市民裁判員先行記第29回/Winny事件第14回公判
京都地裁。Winny開発者が被告人となった、著作権法違反幇助に係る事件。第14回公判に傍聴に行ってきました。
■傍聴前について
- 13:00ごろ 今回は、個人的にいつもと違うことがありました。あくまで個人的に。並んでいる方は、夏休みだからなのか、授業の一環だからなのか学生さんらしき方が多かったです。
- 13:10ごろ 裁判所の職員さんから、恒例の注意事項説明など。
- 13:20〜 入廷開始。マイバックを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後、101号法廷に。
- 13:30 開廷。
■本日も、最初から最後まで傍聴しております。閉廷は15:40ごろでした。
◆公判内容については、あくまで【情トラ】の個人的なメモをまとめたものです。全てを再現できているわけでは勿論ありません。また、語尾表現を簡潔にするなど、様々なかたちで【情トラ】の手による編集等も加えていますので、細かいニュアンスなどは全く異なる印象を与えることもあるかと思います。それだけではなく、実際には発言されていないにもかかわらず、【情トラ】が理解した(思い込んだ)ものを勝手に付け加えてしまっている箇所もあるかもしれません(※特に、傍聴録中「?」を付加したものは、メモしてはいるものの、その内容を忘れたもの等ですので。さらには、私の理解不足や事実誤認なども、必ずあるはずです。とまあ、多くの但書がありますので、その旨ご留意されるようお願いいたします。
■なお、これまでの【情トラ】まとめ(概要)は次に掲げています。ご参考まで。
◆【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛
今回の尋問の立証趣旨は、ゲームデータの同一性を明らかにする目的というものでしたが、実際の尋問内容としては、その鑑定書の作成経緯について、個人的には興味深いやりとり等がなされました。
■はじめに、検察側からの新たな証拠調べ請求として、甲240号証を請求。本日の証人が作成した資料とのこと。これに対する弁護側の回答は、不同意。
■続いて、本日の証人の方が呼ばれました。今回の検察側証人は、任天堂株式会社法務部法務課(現在は、商標著作権グループ)の方。正犯事件に関連して、ゲームボーイアドバンスのゲームプログラムの真正・不真正の鑑定を行ったとのことです。最初の人定質問では、裁判長が、あらかじめ提出された用紙に記載のとおりで間違いないことを確認。そのうえで証人が宣誓を行いました。
◆証人に対する検察側からの主尋問
- 入社から現在までの勤務経緯をお願いします
- (省略します)
- 不正商品対策として、真正か不真正かの鑑定を行ったことがあるか
- はい
- ゲームボーイアドバンスのプログラムと同一であるかを比較する鑑定か
- はい
- その方法はどのようにされたか
- 自分で考えた
- 独学か
- はい
- 具体的には
- Web上で学んだり、開発に尋ねたり
- 今回の(Winny事件に係る)案件以外で鑑定したことは
- ある
- 何回
- 2回
- いつか
- 2002年11月と12月
- 一人で鑑定したのか
- はい
- 平成14年に2回鑑定経験があるとのことだが、その鑑定に用いた機材・方法・ソフトは、今回のWinny事件に係るものと同じか
- はい
- 平成14年の2回の鑑定が、裁判で問題になったことはあるか
- ありません
- 鑑定対象は、ゲームプログラムか
- ゲームボーイアドバンスのROMをrar形式にしたもの
- どのような形式
- rar形式
- 鑑定の資料は
- CD-R
- 資料の写真を示します
- はい
- 鑑定事項は3つで、ひとつめが「CD-Rにあるプログラムデータは著作物か」、ふたつめが「当該データは不真正なものか」、みっつめが「不真正だとすればその理由は何か」であるか
- はい
- 任天堂のソフトだけを鑑定したのか
- いいえ
- (正犯事件に関係するものとして)8社26タイトルがあるが
- すべて私が鑑定した
- 甲39号証判決公文添付一覧表を示します。(この)8社26タイトルをすべて鑑定したのか
- はい
- ゲームのデータはCD-Rに入っていたのか
- はい
- ゲームボーイアドバンスに対応するデータだったか
- はい
- なぜ任天堂以外の鑑定もできたのか
- ゲームボーイアドバンスのソフトはOEM生産をしているため、データがすべて揃っていた
- ハドソンとか他社の鑑定責任者のいきさつは
- ACCSさんが各社に確認されたのではないか
- 実際には証人がすべて鑑定したのか
- はい
- 鑑定時期は
- 2003年10月
- 日にちは
- 10月初旬と後半
- 10月3日と10月23日とあるが、なぜ2回行ったのか
- 正犯のための鑑定ときいた(?)
- 鑑定の嘱託は何回か
- 2回
- 鑑定場所は
- 任天堂本社
- 使用機材は
- パソコン
- ○○か(機種名は正確に聴き取れませんでした)
- はい
- Windowsか
- はい
- それぞれどのようなソフトか
- RarUtyはrar形式ファイルの解凍ソフト、+Lhacaはzip形式ファイルの解凍、?はプログラムの差異の確認に、バイナリファイルコンペアは相違バイト数の比較に用いた(?)
- rar、zipとは何か
- 解凍ファイルの名前
- 圧縮されたものを解凍するということか(?)
- (弁護側より)誘導尋問が多いのではないか
- (裁判長から)特に問題にはならないと思うが(?)
- (検察官(特に注記がなければ、以下同じ))バイナリファイルとは
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))ここではオブジェクトコードのこと
- (3)とバイナリファイルコンペアの違いは
- (3)は相違箇所を示すもので、バイナリファイルコンペアは相違バイト数を示す
- (3)とバイナリファイルコンペアの使い分けはどのようにしたか
- (3)で100%一致のときは(3)のみで、いくつか相違箇所があった場合にバイナリファイルコンペアを用いた
- それらのソフトはどこから入手したのか
- インターネットからダウンロードした
- 動作確認は
- データの中身をかえることで確認した(?)
- 鑑定するときには、いつも(3)とバイナリファイルコンペアを用いたのか
- はい
- ロムチェッカー*3とは
- 以前使用していたソフトウェアであるが、今は使っていない
- 鑑定書にその名称が挙げられているが、誤記なのか
- はい
- ロムチェッカーは使っていたのか
- 私は使っていない
- 前任者が使っていたのか
- はい
- なぜ証人は使わないのか
- 使い勝手が悪いので
- ロムチェッカーでも鑑定が可能か
- 可能
- 実際にしたか
- いくつか行ったが、(3)と同じ結果となった
- 真正かどうかの動作確認はどのように行ったのか
- エミュレータを用いて
- その手順は
- rar形式の対象ファイルをRarUtyで解凍
- 解凍するとどうなったか
- zip形式のファイルがあらわれた
- ファイル個数は
- 100個
- それから
- さらに+Lhacaで解凍
- そして
- (3)に真正データと対象データを入れた
- そしたら
- 「ファイルに相違はありません」との結果がでた
- (検察側から)240号証添付資料を示すことは構いませんか
- (弁護側から)はい
- (検察側から)速記録末尾に添付してほしいのだが
- (弁護側から)わかりません、すべて聴いてからでないと
- (検察官(特に注記がなければ、以下同じ))これは何ですか
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))ハドソンのボンバーマンストーリーの真正データと対象データの比較結果
- 2つにわかれているが
- 右が真正データで、左が対象データ
- 真ん中に(?)
- すべてのデータが100%一致したということ
- 相違があるときは
- 相違箇所にカーソルがとぶ
- 8社26タイトルはすべて完全一致したのか
- いいえ
- 完全一致しなかったのは
- 2タイトル
- 何か
- それらをどうした
- バイナリファイルコンペアを用いた
- 相違数の単位はバイトか
- はい
- 資料の3枚目を示します。これは
- ボンバーマンストーリーの真正データと対象データを比較したもの
- バイナリでか
- はい
- 上下にわかれているが
- 上が真正データで、下が対象データ
- 25072バイトの違いか
- 25072バイトの違い
- 具体的にどれだけの違いが
- 「総バイト数」マイナス「相違バイト数」を「総バイト数」で割って、かける100
- ボンバーマンでは
- 99.4%が一致
- 100%だと
- 同一ということ
- ファイル数は
- 4メガバイトであるので、4×1024×1024
- 419万バイト以上か
- はい
- 相違部分は
- ゲームデータの最後尾
- ゲームのプログラムに関係があるのか
- いいえ
- 空き容量の部分か
- はい
- 同一性は
- あるといえます
- 同一のプログラムで間違いないか
- はい
- いったん終わります
◆検察側からの主尋問はここまで
■弁護側からの反対尋問
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))証人の情報処理に関する知識を伺います。何らかの資格は
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))持っていません
- 知識は独学か
- はい
- 鑑定方法はあなたが考えたのか
- はい
- 鑑定時にいた人は
- 1人でやっている
- 他社の方々は同席されるのか
- いいえ
- ソフトウェアの知識がある人はいないのか
- はい
- 元データはゲームボーイアドバンスのパッケージされたものか
- はい
- そのままか
- エミュレータをインストールして
- パッケージになったからデータを抽出したのではないのか
- はい
- パッケージされたデータとマスターデータは全くの同一か
- はい
- 暗号化はないのか
- はい
- パッケージからすいとれれば、エミュレータを使ってパソコンで動作確認ができるか
- 特殊なツールがあれば
- 資料にロムチェッカーと記載したか
- はい
- それは誤記とのことだが前の書式を使ってしまったからという理由か
- はい
- 誰が書式を作ったのか
- 私
- いつごろか
- 覚えていない
- 鑑定は何回したか
- 2回
- 平成15年10月上旬と下旬の2回か
- はい
- 27号証を示します。この資料には、鑑定日が平成15年11月28日となっているが
- その日は各社の鑑定日である
- (検察官から)どこの会社のものを示しているのか
- (弁護人から)コナミである
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))任天堂が鑑定場所となっているが、そうか
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))そうではない
- 28号証について。鑑定日時は平成15年11月28日、場所は任天堂株式会社本社、方法はロムチェッカーとなっている。29号証も、30号証の鑑定報告書も。31号証も。これらは事実とは違うのか
- はい
- 32号証も。実際と異なる記載についてご意見はあるか
- (検察官から)異議がある
- (裁判長から)11月28日となっているのはなぜか(?)
- (証人)私にはわからない
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))書式は、証人が作成したものか
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))はい
- 証人はどこまで記載したのか
- ACCSに提出した(?)
- あなたは完成品を提出したのか
- はい
- あなたはいつごろ提出したか
- 10月23日かそこら
- 日付が違うが
- かわるのは当然かな
- あなたはどうしてかわっているのかわからないとおっしゃいませんでしたか
- はい
- では(、日付がかわるのは当然という発言は)、訂正でよいか
- はい
- 鑑定結果及び理由の箇所について、どうして同一と判断したのか、その理由は
- 理由は推測で送った
- 記憶喚起のために甲21号証、、甲22号証ですね、示します。結果及び理由は、あなたが記載したのか
- はい
- 同一性があるとはどういうことか
- 100%一致します
- 100%でないものは
- 推測で同一性があるとした(?)
- 甲32号証、、すみません、甲31号証を示します。結果及び理由はあなたが記載したか
- この文章自体は私ではないが、私の送った結果をもとに各社担当者が書いたものではないか
- ミスタードリラーについては理由が書いていないが
- はい、そうですね。誤植だと思いますか
- ロムチェッカーは全部のソフトにしたのか
- 一部だけ
- エミュレータは一般に売られているものを用いたのか
- いいえ
- どこで入手したのか
- インターネットでダウンロードした。フリーのエミュレータである
- どのようにして(ソフトウェアの動作)確認をしたのか
- 実際に動かした
- 何個
- すべて
- 同一性は、%で表すのか
- はい
- 著作物は、%で表すのか
- 私にはわかりません
- 同一なら何%以上(?)
- わかりません
- 重要な部分なら少しでも相違があれば同一著作物ではないか(?)
- はい、そうかもしれません
- 相違はどの部分にあったのか
- 最末尾、一番末尾の部分
- それはどのような部分か
- 意味のないデータ
- 意味があるかないかわかるのか
- だいたいわかる
- どのようにして
- FFF、20という文字列がある程度の判断になる(?)
- 推測ということか
- はい
- (検察官に対して)240号証を貸していただけませんか。写りがいいんで
- バイナリファイルコンペアの画面です。(資料を示しながら)これは意味のあるデータか、意味のないものか
- 意味のないもの
- 同一となったものは印字していないのか
- はい
- (また、資料を示しながら)これは意味があるものか
- はい
- 同一ですか
- はい
- 印字の基準がわかれたのはなぜか
- 理由はないです
- (検察官から弁護人に対して)期日について訊いてくださいよ(?)
- (弁護人から検察官に対して)ご自身でお尋ねになられてください(?)
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))バイナリデータについて全て印字したか(?)
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))全部印字したものはない
■弁護人からの反対尋問はここまで
◆検察官からの再尋問
- (検察官(特に注記がなければ、以下同じ))補充として訊きます。甲240号証はいつ作成したか
- (証人(特に注記がなければ、以下同じ))一昨日です
- 資料を作成したのは
- 訂正します。先週金曜日です
- どのようにして
- メールで検察庁に提出した
- どうして
- そのような要請があったから
- わかりにくかったので確認する。任天堂名義以外のものについて鑑定をしたのか
- はい
- ACCSに提出したものは
- メールで鑑定したもののタイトル名と鑑定結果を送った
- 鑑定結果とは
- データの一致が100%のものはそのまま、相違があったものはその理由を推測して送った
- 推測とは
- 相違が出た理由
- 甲23号証の報告書に、ボンバーマンストーリーの鑑定結果及び理由が記載している。その理由はROMデータの空き容量の調節とされる部分に相違があるだけなので同一であるとの記載がある(??)
- メールで送った理由と同じ
- では推測とは
- すいません、事実を伝えたとおりのことが載っている
- バトルネットワーク ロックマンエクゼについては
- メールで伝えたとおりのこと
◆検察官の再尋問はここまで
■裁判官からの尋問
- (裁判長から)(弁護側が)不同意とされた書証の内容がわからないので、21号証をみせてもらえますか。(尋問の際に)弁護人も(証人に)示されている
- (弁護側から)留保します。
- (裁判長から証人に対して尋問(特に注記がなければ、以下同じ))任天堂で鑑定に関して専門的に行う方はあなただけですか(?)
- (証人から(特に注記がなければ、以下同じ))当時は1人ないし2人です
- あなたからACCSに報告して、そこから各社の担当者が改めて鑑定するんですか
- 私にはわからない
- あなたとしてはわからないでいいのか
- はい
- (右陪席の裁判官から証人に対して尋問)各タイトルを動作したのはどの程度か
- (証人から)1分程度
- (右陪席)はじめを動作させただけか
- (証人)はい
■裁判官からの尋問はここまで
◆その後
- (検察官から裁判官へ)本日の尋問の立証趣旨は、鑑定書の作成の経緯ではなく、あくまで同一性の証明についてですので。
※ここで先ほど添付するかどうかをやりとりしていた資料について、証人にその場で手書きにて書き写してもらい、それを公判記録に添付するということで話がまとまった模様(?)。証人が手書きで何やら書いていました。
- (裁判長から証人に対して)そいじゃご苦労さまでした。
◆証人が退廷
■以下は、今後について
- (裁判長から検察官へ)この他に申請されたいた7人の証人申請については(?)
- (検察官から)7人については撤回します
- (裁判長から)では、今後はいわゆる乙号証の証拠調べとなるのですが。。
- (弁護側から)まだ検察側から取調状況について、2通あるとされる証拠が1通だけしか開示されていないなどの問題がある(?)
- (裁判長から)それでは、次回の公判を取り消して、進行協議期日とし、三者で今後の協議をいたしましょう。よろしいですか。(被告人は)出頭の義務はありませんので、出てこられてもこられなくてもどちらでも結構ですし。では、次回の公判は9月5日です(?、以上、大意)
◆【情トラ】まとめ
今回の証人は、言わば傍論のような方でしたので、特に記すことはありません*4。次回の9月5日(月)13:30〜17:00については、私は傍聴する予定です。さてさて、どのような進行となるのでしょうか、楽しみにしているところです。特に乙号証の証拠調べは、どのようになされるのでしょうか。