市民裁判員先行記第15回/Winny事件第7回公判

 京都地裁Winny事件。著作権法違反幇助に係る事件。第7回公判に傍聴に行ってきました。今日も、傍聴券は先着順です。傍聴人数はほぼ固定化された模様。前回と同じ時間帯に到着して、同じような傍聴券の番号でした。ただ見る限りは、毎回来ている方ばかりというわけでもないようですけど。


■傍聴前について

  • 13:05ごろ 本日も、到着は遅め。だいたい25〜35番目ぐらい。
  • 13:10ごろ 裁判所の職員さんから、いつもどおりの注意事項の説明など。
  • 13:20〜 入廷開始。バックを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後に、101号法廷へと。
  • 13:30 いざ開廷です。


■公判内容について(※注※ 以下はあくまで【情トラ】の個人的なメモを、【情トラ】の理解も含めて簡単にまとめたものです。全てを再現しているわけでは勿論ありませんし、また、私の理解不足や事実誤認などもあるかもしれません(、いや、必ずあるはずです)ので、ご注意を!)
◆また、一応、聴き取れた分についてはメモしてますから、もっと詳細に再現することも可能ではありますが、概要をまとめるだけにしますのでご了承ください。非常に詳しいまとめもあるはずですので、そちらも参考に!
■なお、【情トラ】的には、今回の公判が、最も意義深いモノでした。そのへんがうまくまとめられるといいのですけど。
◆ついでに、残念ながら、次回以降の、平成17年2月4日(金)、平成17年2月25日(金)、平成17年3月18日(金)に開かれる公判には、【情トラ】は傍聴に行けないと思います。どなたかが詳しい様子をUpしてくれることを願っています。
■なお、Winny(ウイニー、ウィニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛



■今回は、冒頭に宣誓した証人が3名。前回、弁護側の反対尋問を残していた証人がいらっしゃいますので、予定としては、あわせて4人の証人尋問がなされるようです。しかし、そんなにできひんのんちゃうんかと思っていた【情トラ】なのですが。。
■さて、最初の尋問。「初期ノード」に関する情報をネット上で提供していたサイト作成者のパソコンを検証された方への弁護側反対尋問です。以下は、そのうちで個人的に印象に残ったもの。

    • 「初期ノード」とは何か。
      • Winnyを動かすために必要不可欠なものであって、接続相手のアドレスのようなもの。
    • 「初期ノード」について、本件被告人のホームページには、何らか情報が記載されていたか。
      • 私は知らない。
    • 「初期ノード」がないとどういう不都合があるのか。
      • Winnyがつながらない。
    • 本当につながらないのか。
      • わかりません。
    • 検証においてメールの内容を確認しているが、そこに本件被告人とのやりとりはあったか。
      • なかった。
    • 著作権法違反の)正犯2人とのやりとりは。
      • なかった。
    • 検証調書において、「関係者とのやりとりはなかった。」との記述があるが、この関係者とは。
      • Winnyを利用するユーザーのこと。
    • 「初期ノード」に関するホームページを開設していたことを問題にしていたが、当該ホームページへのアクセスに関する記録は調べたか。
      • よく覚えていない。私はしていない。
    • Winnyは、ダウンロードして自動的に(初期ノードの)設定ができるものか。
      • できない。
    • 任意の文字列を入力して大丈夫か。
      • ダメだ(=つながらない)と思う。
    • 検証調書に、「完全なファイルには合法のもの。不完全なファイルには著作権法違反のデータが散見されていた」との記述があるが、ファイルの中身を確認したのか。
      • していない。
    • ファイル名だけで、どうしてファイルの中身がわかるのですか。
      • 経験則による。
    • Winnyは使ったことがあるのか。
      • 捜査の実験で使った。
    • 何回か。10回以上か。
      • それはない。
    • 2、3回か。
      • それぐらい。


■続いて、本日2人目の証人。何でも、京都府警で最初にWinnyに目をつけた(!?)という方とのこと。まずは、検察側からの主尋問です。以下は、そのうちで個人的に印象に残ったもの。

    • Winnyに注目したのはいつ頃のことか。
      • 平成14年9月ごろ、(インターネット上の違法状況を調査する)サイバーパトロール中に「Winnyは便利だね」といった書き込みを見つけたりしたことから、興味をもって調査をし、ファイル共有ソフトという知った。
    • 機能はどのようにして調べたのか。
      • 配布サイトからダウンロードして、インストールし、起動させて調査した。ひとつひとつボタンをおして確認していった。
    • どのような機能があったのか。
      • ファイルの送受信ができる。
    • ユーザーがどういう目的で、どういうファイルをやりとりしているのかについては。
      • 調べた。特に2ちゃんねるのダウンロード板において、「○○お願いします」との書き込みがあり、そして「アリガトウございました」といった書き込みがあったことから、著作権侵害の違法性がうかがわれた。ただし、実際問題としては、違法行為だったとして、その実行行為者の故意を立証することが難しいだろうなと考えていた。
    • それはなぜか。
      • Winnyにおいては、アップローダフォルダから送信可能であるとともに、ダウンロードしたキャッシュフォルダから送信可能であるために(、前者であれば、実行行為の故意があることが認められるが、後者では知らぬ間に送信しているとも考えられる。そのため)、ネットワークごしには判断できないものであるからだ。
    • Winnyによる著作権法違反の正犯を検挙するきっかけになったのは。
      • 著作権保護に関わる団体などから、困っている旨の話を聞いたことがある。
    • 摘発方法については。
      • Winnyには、BBS機能がついており、そこにおける“放流告知”の書き込みが頻繁に行われていたことに着目し、この書き込みが、言わば「自白」のようなものにあたると考えた。
    • どのように人物を特定するのか。
      • BBSのスレッドを立ち上げる瞬間には、その者が使用しているパソコンがインターネットに接続している必要があり、そのIPアドレスが確認できる。
    • しかし、BBSには、他の人も書き込める。どうして、そのスレッドを立ち上げた本人が“放流告知”の書き込みをしたと判断できるのか。
      • スレッドにトリップがついていて、同じトリップがついた書き込みがあるものに目をつけた。
    • その者が、実際にファイルを送信しているかどうかは、どのように確認したのか。
    • このような摘発方法を考えたのはいつごろか。
      • 平成15年5月か6月ごろ。
    • 実際に摘発した正犯2名を選んだ理由は。
      • 概ね3ヶ月間ほど、WinnyのBBSをサイバーパトロールして、数多く、長い間にわたって悪質な著作権法違反行為を重ねていたユーザーを選定した。
    • 平成15年11月27日に、被告人のところに検証にいっているが、このときの目的は。
      • Winnyのプログラムソースを押収することである。
    • 実際にどのようにして探したのか。
      • 本人に訊いた。
    • そのときの状況は。
      • 被告人のパソコンにあったのは、アップロードの機能がないWinnyだった。これについては、私自身、ファイルを共有するという精神自体は良いアイデアだと思っていたので、なぜ、アップロードできないWinnyなのかを尋ねたところ、本人からは「これは私の持論ですが、人間には役割がある。(この場合、)私はプログラムをつくる役割で、彼らが共有する役割である。もちろん自己責任でね」といった答えが返ってきた。
    • アップロード機能があるかどうかの確認はどのようにしたのか。
      • ダミーファイルを送る実験をしてみたところ、送信できなかった。被告人にきくと、デフォルトではアップロードができないようになっているとのこと。配布しているWinnyを確認したいと依頼したところ、プログラムソース中の(ある)2行を削除したうえでコンパイルしてもらった。
    • その後は。
      • 検証の最後に、「君の作ったWinnyによって、著作物が侵害されて困っている人がいるので、HPを閉じてくれないか」と依頼したところ、被告人も「はじめから警察が来たらやめるつもりだったんです」と、その場でHPを閉鎖してくれた。
    • Winny上の合法ファイルの状況について」との文書については、どのような目的で作成したのか。
      • 「合法」というキーワードで検索して、違法なものを排除できるかどうかの確認である。「合法」とのキーワードで検索してダウンロードしたものの中には、一般に市販されている映画の一部を流用したものもあった。


■以上で、検察側主尋問は終了。この後、弁護側から被告人の供述を確認する必要があるとして、休憩をとってくれるよう裁判所側に申し出。それを受けて、15時10分から20分まで休憩に。休憩後は、この証人への反対尋問に時間がかかることが予想されるために、先に他の2人の尋問を行うことを弁護側から提案。裁判官も合議されたのですが、結局は、この証人の反対尋問を行うとして、他の2人については、「本日はお引き取りいただいて結構です」ということに。以下は、弁護側からの反対尋問のうちで個人的に印象に残ったもの。

    • 平成15年11月27日に、被告人のところに検証に行った際には、被告人は被疑者だったのか、参考人だったのか。
      • 参考人である。これは、みなさん(=弁護団のこと)が主張されているように、プログラム開発と違反は違うんだと思っていたからである。
    • 検証の目的は、プログラムソースの押収とあるが。
      • 正犯を起訴までしてもらうには、Winnyの仕組みがわかっておく必要があると考えたからである。
    • 参考人調書を作成したときに、被告人から「Winnyの開発をしません」という旨の念書、誓約書を書かせたのか。
      • 私は、聴き取りをしていた部屋を出入りしていたので、詳しいことはわからない。
    • Winny上の合法ファイルの状況について」との文書作成の際には、ファイルの中身は確認したのか。
      • ダウンロードした50〜100ほどのファイルはすべて確認した。
    • その文書に記した合法か違法かの判断はどのようにして行ったのか。
      • 主観によるものもある。
    • なぜ「合法」とのファイル名がつけられるのだと思うか。
      • 合法的な利用をしようとしている人たちがつけているのではないか。
    • 被告人が、当初は参考人だったのが、被疑者となり、被告人となった経緯には、著作権を管理する団体の要請等があったのではないか。
      • 全くない。
    • 参考人からの事情聴取は、どこで、どれぐらいの時間なされたのか。
      • (地元の)警察署において、3時間ほどである。
    • その内容は。
      • 最初はWinnyの客観的な機能について尋ねようとしていたら、被告人のほうから、「著作権侵害を蔓延させて、現在の著作権秩序を変える」といった趣旨のことを言い出してきた。その内容からして、そのまま参考人として話を聞くべきか、被疑者に切り替えて(手続に則った)取調べとすべきかについて非常に悩んだ。現場では、そのまま参考人として扱い、参考人が言うままに調書をとった。
    • 客観的機能については、結局、訊かなかったようであるが。
      • 本人が言い出したことのほうが重要だと思ったので。


■このあたりまでが反対尋問。さらに弁護側からは、内容を整理したうえで、次回公判に反対尋問を続けたい旨の申し出。これは、そもそも、本日の証人尋問が、被告人宅におけるパソコン等の検証調書に関するものだったにもかかわらず、証人が被告人との事情聴取や参考人調書の内容について証言したため、ということのよう。裁判所側からは、改めて事情聴取や参考人調書の内容に関する証人として証人申請をしてはどうか、といった提言もあったのですけど、イロイロとやりとりを経たうえで、次回公判のなかの30分間に限るとして、次回に持ち越しとなりました。



◆【情トラ】まとめ
 こんな記事が出ていましたね。
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005011500030&genre=D1&area=K00

 被告宅を捜索した京都府警警部補が、被告が「私はプログラムを作る役割。他の人がファイル共有を進めてくれればいい」と話した、と証言。ウィニーを公開するホームページの閉鎖を被告に頼むと「警察が来たらやめるつもりだった」とし、参考人聴取では「ネット社会の著作権の枠組みを変える」と自分から言い出した、と証言した。
 弁護団壇俊光事務局長は「警部補はうそを述べている。弁護側に明らかにしていない事実が質問に含まれており、検察の訴訟活動は問題がある」と話している。
※【情トラ】が、記事内容の一部省略を行っています。

 本日の公判において2人目に証人にたった警部補は、【情トラ】が思うに、今回のWinny関連事件捜査の中心的存在のひとりではないでしょうか。京都府警で最初にWinnyに目をつけたとの話といい、捜査手法を一任されていたとの話といい、検証の方法は私が決めたとの話といい、これまでの証人とは違った印象は受けました。パソコンやネットワーク等に関する知識も、かなりの程度もっておられるようですし(あくまで印象ですが。)。

 そして、そうした証人の証言のなかで、やはり焦点になってくるのは、被告人宅において検証をしている際の会話と、その後の参考人聴取の内容なのでしょう。あくまで【情トラ】が思うに。

被告が「私はプログラムを作る役割。他の人がファイル共有を進めてくれればいい」と話した、と証言

したあたりは、非常に“饒舌”に証言されていた覚えがあります。そして、この検証の際の会話及び参考人聴取における被告人の(、証人曰く「ハキハキと自慢げに答えた」)話こそが、被告人を、参考人ではなく被疑者として扱うべきか悩ませた要因とのこと。このあたりこそが、「被告人が違法性について認識していた」旨の検察側主張の主要な部分となるところではないでしょうか、【情トラ】が思うに。
 確かに、被告人が自己のパソコンに違法複製ファイルを保存していたことや、被告人がWinnyに関する雑誌記事等を読んでいたことなどから、被告人が違法性を明確に認識していたと主張されていますが、それ以上に、この検証時のやりとりや、参考人事情聴取時の話こそが、捜査担当者に「(被告人を)参考人ではなく被疑者として扱うべきかを悩ませた」ということなのですから。
 しかし、このあたりの話の内容等については、検察側の冒頭陳述に取り上げられていたのかな、イロイロと探してみたのですが、よくわからないのですよ。例えば、

ウィニーを公開するホームページの閉鎖を被告に頼むと「警察が来たらやめるつもりだった」

との部分に対して、違法性の認識があったがための発言であるといった検察側の主張ができそうな気もするのですけど、、初回公判に傍聴できなかったことが悔やまれます。このあたりが、弁護団壇俊光事務局長による「警部補はうそを述べている」との発言につながっているのでしょうか。。よくわからないところです。
 とにかく、次回公判の最初の30分間は、いつもより注目しておくべきかもしれませんね。再度、公判のもっと後のほう、被告人質問の際に、改めてその内容を問われることになるのかもしれませんけど。

 あぁ、次回は傍聴できないんだった。。