政策評価フォーラム「今、政策評価は何を目指すのか」

 主催は総務省伊藤忠商事代表取締役会長であり、政策評価独立行政法人評価委員会政策評価分科会長である丹羽宇一郎 氏の基調講演をはじめとして、簡潔かつ要領を得た報告となかなかに刺激的なパネルディスカッションで行ってヨカッタです。

 政策評価に関しては、もっと国民の方々に理解され、もっとwatchすることで国民的議論を盛り上げていかないといけないといった趣旨のご挨拶。

 いわゆる橋本行革の目玉のひとつとしてスタートしたのが政策評価制度。平成14年度から法に基づく制度となったが、こうした法制度化は国際的にみても画期的なことである。そもそもナゼこうした制度がつくられたかについては、従来から次のような問題点が指摘されてきたからである。つまり「①政策が個別利害に拘束されていた」、「②利用者の利便が軽視されていた」、「③縦割により横断的な調整機能が存在していなかった」、「④不透明な政策決定過程であった」との4点である。
 このような問題点に対して、政策評価制度の目的は、「①国民に対する行政の説明責任の徹底」、「②国民本位の効率的で質の高い行政の実現」、「③国民的視点に立った成果重視の行政への転換」とされた。その結果、現在ではようやく「政策評価結果の予算要求への反映」、「評価の数値化」がなされてきたのではないか。
 当面の重点目標としては次の3点。「①政策評価自体の質を向上させること」、「②外部検証の可能性を向上させること」、「③国民的議論がより盛り上がること」が、現在特に求められていると言えよう。

 政策評価制度の現状としては、平成15年度の実施状況が、平成16年6月、国会に報告されており、実施件数は全体で11,177件となっている。しかし、まだまだ問題も山積しており、試行錯誤の状態であるとも言えるのではないか。
 こうした現状の理由は次のような点が指摘できる。すなわち、まず1つめとして、諸外国では事業評価の蓄積や他の評価手法の試行があってはじめて、政策評価制度をつくりあげているのに、日本においては「何の助走期間もなしに一挙にスタートしてしまったこと」。
 2つめが、法律による義務付けが現場での評価疲れを招いたことや、自己評価が大原則であることが自己正当化を危惧することにつながってしまうこと、また、各行政機関が評価方式を独自に選択していることが各々の評価を比較する可能性がなくなったことなどの「自己評価が抱える問題点が解決されていないこと」。
 3つめが、予算との連動が明確でなく、人事評価との連動も見えないために、「ゆるやかなインセンティブしかないと言えること」。
 4つめが、国においては各省庁が分担管理原則で動いており、どうしても「統一性がとれないこと」。
 そして、5つめが、各省庁内における政策評価に対する取り扱いの程度が、「誰が(どのレベルの人が)、どれほど熱心に、取り組もうとしているかによって、温度差があること」。

 包括外部監査は、地方自治法252条の37第1項*1に定めるように、「財務に関する事務の執行」及び「経営に係る事業の管理」について、「住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないこと」及び「常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならないこと」を達成するため必要と認める特定の事件について監査するものとされる。
 このことについて、政策評価と比べた場合、対象とするところは幾分限定的と考えられ、また、その目的とするところは、政策評価が行政機関が行う政策評価に関する法律3条1項*2に定めるように、「必要性」、「効率性」又は「有効性」、「その他の特性」に応じて必要な観点としていることとは違いがある。

  • パネルディスカッション
    • 本日の参加者は、ほとんどが都道府県や市町村職員。それに地方議会関係者、国の機関の職員、各種委嘱委員やシンクタンクNPO関係者、研究者、マスコミがある程度。一般の参加者はホントに少ないとのこと。
    • この制度自体、評価が必要ではないか。
    • 国民代表訴訟制度(住民訴訟の中央省庁版)の提案をしたことがある。官僚に緊張感をもたせなければならない。
    • 評価に対して、自分の非を認めないのは、官僚だけではなく誰だってそうである。しかし、総務省はものすごく仕事をして、できるだけきちんと評価をするよう手心加えることなくやっているようだ。だが、やはりシステムとして、官僚の評価を自分でやること、同じ官僚(=総務省官僚)がすることは、国民から疑問が生じるのは当然のことである。それはわかってはいるのだが、だからといって、第三者機関を立ち上げてもコストが莫大にかかるし、人材もいない。まだ、現状の評価制度がはじまって3年目であり、もう少し試行錯誤を見守る必要があるのではないかと考えているところである。
    • 政策評価は、単にひとつひとつの政策を個々別々に評価するだけではない。最終的には、行政のあり方をどうするか、国家公務員法をどのように改正するかということにつながる問題なのである。
    • 公務員は、法律に従って仕事をする。その法がたとえ悪法であっても、しっかり守るのが官僚なのである。そうした悪法の弊害を取り除くのは、立法の役割であって、行政の権限、議員の権限、委員会の権限など、それぞれの行うべきことをハッキリさせる必要があろう。
    • 政策評価の限界として、現状の自己評価が原則ではダメであると思う。官僚は優秀だが、官僚自身も必要ないと思っているものに対しても、内部からは「不必要」との声が出てこない。たとえば、外部監査のような仕組みにより、ポンっと背中を押してあげることが必要だと考える。
    • 現在、実施している政策について評価するだけではなく、現在、実施していない政策をナゼやっていないのかという評価を行うことも国民は求めているのではないか。
    • 評価を外部委託してはどうかという声に対しては、基本的には難しいと考える。コストが莫大であるし、官僚自身の抵抗も激しいものとなろう。また、外国での事例も政府内評価に止まっている。最も重要なことは、その政府内評価が適切であるかどうかを検証することであって、評価のプロセスと結果をきちんと情報公開して、その評価に対して再評価を行うメタ評価を可能にすることが求められよう。アメリカではシンクタンクがその役割を担っているし、日本においても大学やNPOシンクタンクに可能性があるのではないか。情報公開に関する市民オンブズマンが果たした役割などその萌芽であると認められる。
    • 各省庁が自己評価をしたあとに、総務省が統合的な政策評価をしているが、本来的には、内閣府が行うべきものである。この内閣府への移管については、今後検討してみたい。
  • 【情トラ】感想

 とまあ、だいだい以上にまとめたような内容だったのですが、【情トラ】の感想というか、まとめというか、幾点か。
 まず、何よりも、「もっと国民の方々に理解され、国民的議論を盛り上げていかないといけない」と言いながら、本日の一般参加者、、、5、6人ぐらい(←【情トラ】含めて)?? そうであったとしてもヨイほうぐらいなのじゃーないでしょうか? 来られていたのは、ほとんど自治体職員のようで。その自治体職員さんたちも、地元住民に周知してあげるなどの配慮があればいいのにねぇ。
 こうした現状を見てしまうと、「やっぱり、ホンマは国民的議論なんて盛り上げたくないヤないかいっ!?」なーんて穿った感想を持ってしまうわけで。そもそも、平日の昼間に開催すること自体が、単に自治体職員の出張に配慮した結果なんじゃないんですかねぇ。。 国民的議論を盛り上げたいのなら、なんで土曜か日曜に設定せぇへんねん!!と興奮する(!?)【情トラ】なのです。
 フォーラム終了後にアンケートを記入して提出してくださいと主催者がお願いされていたのですが、提出している人の少ないこと、少ないこと。ホンマにもー、、、。。。


 まっ、しかし、フォーラムの内容自体は、かなりヨカッタと思います。特に、「外部からの検証」が必要であること、そのためには「プロセスと結果の透明性確保」と「NPOシンクタンクの事業として収入を得られるものとすること」が必要であることは、【情トラ】も以前から感じているコトの指摘です。
 ほんと、そうした外部機関による「評価の評価」は絶対に必要だと思うわけなのですが、それを事業として成り立たせる方法はねぇ、、現時点で考えられるのは、地方自治体の包括外部監査制度のように、行政のほうから報酬を出すことぐらいかな。でも、それでは、あまりに行政との結びつきが強すぎるだろうし。。
 あと、やはり議員が評価することが本来の姿であるのでしょうから、議員をサポートする事務局の充実化もありうるのではないでしょうか。 そうした政策評価は票につながらないって言って議員が熱心に取り組まないかもしれませんが、そこは国民的議論の盛り上がりにかけるってことで。往々にして注目を集める分野に関しては、議員も集まってくるのではないかなーと思う次第です。また、内閣府が行うというのも、議院内閣制ですしホントに検討に値する意見でしょうねぇ。


 なお、【情トラ】も微力ながら各都道府県の政策評価制度を比較するサイトページを作成しています。いろいろな名称、いろいろな根拠、いろいろな方法で、政策評価が行われており、それぞれ確認してみるとオモシロイものです。「国民的議論を盛り上げる」ためにも、住居地の都道府県の政策評価のサイトに訪れてみませんか(^ー^)
http://www.geocities.jp/joho_triangle/hyoka.html

*1:包括外部監査人は、包括外部監査対象団体の財務に関する事務の執行及び包括外部監査対象団体の経営に係る事業の管理のうち、第二条第十四項及び第十五項の規定の趣旨を達成するため必要と認める特定の事件について監査するものとする。

*2:行政機関は、その所掌に係る政策について、適時に、その政策効果(当該政策に基づき実施し、又は実施しようとしている行政上の一連の行為が国民生活及び社会経済に及ぼし、又は及ぼすことが見込まれる影響をいう。以下同じ。)を把握し、これを基礎として、必要性、効率性又は有効性の観点その他当該政策の特性に応じて必要な観点から、自ら評価するとともに、その評価の結果を当該政策に適切に反映させなければならない。