ルール・メイキングのあり方【関西】

【問1】
トランスナショナルなルール・メイキングを担う具体的な機関の例として、国際連合における総会及び安全保障理事会を挙げる。このうち前者は、現在200近くの加盟国がそれぞれ平等に1国1票の投票権を持つという長所があるが、それゆえに意思決定のコストが大きいという短所を持つ。対して後者は、先進国とされる15国により形成され、強大な権限をもって国際問題における重要問題に関する決議を迅速に行うという長所がある。だが、その決議に対して拒否権を与えられた国が存在するために、1国のエゴによって意思決定がなされないという短所を持つ。
■こうしたルール・メイキングのあり方は、単一ではなく重層的な意思決定手続を確保しているとして評価できるものである。だが、それぞれの短所は改善されるべきであって、それには次のような方策が考えられる。
■まず、総会において、安全保障理事会で決議した事項の評価を行うことである。確かに総会での決定は意思決定に時間がかかるが、事後的に評価を行うことであれば、さして迅速性が求められるわけでもなく、そうしたコストを問題視する必要はない。また、評価を行うことにより、安全保障理事会の決議の専横を防げるという意味をもつ。
■次に、安全保障理事会のメンバーの固定しないことである。構成メンバーを入れ替え可能とすることにより、1国のエゴが横行することが避けられると考えられるのである。


【問2】
■2つのレベルでの矛盾とは、私益と公益の対立である。国際的にも国内的にも、私益を優先しようとすれば、公益がないがしろにされる。公益を優先しようとすれば、私益、特に社会的弱者とされる者の利益がないがしろにされるのである。この対立を避けための方策については、私は次のような案があると考える。
■まず、公益を定義することが難しいとしても、多数決に基づき、迅速に公益を設定することである。そのうえで、当該公益により不当な形で一方的に不利益を受けた者が異議申立てすることにより、事後的に救済する制度及び手続を整備するべきだと考える。このことによれば、決定の迅速性及び正当性のいずれも満たすことができると考える。
■そして、こうした異議申立てが実効的に機能するためには、その異議申立てに関する審理を行う公平な第三者の存在が必要となる。この公平な第三者がいなければ、少数派からの異議申立てが多数派による審理に任されてしまうことも考えられ、救済の途が閉ざされる。なお、この公平な第三者には、相応の権威が与えられなければならないことも確かである。
■以上のように、公益と私益の対立を解消するためには、迅速な公益の設定によって、不利益を受けた者が異議申立てする機会を確保し、それを公平な第三者が審理することにより、救済の途を開いておくことが求められると考える。
紛争社会と民主主義―国際選挙監視の政治学 (有斐閣選書) 紛争社会と民主主義―国際選挙監視の政治学 (有斐閣選書)/依田博