基本権の享有主体

■外国人の入国の自由
 憲法22条1項*1は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについては何も規定していない。このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にどのような条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるとされていることと、同趣旨であると解される。
■外国人に対する人権保障
 憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである。政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶと解するのが、相当である。しかし、外国人に対する憲法基本的人権の保障は、国の制度の枠内で与えられているものにすぎず、そして、国の裁量にゆだねられるところであると解される。

■法人の人権享有主体性
 憲法上の選挙権その他のいわゆる参政権が自然人たる国民にのみ認められたものであることは、所論のとおりである。しかし、会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。のみならず、憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである。

*1:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。