法令の上書き条例について

 id:kei-zu さんのトコロでとりあげられていた、道州制懇談会座長の竹中平蔵 経済財政・郵政民営化担当相が「法令の上書き条例は重要だ」と述べたことについて。
道州制懇談会:竹中担当相「条例上書き権重要」 - 自治体法務の備忘録(Old)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20041221k0000m010164000c.html


 この「法令の上書き条例」っていうものには、【情トラ】もタイヘン興味をもっているところ。基本的には、「どのような法律でも条例が上書きできる」とすることはありえないでしょう。
 やはり、地域の特性などに応じて、「それぞれの自治体が基準等を決定するほうが有意義である場合」に、「それぞれの自治体の条例において独自の規定を設ける」ことを「各法律において許容する規定を設ける」ことになるのだろうと思います。
 換言すると、法が定めるのは『標準的規定』だとして、必要性があれば、それを上回る(or下回る)内容を条例で規定して法律上の権限行使の基準とすることが可能であると、当該法律の規定に明記するとの方法になるのではないかと。もっとカンタンにできないかとも思いますけど。
◆一例として、都市計画法(昭和43年法律第100号)第33条第3項の規定

 地方公共団体は、その地方の自然的条件の特殊性又は公共施設の整備、建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し、前項の政令で定める技術的細目のみによつては環境の保全、災害の防止及び利便の増進を図ることが困難であると認められ、又は当該技術的細目によらなくとも環境の保全、災害の防止及び利便の増進上支障がないと認められる場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、当該技術的細目において定められた制限を強化し、又は緩和することができる。


 なお、こうした議論については、参議院内閣委員会にて、次のような質疑がなされていますね。参考まで議事録の該当部分を抜粋しておきます。
◆平成16年5月20日(木) 参議院内閣委員会/「構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」を議題とした質疑において

(前略)

松井孝治
 例えば北海道なんかが提案されているものでございまして、条例による政省令の上書き法というようなものを作ったらどうかという提案があります。
 これは別に包括的に、私も、さっき副大臣からおっしゃっていただいたように昔、霞が関におりましたから、包括的に何でもかんでも政省令をすべて条例で上書きをしろなんという、そんな乱暴なことを言うつもりはありません。ただ、町づくりであるとか、具体的に法律の、いろんな規制がありますが、その条文ごとに、ここの部分は政省令にすべてゆだねなくてもいいんじゃないか、ここの部分の運用基準は、この政省令という部分は、条例があったら、その地域の住民が議会において議論をして、基準を作って、そしてその基準で運用したいというものについては、個別に法律によってそれを指定して、むしろ地域の運用基準を優先するというような、そういう法律があってもいいんじゃないかということを私は提案しているつもりなんです。本会議でどこまで御理解いただいたか分かりませんが。
 それで、ちょっと副大臣の前に法制局、こういう法律は、こういう法律を作ることは憲法94条の規定、要するに法律の範囲内で、地方公共団体が法律の範囲内で条例を制定することができる。私は、その憲法94条の規定は、それは最終的な憲法判断はその法律の条文を見てみないと分からないということですが、私が申し上げたような精神自身は決して憲法94条に反するものではないと私は確信を持っているんですが、法制局としてのお立場、見解を一言いただけますか。


■政府参考人(山本庸幸 氏)
 憲法94条によりますと、地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができるとされております。政省令は、御承知のとおり法律の委任あるいは実施するために制定されるものでございますから、その意味では法律と一体を成すものとして条例に優先する効力を有するというわけであります。
 そういう考え方の下で、地方自治法14条1項においても同様の、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができると規定されております。したがいまして、ある条例が政省令に違反するものであれば、その条例は無効になるということがはっきりと言えるわけでございます。
 お尋ねの、まず条例による政省令の内容の、例えば一般的な上書きというものがちょっとどういうものか分かりませんけれども、いずれにせよ、それがその条例の規定によって政省令の内容を直接に改廃しようとするというものでありますならば、今申し上げた94条との関係で問題を生ずるものと思います。
 ただし、それがいわゆる個々の法律の特性に基づきまして、例えば地域の特性等に応じて地方公共団体が特段の規定を設ける、そういうことを許容することを各法律で認めたりということになりますと、そういう法律が例えば複数あるということになりますれば、そういうものをいわゆる一まとめにいたしまして、御承知のとおり、いわゆる束ね法という形でそういうものを一挙に改正するということも、一応法律技術的には可能でございます。


松井孝治
 正に私が申し上げたのは、今最後の後段で部長がおっしゃったことなんですよ。ですから、それは法制的に可能だという判断が今法制局でございました。これは恐らく、余り事務的にやるような話ではなくて、これも規制改革の流れで政治的に御判断をいただかなければいけないと思うんですが、私が申し上げたのは、今部長が前段でおっしゃったような、そういう上書き法ということではなくて、後段でおっしゃったような言わば束ね法、ある意味では特区もそういう束ね法でありますが、そういうものを御検討される、あるいは私が申し上げた提案について何らかの場で御検討いただく御意思があるか、副大臣の方から御答弁を伺いたいと思います。


副大臣佐藤剛男 氏)
 私は松井先生のようにシャープじゃございませんので御理解賜りたいと思いますが、私は本会議で上書き権のお話をお聞きいたしました。それで、私なりに、大臣が非常に慎重にもう答弁されておられたのは御存じのとおりでありますが、私は先生のおっしゃっている上書き権というのは、私は法律をあれしていますけれども、条例と法律とはどうだという話にはなるんですね、よく。国家公務員試験でも出る、僕は試験官やっていたんですけれども。そのときにミツマタコウゾ事件なんというのがあった。これは禁止している、地域を。これは全国的にはあれだったというようなことの問題については、これは先生がおっしゃったように地方の議会、議会のみんなが、住民が代表してきた者が条例作ったんだから、それは条例を優先したらいいんじゃないですかと、こういうふうなものは考え方として通っているんですね。それで、あったわけであります。
 それで、今、私、重要なことの、立法政策の問題ではあるんですよ。立法政策の問題ということは内閣法制局が認めるか認めないかの問題ではあるんですが、一つの順序として法律というのは、法律があって、政令があって、省令があって、通達がある。それで、通達が法律を違反するようなのは通達無効ということは御存じのとおりだと思う。それから、政令というのは委任政令と自主政令というのがある。それから省令も同じようにあるんです、委任省令であり何である。
 というようなことで、自主省令でありますから、それぞれが一つの法律になっているものを何かどこかで法律で、条例の方でこれやりますよというのは、私は今の直ちの御質問でございましたからお答え申し上げますと、これは立法政策の課題ではありますが、こういう形で特区全体の法律をやることについてどうかは答弁を差し控えていただきたい。

(後略)