第1回「法的側面からみた知的財産:顧客情報の保護を中心に」

 平成16年度公開講義 大阪大学大学院法学研究科・高等司法研究科産学連携プロジェクト「知的財産をめぐる潮流−知的財産の管理から経営へ」の1回目。
 本日の講師は、茶園成樹 大阪大学大学院高等司法研究科教授。知的財産法の概要説明をふまえて、知的財産として顧客情報を保護するためにはどうのようにすればよいかといった観点からの講義でした。
※以下は、あくまで【情トラ】の個人的なメモです。事実誤認があるかもしれませんよっ。

  • 知的財産とは

 知的財産とは、財産的価値のある情報のことをいい、具体的には、知的財産基本法2条にその定義がある。すなわち、同法で「知的財産」とは、「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう」とされる。

  • 知的財産を保護する方法

 現在、何らかの知的財産の保護を考えたときには、次の順序で考えることになる。

      1. いわゆる知的財産権法による「損害賠償、差止め」…これは、個々の「知的財産に関して法令により定められた権利」に基づき、「ただちに、一部に、一定額の金銭請求権」が認められるという強い保護であるが、その権利設定の要件が狭いものである。
      2. 不正競争防止法による「損害賠償、差止め」…これは、法において規律する行為(不正競争)を定義して予測可能性を明らかすることで、「損害賠償、差止め」が認められることを容易にするという保護であるが、その対象とするための要件がやや狭いものである。
      3. 不法行為法による「損害賠償」…これは、相手方の不法行為に対して(原則的に*1)損害賠償を請求するものであるが、いかなる行為が規律されるのかが不明確であり、予測可能性がないこともあって、弱い保護としかならない。その対象とするための要件は広いものではある。
    • 特許法(昭和34年法律第121号)…発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)を特許権により保護するもの
    • 実用新案法(昭和34年法律第123号)…考案(自然法則を利用した技術的思想の創作)を実用新案権により保護するもの
    • 意匠法(昭和34年法律第125号)…意匠(物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの)を意匠権により保護するもの
    • 商標法(昭和34年法律第127号)…商標(文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの、または、業として役務を提供し、もしくは証明する者がその役務について使用をするもの)を商標権により保護するもの
    • 種苗法(平成10年法律83号)…植物品種を育成者権による保護するもの
    • 著作権法(昭和45年法律48号)…著作物(思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの)を著作権(及び著作者人格権)により保護するもの
  • その他

 知的財産として顧客情報を保護する方法について、様々な判例の紹介。

    • 東京高裁平3.12.17(木目化粧紙事件)
    • 最高裁平16.2.13(競走馬名パブリシティ事件)
    • 東京地裁平12.3.17(タウンページデータベース事件)
    • 東京地裁平13.5.25中間判決(自動車データベース事件)
    • 大阪地裁平8.4.16(男性用かつら事件)
    • 東京地裁平12.10.31(放射線測定機械器具事件)
    • 東京地裁平12.12.7(車両運行管理業務事件)
    • 東京地裁平11.7.23(美術工芸品事件)
    • 大阪地裁平14.9.26(通信機器リース事件)
    • 東京地裁平14.12.26中間判決
    • 大阪地裁平15.7.24

*1:経済的利益にかかる事案は差止めは認められないため。