規制改革【関西】

【1】
■選択的夫婦別氏制は、社会経済環境の変化に立ち遅れた制度を、個人の多様な働き方に対応するための改革の典型例である。この制度は、主要国のほとんどが採用しているが、日本では、長い間進捗をみない。これは、個人の選択能力への不信から規制が必要との考え方があるからだと考えられる。具体的には、「家族の一体性」の論理であり、「外部不経済」の論理である。いずれも規制する側が、国民を低レベルで弱い存在とみなしているからこその論理と言える。また、夫婦同氏が「メリット財」だとの考えもあるが、今や個人単位での経済活動が主流であり、疑問がある。さらに、子どもへの悪影響を心配する声もあるが、何が子どもの利益かを、政府が判断できるという前提に問題があるのだ。画一的な規制の押し付けは、結果的として家族制度の崩壊につながる。大切なことは、多様な家族の形態を許容することだと考えられるのである。


【2】
■「年齢や性別にかかわらず、働きやすい環境を整備する」ために、政府がとるべき措置には、次の2つが考えられる。まず、1つ目が失業者等への職業紹介事業の大幅な民間開放であり、そして、2つ目がパートや派遣労働者の権利保護である。
■1つ目の失業者等への職業紹介事業は、従来、専ら公共の職業安定所が行うものとされており、民間は限定的にしか認められていなかった。この規制により、民間の人材紹介ビジネスの発達が抑圧され、労働市場流動性が妨げられていると重ね重ね指摘されてきたことである。
■1999年には民間の職業紹介の対象職種が原則自由化されたが、たとえば求職者からは手数料を取ることが許されていないなど、疑問の大きい規制措置が残っている。こうした民間取引への不必要な介入は廃し、人材ビジネスの発達をより一層促すべきである。そうすることで、労働力の需要と供給のマッチングが、従来よりもはるかに多様性を持ち、より実効性のあるものになると考える。
■2つ目のパートや派遣労働者の権利保護については、日本では判例によって正規社員の解雇が不可能に近く、そのため不景気による雇用調整の負担はパートや派遣社員に一方的に押しつけられている。正規社員と派遣社員との著しい賃金格差も、能力差ではなく、年功賃金が保証されているか否かという立場の違いから来ている。失業保険制度も正規社員に手厚い一方、短期間の派遣社員は加入すら困難な現状がある。
■これらの問題点については、正規社員の終身雇用制度を墨守するのではなく、人材の流動性を確保するためにも、雇用形態の多様化を図る必要があるだろう。また、それだけではなく、パート労働者の不安定さを解消するため、ワークシェアリングを推進することが求められていると考える。