、こうした考えをとなえるだけではなく、仕組みとしてどう構築するか。仕組みのなかに「自由と責任、権利と義務」をセットにしてビルトインするかということである。

【情トラ】管理人まとめ
 今回は、中田氏との質疑応答の時間はとれず。そのかわりといってはナニですけど、JLC理事長である大塚耕平さんが壇上に立ち、回答できる範囲でと質疑応答。【情トラ】管理人は、A県やN市の議会議員の方々が会場にいらっしゃることを念頭においたうえで、次のような質問をしました。
 “「市民の自立と地域主権自治体」というテーマで、市民に何が求められているのか、自治体がどのようなシステムづくりを手がけていくべきなのか、といったことに関する大都市の首長である中田さんのお考えはイメージできたところです。ただ、市民と行政との掛け橋ともいえる地方議会議員の役割については、どうあるべきなのか。これは中田さんにも、大塚さんにも伺うべきことではないと思いますが、よろしければ何らかお聞かせいただければありがたいです。”
 これに対しては(、大塚さんのご指名により)、会場にいらっしゃったN市会議員のうちのおひとりに次のようにお答えいただきました(この部分は、このご回答をそのまま記したものではなく、メモを基にして私の理解のうえで構成したものであることをご留意ください。)。
 “市民に1番近い立場で、市民のいろいろな「気づき」を発見し、それらを集約していくことで、きちんとした意見をつくり出し、形にする役割が地方議会議員が担う役割。また、そうした意味から、地域のコミュニティ形成を担う役割である。”
 よくいわれる議会や議員批判に、「果たして議会が人びとの意見を十分に反映しているといえるのか、ある一部の人びとの利害だけを反映しているように思える」との声がありますが、この回答は、こうした批判に対するひとつの回答にもなっていると思います。ありがとうございました。