公開シンポジウム「行政とNPOとの協働−その理念・現実・課題を探る」

 龍谷大学大学院NPO・地方行政コース主催、龍谷大学龍谷ボランティア・NPO活動センター共催のシンポジウム。3時間ちょっとの中身の濃いお話を聴くことができましたっ。なお、講師として出席された方々は、行政側からは三重県NPO室長と吹田市企画部長、NPO側からはNPO法人認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸理事長、今回のシンポジウムに特徴的な(?)出席者として自治労大阪府本部組織局の方の合計4名。それぞれのお立場から、現場からの報告アリ、学際的な報告アリでした。そして、会場には、自治体関係者が20名ほど、NPO関係者が7、8名ほど来られていたとのこと。その他は先生や学生さんとかかな?

(※以下は、あくまで【情トラ】の個人的なメモです。事実誤認があるかもしれませんっ。)

  • 【情トラ】メモ

 今回は、講師の皆さんのお話や、司会の龍谷大学の先生のお話、そして、会場との質疑応答の中で、個人的に気になったことや、ナルホドと思ったことなどを箇条書きにて。

    • 三重県NPOに冷たいとの評判がある」と言われて、一体どういうことかと尋ねたら、「お金はくれない、事業のNPO枠もない。だから冷たい」との返事をもらった。これに対して「ならば、ホメ言葉ですね」と思ったとのこと。行政としてやるべきことは、NPOが行っていることの価値を評価することであり、そのために環境づくりをすること、世の中の壁を壊すこと、行政側の意識を変えることである。
    • 協働事業はきちんと評価をしないと、うまくいかない。そのために「振り返り会議」というものを開き、コーディネーターに行政とNPOの間に入ってもらい様々なキーワードを抽出してもらう。その成果を次の事業に反映できるようにしている。
    • 行政は、基本的に中間支援センターに対する支援を行い、中間支援センターが個々のNPO等を支援するかたちが望ましいのではないか。
    • 行政側からの協働に対する意識が足りない。このままでは単なる一過性のイベントになってしまう危惧もある。 
    • なぜ、何のために、「協働」をするのかを常に考える必要があるはず。
    • 公共サービスは、自治体以外に質の高い供給主体があるなら「民間でもかまわない」。ただし、「民間でなければならない」ではない。
    • 協働における「行政の役割」、「NPOの役割」には、グラデーションがある。つまり、いつでも対等で50対50である必要はなく、行政がほとんど実施する事業をNPOが少しだけお手伝いする事業もあるし、逆もまた存在するし、当然、50対50の事業だってあるように、それぞれが担う役割の濃淡があるのである。
    • 行政とNPOの関係が“対等”である現実は厳しい。両者は、大人と赤子、重装備と丸腰の力関係である。
    • 行政のNPO支援に理念がない場合は、単なる下請けになってしまうケースがある。協働事業を行う際は、委託契約書だけではなく、そのうえに位置する合意として協働協定を結ぶ必要があるし、また、成果物を行政だけのものとするのではなく、両者の共有物にする必要などがあると考えられる。
    • 「民でできることは民で」との規制緩和の論調は、コスト論先行の危険性を孕んでいる。単なる低価格競争ではなく、きちんとした質の評価を含んだ入札制度などの整備がなされるべきである(ex.リビング・ウェイジ・キャンペーン)。
    • 自然災害には誰も責任がとれないから、否応なく協働することになるが、普段は行政が「責任は誰がとるのか」ということを明確化できず、協働がすすまないことになるのではないか。
    • 行政からみると、NPOが非常に便利で安上がりなものという認識をしている場合もある。しかし、市民自治から考えて、絶対に必要なものという認識もある。これは単なる下請けになることと、きちんとミッションを共有して事業を実施することとのせめぎ合いであろう。
    • 行政職員は制約があるなかで行動しなければならず、対して、NPOは自由に行動できるという利点がある。それゆえ、両者の思いのギャップが生じると考えられるが、行政職員の側は、2足、3足のわらじを履いて、いろいろな地域活動などを行って、思いを共有する必要があるし、NPOの側は、そうした行政の組織の仕組みをきちんと知る必要があると思われる。
  • 【情トラ】質問及び感想

 とまあ、以上のようなお話を聴けたわけでありますが、素朴に感じた疑問を会場との質疑応答のときに尋ねさせてもらいました。それは、おおむね次のような趣旨。

■「行政とNPOとの協働」とあるが、たとえば公の施設の指定管理者制度に関しては、指定の基準を条例に設けなければならず、それを議決するのは議会。また、管理者を指定するのも議決するのは議会である。とすれば、「議員」も重要なアクターであるはずではないか。例えば、行政職員は議員のほうばかりを見ていて、行政を動かすのは難しいというが、それならば議員にNPOの重要性を理解してもらうことのほうが簡単ではないか。

 そもそも、これは「議員の質をより高めなければならないのではないか」という問いであるともいえますので、今回の講師のみなさんに答えていただくべき質問ではないと、重々承知しながらの問いかけでした。しかし、どうしても議員不信があるのかないのか、議員側の理解があるのかないのか、行政とNPOとの協働において「議員」というアクターが登場しないなーっと、以前から素朴に感じていたので、会場の皆さんへの問いかけも含めて質問させていただいたわけです。

 回答は、まっ、論点をズラして答えられたかな、と。まあ、ホントに答えづらいというか、講師のみなさんの立場には全く関係ない質問をしてスミマセンでしたっ。

 だけど、「議員」って、大きな権限を有する第一線の「非営利活動者」(のはず)なんですよね。自治体の規模によっては、「協働のシングルイシュー」だけで当選する議員もあり得るでしょうし、一部のNPOと癒着関係を築くのは言語道断でしょうが、NPO活動全体への理解を深めてもらうことは「行政とNPOの協働」にとって必要ではないかと感じているところです。

 以上、ヒジョーに示唆に富む話を聴けて、講演会続きの11月の幸先のよいスタートでありました。