個人データの内容の削除

 以前、某社に資料請求をしたことがあり、それからダイレクトメールが届くようになったのですけど、今後において、全く必要がないことから、ダイレクトメールを届けなくてよいという旨の電話。単に「送らなくって結構です」だけではなく、個人情報そのものを削除してくださいと依頼したのですが。。
 なにやら、「DM郵送の拒否はできるけど、個人情報(登録情報)の削除まではできない」と、電話の向こう側のお言葉。
 「確かに当初は、ダイレクトメールに利用してもらうため(だけ)に個人情報を登録したわけですが、その本人が、今後はダイレクトメールに利用しないでほしいって言ってるわけなのですから、最早、貴社においては何の利用もできないのではないのですか?」
 「今後、こちらから、何らかアクションをとろうとすれば、貴社においては、本人確認とか、今までどのような案内をしてきたのか等を確認するため必要になるかもしれないので、別ですが、今後一切、こちらからアクションをとることはありませんし、万が一あったとしても、そのときはそのときでキチンとそのときに関連する個人情報をお教えしますよ。」
 「だから、削除ができないというお答えが理解できかねるのですが。」
 そんなこんなやりとりを、2回ほど繰り返しても、やっぱり「ダイレクトメールの拒否については、お送りしないように手続させていただきます。ただ、個人情報の削除まではできかねます」といった趣旨のご回答をいただくだけに終始。
 そこで、とにかく冷静に「イヤイヤイヤ」と。「今後、私の個人情報を利用することには同意いたしません。つまり、今後、新しい商品・サービスの案内は一切必要ありません。さらに、今後、こちらから貴社に問い合わせすることもございませんので、本人かどうかの確認が必要になることもありません。ですから、私の住所、氏名、生年月日、性別、電話番号などといった情報を、貴社の個人情報のデータベースから削除/抹消してください。」と改めて、丁寧にお願いした次第なのです。
 すると、ようやく、「上司に相談します」と言っていただき、待つこと数分。「1週間ほどかかりますが、削除させていただきます」とのお返事をいただきました。
 たいへんお手数をおかけいたしまして,申し訳ございません。もっとも、当初は、自ら利用を同意した個人情報であっても、最早その利用を同意しないとの意思を表明した後は、当然、その情報を削除してもらうことができるものと思っていたので、直ぐに対応していただけなかったことは意外だったのです。


 そのあと、近く施行される、個人情報保護法個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号))第4章の各規定を確認してみると、同法の規定ぶりでは、確かに、直ぐには削除に対応する必要まではなさそうな感じなのですね。

   個人情報保護法
 (訂正等)
第26条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。
2 略
 (利用停止等)
第27条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第16条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第17条の規定に違反して取得されたものであるという理由によって、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下この条において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
2及び3 略

 つまり、26条の場面においては、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が『事実でないという理由』によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除を求められた場合に、訂正等を行わなければならないとされているので、事実であれば対応しなくてよいともいえます。
 なお、ここでいう「訂正等」は、「個人データの内容の訂正、追加又は削除」であって、個人データそのものの削除までは想定されていないようです。
 具体的に考えると、「A、B、C」というデータが保有されているが、そのうち、Aは、本来はDであり、また、Bはそのようなデータ自体ないというケースにおいて、当該「A、B、C」というデータを「D、C」に訂正するということを想定しており、「A、B、C」をゴソッと全部削除するということことは、26条の場面では、できない模様。


 また、27条の場面においては、本人から、当該本人が識別される保有個人データが『第16条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第17条の規定に違反して取得されたものであるという理由』によって、当該保有個人データの利用の停止又は消去を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときに、利用停止等を行わなければならないとされているので、16条または17条違反ではなかったり、違反であったとしても理由がなかったりすれば対応しなくてよいともいえるわけです*1

   個人情報保護法
 (利用目的による制限)
第16条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
3 前2項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
 (1) 法令に基づく場合
 (2) 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 (3) 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 (4) 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 (適正な取得)
第17条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

 以上のように、データを登録されている側から訂正や利用停止を求めても、そのデータ保有者側がそれに対応しなければならないとされるケースは、たいへん限定されているのです。というわけで、そもそもの前提となる『本人の同意』がなくなる(=取り消される)のだから、当然に、削除/消去ができるものと考えていたのですが、そうでもないということなのでしょう。


 それにしても、削除しますといったところで、本当に削除されたのかどうかこちらからは確認する術がないわけで。これも困ったことやなぁという思い。前にもダイレクトメールをとめてくれと連絡したにもかかわらず、継続して送ってきたという経緯もありますし。。
 一応、ご担当いただいた方のお名前も伺いましたが。
 信じてますよっ、○○○○さんっ。ちゃーんと削除してくださることをっ! (^ー^)

*1:この場合において、ようやくデータそのものの「削除(27条においては『消去』と規定されるもの)」を想定しているようです。