市民裁判員先行記第11回/模擬裁判「終末医療」

 本日は、京都大学法律相談部による模擬裁判2004「終末医療裁判員の目に映るもの〜」を見に京大まで。予想を遥かにこえてヨカッタですよ、いろいろと。
 題材は、「終末医療」。概要としては、医師が患者の治療行為を中止したことが、患者を死に至らしめたとして、殺人罪にあたるという検察側の主張に対し、当該治療行為中止には殺人罪は成立しないと被告人及び弁護側が主張しているといったストーリー。

 横浜地裁平成7年3月28日判決(傍論にあたる部分)における、治療行為中止の要件に関するところを利用して、以下の4つの争点が提示されました。

    1. 患者が治癒不可能な病気に冒され、回復の見込みがなく死を避けられない末期状態にあるかどうか。
    2. 家族が、患者の病状、治療内容、予後等について、十分な情報と正確な認識を持っていたかどうか
    3. 治療中止という家族の意思表示が患者の立場に立った真摯なものであったかどうか。
    4. 医師側が必要な情報を収集し、患者及び家族をよく認識し理解する的確な立場にあるか。


 こうした事件の選択の良さと要件の絞り込みは、この模擬裁判の最後に「来場者が裁判員となって有罪/無罪の判断を下す」ことに対して、たいへんわかりやすくする効果があると感じた次第。また、この4点に絞り、検察側/弁護側が双方に主張しあったため、判断材料も深みがあるものが提示されたのではないかと思いました。

 その他に、模擬裁判の内容以外で、【情トラ】が感じた点をいくつか。

      • 登場人物へのキャラクターづけは、適度な笑いを誘い、飽きさせることがなかった、、けど、時々過度になってサムッって思ったことも。。
      • 訴訟進行上、劇における不要部分を大胆にカットしたことも、模擬裁判のテンポを良くして、来場者に配慮するということでヨカッタ。
      • 50ページほどの資料が配られ、そのうち30ページ強にわたって、事件に関するまとめを行っており、単に模擬裁判を見ているだけではわかりにくいところが、それらのまとめにより理解できて、非常によかった。
      • 舞台横に、プロジェクターで場面ごとの進行状況等を映し出し、舞台上では何をしているのかを明らかにしており、よかった。
      • (個人的な好みという気もするのですが、)カンバンや資料のデザインは微妙。また、プロジェクターにより映し出されたもののフォントも、読みにくい気が。


 模擬裁判の内容でも、【情トラ】が感じた点は多々あるのですが、非常に細かいところになってしまうため、これは割愛。そうした細かいところに関しては、時間が限られ、事件もわかりやすくしなければならないという「模擬裁判」の性質上、また、【情トラ】が単なる来場者でしかないことから、確認する術がないことも、ヤッパリ仕方がないことですね。ただし、こうした点がでてしまうと、どうしても判断が無罪に傾いてしまうことは避けられないことも確かでしょう。模擬裁判をおこなって、来場者から判断を投票してもらうと、おおよそ無罪が多くなるのではないかと思います。
 今回の結果も、146人の判断のうち、103人が無罪、40人が有罪(、3人は「?」)とのこと。帰りには、主文が「被告人は無罪。」という判決書も配られました。


 とはいえ、【情トラ】が、これまで読んだり見たりしてきた裁判員参加型の模擬裁判では、最も出来がいいのではないかという内容でした。【情トラ】は初めて京都大学法律相談部による模擬裁判を見たわけですが、おそらくは長年のノウハウが蓄積されているのでしょうし、何より、出演者/裏方のみなさんの「年1回の学園祭によりよいものをつくりあげよう」という気持ちが充満していたのでしょう。
 来年も見に行きたいと思いますが、来年は、どんなテーマで、どんな要件を扱うのでしょうか。メンバーも変わるのでしょうけど、また、1年後が楽しみです。