市民裁判員先行記第22回/Winny事件第10回公判

 京都地裁Winny開発者が被告人となった、著作権法違反幇助に係る事件。第10回公判に傍聴に行ってきました。とはいえ(、先般からちょこちょこと予告していたように)、本日は、途中退席。どうしても外せない用事がありましたので。ということで、このエントリは、まったくもって半端なものであることをご了承ください。今日も、傍聴券は先着順です。


■傍聴前について

  • 12:30ごろ 今日は、連休の谷間ということもあり、遠方から来られる方も数多くいらっしゃるかと思って、少し早めの到着。しかし、この時刻に並んでいたのは数人。いつもどおりでよかったかな?  ついでに、本日、京都地裁(簡裁)で開かれる公判を確認してみると、今日はWinny公判1件だけだったみたいですね。
  • 13:10ごろ 裁判所の職員さんから、恒例の注意事項説明などなど。
  • 13:20〜 入廷開始。マイバックを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後に、101号法廷へと。
  • 13:30 さっ、いざ開廷です。


■公判内容については、あくまで【情トラ】の個人的なメモを、カンタンにまとめただけです。全てを再現しているわけではモチロンありませんし、実際の内容に【情トラ】が理解したものを付け加えてしまっているトコロもあります。また、私の理解不足や事実誤認などもあるかもしれません(、いや、必ずあるはずです)。ご注意を!
◆また、本日は、1時間ほどで途中退席したこともあり、その退室までの概要をまとめるだけにいたします。その旨ご了承ください。
■なお、私が傍聴できたのは、「弁論の更新にかかる弁護側からのパワーポイントによる意見」を全てと、「検証結果の証拠調べ」のさわりだけです。今日の公判: 壇弁護士の事務室によると、

今日のメインは更新弁論の意見ではなく、検証結果の証拠調べである。

だったとのこと。いまのところ、Winny公判、初傍聴: Matimulogだけは拝見させていただきましたが、今回は、詳細な傍聴録がどこかにアップされるのでしょうか? なお、弁護団が使用したパワーポイント資料については、早期に公開していただけることを期待してやみませんっ。
■なお、Winny(ウイニー、ウィニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛



■新年度となり、検察官は1名交代。今まで中心的役割を果たしていた(と思われる)方が交代し、見た目には、グッと年齢が上がったという印象。また、裁判官も(おそらく)1名交代。見た目には、ほとんど何も変わってないなという印象。

■はじめに裁判長から、裁判官の構成がかわったことによる更新を行うにあたって、検察官、弁護人それぞれから意見はないか、との問いかけ。それに対して、検察側は従前のとおりとする旨の意思表示。弁護側からは、意見があるとの回答。プロジェクターも用意して、パワーポイントで作成した資料(「更新弁論添付資料」とのこと。)を、法廷内の壁に投射して意見開始。なお、後ほどわかったのですが、このプロジェクターは裁判所のもののようです。以下は、その「弁護側からの更新弁論の概要」を【情トラ】の理解のままに箇条書きに*1

  • 本事件の本質
    • 先日、亡くなられたヨハネ・パウロ2世は、地動説を唱えたガリレオ・ガリレイに謝罪した。本事件をこのことと同視しようというわけではないが、しかし、共通点がある。それは、ガリレオの地動説への偏見とWinnyの開発目的に対する偏見であり、いずれも客観的事実を正視しないことから生じる悲劇だ。
    • 検察側のP2P技術への無理解は、弁護側からの求釈明への拒否からも伺えるところである。
    • 被告人があたかも著作権法違反行為を社会に蔓延させようという主張を有していたとして、被告人の主観を殊更に強調する立証が、客観的事実を示すことがないままに進められている。
  • (検察側の)攻撃防御対象の不特定
    • 幇助は、処罰の範囲が無限定になりかねないものである。
    • この点、起訴状の公訴事実では、Winnyについて、ファイル送受信機能を有するファイル共有ソフトとの説明がなされているが、こうしたファイル送受信機能は、通常のメールソフトにもある機能であって、それらと何が異なるのか明らかではない。
      1. Winny自体が違法なのか。
      2. Winnyが違法だとして、どの機能が違法なのか。その機能は、他のソフトが有する機能と何が違うのか。
      3. Winny自体が違法でなければ、一体何が、どういう行為が違法なのか。
  • 検察官の立証
    • 全体像をいっこうに明らかにしない五月雨式
    • (被告人の)主観立証に偏重しており、思想犯罪であるかのような扱い
  • 本件捜査の端緒
    • 当初はプログラム開発と著作権侵害行為は別として、参考人として事情聴取された。
    • 著作権法違反を蔓延させる目的があったとの表現が、被告人の申述書に突然あらわれた。
    • しかし、その表現は、捜査担当者が作成したものを、被告人が写したにすぎないものである。
    • さらに、捜査責任者は、そのことを知らないまま、その申述書をもとにして立件するにいたったのである。
  • 捜査経緯の不合理
    • 捜査機関の著作権法に対する知識の欠如
    • ソースプログラムを押収していながら、いまだに終えていない分析
  • P2Pの説明(アニメーションによるもの)
  • Winnyの開発経緯等について
    • Winny利用者を違法著作物収集者と思い込み、2ちゃんねるの記載をろくに確認せずに捜査しているのではないか。
    • Winny2は大規模BBSの実現のための実証実験であるにもかかわらず、捜査側はWinnyとWinny2の区別もついていないのではないか。
  • ファイル共有ソフト著作権をめぐる世界的動向
    • ほとんどが民事。また、その民事上の責任すら否定の事例もある。
    • 刑事では、韓国の事案があるが、これには無罪判決が出ている。
  • 幇助犯の成立について
    • 幇助犯は、正犯との間において相当程度の関連性がなければ成立しない。
    • たとえば、自動車の販売を考えてみれば明らか。極論すれば、自動車を販売すれば、駐車違反の犯罪が起こることが容易に推測されうるが、そうだとしても、自動車を販売することは幇助にはならない。
    • 被告人の行為が幇助に該当するという客観的事実は明らかにされていない。だからこそ、捜査機関において作文し、それを写させたのであり、異常な捜査となっている。

■以上のように、弁護側からの意見が述べられました(※あくまで【情トラ】がうろ覚えのまま記載しておりますので、話半分どころか話4分の1程度でお読みください。)。
※なお、裁判官のみなさんの様子を時々確認していたのですが、ほとんど手元の資料(おそらくは、パワーポイント作成資料をプリントアウトしたもの)を読んでおられて、映し出されたものは見てはいなかったようです。ただし、、アニメーションで作成した資料を映し出した際は、みなさんがその映像を確認されておられましたね。


■次に、2月25日に実施した検証の様子を録画してCD-Rに保存しているので、それを再生することにより検証調書の取調べを行うことに。この検証とは、京都府警捜査担当者の捜査により、Winnyの動作状況の確認の検証であり、CD-R再生映像は「更新弁論添付資料」と同様に、プロジェクターにより法廷内の壁に映し出されました。以下は、その「検証」を【情トラ】の理解のままに、ほんの少しだけ箇条書きに。

    1. 検証に使用するパソコンはFMV。外付けハードディスクはアイ・オー・データ機器製。
    2. パソコンを起動させて中身を確認。
    3. 外付けHDを初期化。
    4. IPアドレスや、ファイアウォールの確認
    5. http://nynode.info/winny2/ から「Winny7.1」及び「初期ノード」をダウンロード。
    6. Eドライブ(外付けHD内)にダウンロードしたものを解凍。
    7. Winnyを起動して、この画面を確認。

■以降、まだまだ続くも【情トラ】は、このあたりで退室。


【情トラ】感想等
 あのように、検証の様子を法廷内において上映することって、少なからずあることなのでしょうか? というか、この上映したものの記録は、どのように文書化されるのか(、というか、そもそも文書化するのか)興味あるところです。
 なお、連休中ということもあってか、id:gb2さんも傍聴録をupされて(されつつ)ありますね。次回の6月2日は、どーなのでしょうか? 私は傍聴できそうですので、せいいっぱいメモするつもりではおりますが、いやはやどうなることやら。。

*1:いや、映し出された資料と口頭での説明で、情報量が相当なものでしたので、メモがとりづらかったのです。。