行政執行業務改革のアイデアに関する覚書

 行政執行業務改革のアイデアには、2つの方向が考えられる。一方は、従来からの基本的事項を丁寧に磨き直すものであり、他方は、従来からの事項にとらわれず発想の転換を伴うものである。そして、この両者のバランスがとれたアイデアこそ、改革に相応しいといえよう。基本が蔑ろでは、行政執行が果たす重要な役割が揺らぐ虞がある。斬新なアイデアでなければ、従来の慣行に押し流されかねない。以下には、各々の方向を踏まえた具体的アイデアの概要を2案示すことにする。
 1つ目は、行政手続法等に基づく「許認可等の審査基準」等の再検討である。これらの基準は、まさに行政執行の根幹をなすが、従来からの慣行を明文化しただけという場合も多い。市民が納得できるか否かとの新しい観点から基準等を定め直し、市民にわかり易い表現で情報公開することが必要だと考える。その再検討には、弁護士等の第三者の関与があれば、なお良いと考えられる。
 2つ目は、行政組織内相互評価制度の構築である。現在、評価への市民参画の取組みはあるが、市民側には必ずしも強い誘因はない。そこで、自己評価より客観的であり、第三者評価より実質的である「共通する行政課題に関係する部課が相互に評価する」制度の構築を提案したい。
 この相互評価制度の目的は、行政目標に対し、自らがどう行動したかという自己評価だけではない。他部課の取組みが自らの取組みにどれだけ貢献し、それが行政目標達成にどれだけ寄与したかとの(他者評価も含む)総合的な評価を行うことにある。その結果として、他者を意識させ、緊張感を生じさせる効果が期待できるのである。
 なお、特定の課題ごとに網羅的な評価を行うことは、当該イシューに関心を持つ市民が積極的に行政参画する呼び水になることが期待される。また、その他にも有益な波及効果が想定されるが、それらは全て従来の縦割行政を打破する発想の転換に基づく効果といえるのである。