市民裁判員先行記第10回/Winny事件第4回公判

 京都地裁にて、またまたWinny事件、著作権法違反幇助に係る事件の第4回公判に傍聴へ行ってきました。今日も、傍聴券は先着順とのこと。この間、傍聴人数は定員にも満たなかった(前回参照)んですけど、とりあえずは早めに行くことに。


■傍聴前について

  • 12:20ごろ 今日も、午前中に2つの用事をすませ、金チャリ太郎をとばして、京都地裁に到着。
  • 12:25〜 並んで座って読書などなど。さすがに時間をつぶすための用意はシッカリしてきましたし。アレっ、休息所にはオッチャンしかいねぇなぁ。。
  • 13:10ごろ 今回も、裁判所の職員さんから、注意事項の説明など。いつも同じことの注意ですけど、新顔さんもいるようですし。
  • 13:20〜 入廷開始。バックを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)。そして、101号法廷です。座席は、10席ほど空席。本日は検察官が雑誌をたくさん持参されていて、ちょっと気になります。押収品か何か?
  • 13:30 裁判官が登場されて、いざ開廷。


■公判内容について(※注※ 以下はあくまで【情トラ】の個人的なメモを、【情トラ】の理解も含めてカンタンにまとめたです。全てを再現しているわけではモチロンありませんし、また、私の理解不足や事実誤認などもあるかもしれません(、いや、必ずあるはずです)ので、ご注意を!)
■また、一応、聴き取れた分についてはメモしてますので、もっと詳細に再現することも可能ではありますが、概要をまとめるだけにしますのでご了承ください。ひじょーに詳しいまとめもあるはずですので、そちらも参考に!
■なお、Winny(ウイニー、ウィニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛


■まずは、10月26日付けで検察側から「立証方針について(?)」との文書が示されたことを受けての弁護側からの意見で、個人的に印象に残ったもの。

    • 本件に係る「構成要件」が曖昧。このような曖昧さであれば、何らかのソフトを開発した場合、そのソフトを利用して著作権を侵害する者がいれば、すべて著作権法違反幇助になってしまうということになってしまいかねない。
    • Winnyの特性・技術的意義を、裁判所に理解してもらう必要がある。
    • P2Pという共有ソフトに関する世界の開発競争に乗り遅れることになり、言うならば「日本の産業への業務妨害」である。
    • Winnyそのものに問題があるのか、ないのか。そのものが問題でないとすれば、他のどの点が問題なのか明らかにしてほしい。
    • 証人尋問については、まず、捜査の責任者を呼んでほしい。今のままでは、重要な部分がわからないまま五月雨式に確認することになり、訴訟進行上も問題あると考える。


■次に、証拠物について。検察側が持参してきた雑誌に関して、記載内容が真実であるかのように表現になっていると弁護側から意見。対して、検察側は「記載内容の真実までは含まない。」とのこと。その結果、この証拠物は「雑誌の存在及び記載状況等」に関する証拠物とされたようですが、この「等」をつけるかつけないかで両者の応酬アリ(※「等」があるかないかでヤハリ印象が全く違いますもんねぇ。)。


■そして、検察側から、新たな証人(京都府警ハイテク犯罪対策室の巡査さん)に対する尋問。この尋問のうち、個人的に印象に残ったものは次に掲げるもの。

    • この証人が行ったことは、大まかに2つ。
      1. 被告人が所有するパソコンの削除ファイルを復元したこと。目的は、Winnyに関係したファイルがあるかどうかの確認のため。復元方法は、「ファイナルデータ」という市販のソフトを使用。
      2. WinnyのBBSの状況について確認したこと。目的は、Winnyを用いた著作権法違反正犯のWinny使用状況の確認のため。


■続いて、弁護側から、同証人に対する尋問。この尋問のうち、個人的に印象に残ったものは次に掲げるもの。

    • ファイル名一覧において「状態」という項目があるが、これの意味は。
      • 100%が完全ファイルであって、それ以外は部分ファイルである。
    • では、0%はどういうことを示すのか。
      • データサイズが1KB未満であること。
    • ファイル名から中身はわかるか。著作物かどうかわかるか。ウイルスであるかどうかわかるか。
      • (すべて)わからない。
    • では、何がわかるのか。
      • キャッシュが一旦保存されていたことはわかるが、内容はわからない。
    • 0%であるものが(証拠とされているこの一覧においては)多いが、なぜか。
      • ファイナルデータで復元したがデータ量が少なかったか、きちんと復元できなかったもの。
    • その他には。
      • 。。。
    • Winnyにはダウンロードしてなくても、ファイルができるという特性がある。ファイル名からダウンロードしたのかどうか判断できるか。
      • できない。


■ここまでで14:50。一旦、休憩に入りました。
※入廷の際、傍聴人は身体検査を受けたうえ、携帯電話・録音機その他それらに類似するものは預けなければならないのですが、、司法修習生(かな?)は携帯電話持っていてもいいのですね。。。


■休憩後の15:10から、検察側から2人目の証人尋問。この尋問に関して、個人的に印象に残ったものは次に掲げるもの。

    • この証人が行ったことは、大まかに2つ。
      1. Winnyを用いた著作権法違反正犯のパソコンを用いて、Winny送受信テスト。
      2. WinnyのBBSを監視してダウンロード状況の確認。


■この証人に関する弁護側からの尋問は次回とのこと。


■2人目の尋問も(一応)終わり、最後に、再度、弁護側から検察の「立証方針」についての意見。捜査の責任者から証人に呼ぶことを求めるとのこと。そうでなければ、何を問題としているのか確認できないとして。これに対して、検察側は反対意見を出すとして拒否。



■まとめ
 15:30ごろに閉廷。次回は、とりあえず本日の2人目の証人に対する尋問の残り。閉廷後に、法廷外で関係三者で協議をするとのことでした。

 ここから、【情トラ】の感想を。
 特に気になったことは、次の1点。弁護人が主張するように、「なぜ、捜査の責任者の証人尋問からはじめないのか?」ということです。ここまで、合計4名の捜査担当者が証言したのですが、「どのような判断基準で捜査を行ったのか?」という点がハッキリしたとは言えない状況のように思います。

 なお、先日の参議院予算委員会において、次のような質疑応答がありました。
Winny事件関連/予算委員会・質疑応答より、一部を引用。

福山哲郎君 <略>
構成要件、幇助罪の構成要件をお答えください。
○政府参考人(大林宏君) まず一般論として申し上げますと、幇助罪の構成要件は刑法第六十二条にありまして、「正犯を幇助した者は、従犯とする。」というのが構成要件でございます。
 今、委員おっしゃられる御趣旨は分かりますが、私どもとしても、このようなファイルというものの譲渡についてすべて犯罪になると、あるいは幇助罪が成立するというふうに考えているわけではございません。
 本件におきましては、ウィニーの作成者の認識といいますか、それが著作権法違反に使われるかどうかという証拠判断の問題、最終的にはその問題に尽きるのではないかと。ですから、ソフト自体、その役目、先ほども大臣の方から御意見ございましたように、ソフト開発自体を捜査機関が妨げると、こういう意思は毛頭ございません。
 ただ、そのソフト、個々の性格を持っておりまして、開発者自体の認識が、そういう著作権法違反の行為が十分行い得るというような状況の下で開発されたというふうな認定がされた場合には、それは犯罪成立というふうに認められる場合があるというふうに承知しております。<後略>

 つまりは、「開発者自体の認識が、そういう著作権法違反の行為が十分行い得るというような状況の下で開発されたというふうな認定がされた場合には、それは犯罪成立というふうに認められる場合がある」ということなのですから、スゴク端的に言えば「『開発者の認識』がどうであったのか」が最も争うべきトコロのはずなんですよね。

 であれば、「どういう判断基準をもって、どのような捜査をして、結果、どのような開発者の認識があったと認定したのか?」を明らかにする必要があるのではないのかな、と。
 そして、そうであるならば、まずは「どういう判断基準をもって」いたのかをはじめに明らかにしてもらえないと、個別具体的な「捜査の適正さ」もわからないし、結果としての「認定の適切さ」もハッキリしないのではないかと思うのですけど。


 以下、ちょっとした例を掲げてみます。

「その手順は、まったく簡単です。まず、ものをいくつかの山に分けます。もちろん、ひとまとめにしてもよいですが、それは全体の量によります。もし設備がないためにほかのところに行かなければならないときは、それが次の段階となります。重要なのは、一度にたくさんやりすぎないことです。一度にたくさんやりすぎるよりは、少なすぎるほうがまだましです。 <中略> 最初はこのような手順は複雑に思えるかもしれません。しかし、それは、すぐに生活の一部になってしまうでしょう。少なくとも当分は、この仕事の必要性がなくなるとは思えませんが、こればかりはわかりません。以上の手順がすべて終われば、ものをまたいくつかの山に分けて整理します。それから、それを適当な場所にしまいます。それらはもう一度使われて、またこの全サイクルが繰り返されることになるのです。ともかく、それは生活の一部なのです。」
山本敬三『民法講義〈1〉総則』8〜9頁より引用。

 この文章が何のことを言っているのかわかりますか? 個々の言葉の意味はわかるのですけど、やっぱり何のことだかわからないって感じはしませんか?



 ところが、ここで「衣類の洗濯」という視点を与えるとどうでしょう? あぁ、なるほど、という気がしたのではないでしょうか。
 この例と同じように、個々の捜査状況を確認していても、それがどういう「(大きな)目的」をもってなされているのか、どういう「判断基準」でもって進められたのかが明らかでないと、個別具体的な捜査のあり方とその結果についても、あぁ、なるほど、とは理解しがたいわけです(少なくとも【情トラ】にはワカリにくいです。)。

 うーーん、こうした証人尋問の順序は、よくあるパターンなのでしょうか? 今回の公判には関係ありませんが、もし裁判員制度がこの事件に採用された場合は、どういう証拠調べがなされることになるのか、たいへん興味があるところです。

 次回は、11月24日(水曜日)。今度もおそらく行けるでしょう。