法学バトン
id:kei-zu さんから渡されましたバトン。
◆法学バトン - 自治体法務の備忘録(Old)
たいへん遅くなったうえに、他の方にとって意味あるものとなったのかについては大きな疑問もありますが、エイヤッとばかりに公開させてもらうことといたします。
■本棚にある法学文献の数
自ら所有している法学文献は、今のところ、講義にて使用している教科書ぐらいです。ただ、指定されている教科書だけでなく、その他に併用したほうが良いと考えた併読用基本書も購入しましたので、数は「教科書+何冊か」というところ。なお、講義で示される多くの参考文献のコピーや自分で参考になると思った文献*1などを、A4用紙がそのまま入る封筒*2に入れて管理しています*3。
あと、学校の書庫にたくさんの法学文献があるので、いつもフル活用。すぐに手にとって確認できる文献が相当数ある環境には、ほぼ満足しております。
■今注目している法学者
私自身は全くもって力不足ではありますが、ダンカン・ケネディ(Duncan Kennedy)の理論に関する、船越資晶先生のいくつかの論文を少しずつ読むこと*4としています。
■最近買った法学書
- 作者: 芝池義一,高木光
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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次年度の講義で使用するもの。この夏休み中に少しずつ蓄積しようと思って購入。
自らにプレッシャーをかけるため、これに掲載された問いをアレンジし、そのうえで作成した解答を、この附゛録゛に掲載していく所存であることをここに宣言いたしますっ!?
■よく読む、または特別の思い入れのある法学論文・法学書5選
私の大学学部時代の専攻は行政学ですので、専ら私の関心ごとは、政治・行政に向けられてきたという経緯があります。そして、それは基本的に現在に至っても変わっていません。そうしたことを踏まえていただきつつ、ある程度一貫性のある法学論文・法学書5選を挙げてみたいと思います。それも、私の現在の関心を何とか文章化してみるという試みも含めて。
- 作者: 村松岐夫
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1994/04
- メディア: 新書
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ということで、いきなり法学書ではありません!?
初版が1994年ですので、内容は少し古いものとなっているところがあります。また、何よりもとっつきにくいと感じる方が少なからずいる*5という、その文章、そのリズム、その展開。かく言う私も最初は親しみにくかったという思い出があるのですけど、再読、再々読、再々々読、、、と繰り返すにしたがって、そのリズムや展開がツボにはまり、何ともいえない数々の示唆に富む内容だということをしみじみと感じ入る次第。振り返ってみると、この書籍に示された内容、この書籍を足がかりに辿っていった数々の文献及びイロイロな実経験から、ホントに多く影響を受けて、今の私があるのではないかとまで思っているところです。
「最大動員システム」とか、「中央と地方の相互依存関係」など多くの切り口があるのですが、法学バトンであるこのエントリーでは、次の箇所(241頁)を引用させていただきたいと思います(【情トラ】が一部改変しています。)。
官僚の裁量が引き起こす癒着を立法部の復権によって解決しようというのがセオドア・ローウィで、彼は法律の中に基準をしっかり内在させた上で行政部に裁量権を与えた法律のほうが、そうでない法律よりも、円滑で公正な運営がなされると主張した。そのような立場を依法的民主主義という。日本の文脈では、同時に依法的民主主義を司法部との関係で強調したい、と考えるのが本書である。
そして、その後、次のように(242頁)も述べられます。
立法機能の政策的次元の再編成と同時に、ミクロレベルの権利調整を司法的正義の実現によって行なうことが重要になったきた。
ここでは詳細に述べませんが、この「立法部の復権」と「司法的正義の実現」という2つの視点が、現在、多くの課題を考える上で、最も必要とされているものではないかと、私は考えているところです。
で、続いても、ジャンルとしては法学ではないんだろーなぁと思いつつ。「立法機能の政策的次元の再編成」ということに関連して、自治体政策過程に関する研究を挙げることとします。
- 作者: 伊藤修一郎
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2002/04/01
- メディア: 単行本
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「情報公開条例」、「環境基本条例」、「環境アセスメント制度」及び「福祉のまちづくり条例」の制定過程を、様々な角度から分析されている内容。普段は書籍を即買いしない私が、目次を確認しただけで購入したという珍しい記憶があるぐらいです。
個人的に、政策法務などを考えるにあたっては、その内容云々だけではなく、その制定過程(及びその評価/検証過程)もどうあるべきかという視点が必要だと考えていることもあり、参考になった分析でした*6。この書のなかで最も取っ掛かりやすいのは、具体的な比較事例分析が行なわれている「第?部」だと思いますが、ここを読むだけでも十分価値があるのではないでしょうか。
そして、本書のなかで、キーワード的に用いられるのが、「相互参照」と「横並び競争」という概念*7。拙いながらも、これらを自分なりに応用したものが、私の本体サイトの取組みでもあるのです。
■http://www.geocities.jp/joho_triangle/reiki.html
■http://www.geocities.jp/joho_triangle/koho.html
ここでは、都道府県レベルで「相互参照」ができる一覧性を作出した結果、行政外部の一般市民というアクターにも情報共有がなされることにより、良い意味での「横並び競争」を一層促進させることができないかといった狙いがあるわけなのです。
その狙いは必ずしも成功しているとまではいえませんが、たとえば、新潟県が県公報のWeb公開を始めたその日に、私宛てに連絡をいただけたことなどは、この一覧性が持つ作用が良い方向にむかった結果ともいえるのかなと考えているところです。
◆ちょっと嬉しかったこと - 【情トラ】附゛録゛
そして、「司法的正義の実現による権利調整」ということにも関連して。だんたん法学に近寄ってきています。
- 作者: 阿部昌樹
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2003/09/01
- メディア: 単行本
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この書の内容について言及すべきであろう論点は多々あるのですけど、ここでは、次の指摘(24-25頁)を掲げておきます(【情トラ】が一部改変しています。)。
「これまでは、自治体が地域住民に対して発する『これが法の意味である』という語りは、多くの場合、権威を有するものとして受け容れられ、通用していた(24頁)」が、「市民オンブズマン組織の活動は、この自治体が地域住民に対して事実上有していた法の意味を語る権威に、揺らぎをもたらすものであった(25頁)」
ここでは、「市民オンブズマン組織の活動」が特に着目されていますが、私の関心は、「これまでの『権威』に『揺らぎ』がもたらされている」という指摘にあり、それは、今、私が次のような視点に興味をもっていることに関連します。
すなわち、
「法が法であるだけで正当性をもつとされるのは、おかしいのではないか。単なる野球のルールと何が違うのか。たとえば、野球で、16人しか揃わなければ、捕手は相手チームから出してもらえばよいし、12人しか揃わなければ、外野手をなくして外野に飛んだら全部二塁打とすればいい。そのときの状況にあわせた合意が、現場でなされれば良いはずなのである。
このことと同様に、訴訟といっても、所詮は正義というお題目をもとに行うバトルではないのか。それなのに、あたかも法には正義とか公平とかいう本質があると基礎付けたがる。これは単なる習慣や思い込みに過ぎないのであって、このような「法の暴力」でもって解決しようとするぐらいなら、当事者の間でお互いに納得いくような合意を目指したほうが良いのではないか。それこそが、差異ある個々を救い出すことにつながるのではないか。」
というものです。以上は、あえて極端な例を掲げてみましたが、言わんとしていることは、「絶対的権威の存在を前提とした法解釈」から、「状況にあわせた文脈依存的な法解釈」が求められるようになったのではないかということ*8です。
そして(、話は飛躍しますが)、こうした「状況にあわせた文脈依存的な法解釈」が求められるゆえに、「?その法律や条例の制定においては、多様なアクターが関与できるパブリックコメントや、そして、それらの多元的な見解を統合する議論を公開の場で行うという機能を備えた議会での審議・決議こそが、その中心をなすべきではないか」という考えや、「?一旦、法律や条例が制定されたからといっても、それを動かしがたい既定のものとは考えずに、常に検証し、見直す必要があれば見直していく態度が必要ではないか」という考えを、私は持っているわけなのです*9。
次は、グッと法学に引き寄せて。
- 作者: 山本敬三
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2000/01
- メディア: 単行本
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私の関心に即して言えば、この書では、上述した「状況にあわせた文脈依存的な法解釈」が求められる場合において、そこでは、一体、何を拠りどころとすればよいのかといった類の議論もなされていると、私は理解しています。このことに関し、序章の記述を適宜抜粋して引用します。
これまでの公序良俗論でおこなわれてきたのは、もっぱら判例の分類と整理だった。つまり、裁判所が「公序良俗」に反するとしてきたものを調べて、「公序良俗」違反の内容を分類するという作業である。(中略)しかし、一見してわかるように、そこには一貫した視点というものがない。とくに目に付いた共通項目をピック・アップし、関連する裁判例をとりあえずひとくくりにしているだけである。(中略)しかし、それで本当に公序良俗論の変化の意味を理解し、正当に評価したといえるだろうか。適切な理論枠組みなくして、現象を適切に理解し、評価することはできない。われわれにいま必要なのは、この「公序良俗」を語るための、そしてまたそこで生ずる諸問題を同定し、解決していくための適切な理論枠組みの確立なのではないだろうか(2-3頁)。
上述のように「立法機能の政策的次元の再編成」と「司法的正義の実現による権利調整」が求められるなか、「状況にあわせた文脈依存的な法解釈」も必要とされているのだと、私は考えるのですが、だからといって、文脈は重視したけれども、その内容が、単なるご都合主義の法解釈だったというのでは、何の説得力も持ち得ないことは確かでしょう。
そこで、従来はどうしていたかというと、「権威によって示された判断が正解である」という態度で、判例探し、通達探しをしていたいえるのしょうけど、これからは、それにかわる適切な理論枠組みを確立すること、また、原理的な観点から説きおこしていくことが、強く要請されているのではないかと思い巡らせているところです。その意味で、この書で示される理論枠組みの確立に向けた議論は、私にとってたいへん魅力的な道程を示すものといえるのです。
ラストは、行政法に関連したものを。
- 作者: 大橋洋一
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 1999/10
- メディア: 単行本
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ここまでに、長々と書き連ねてきたことを、自分なりにムリヤリにでも簡易な図式で表現しようとするならば、次のようになるのかもしれません。
◆「権威に基づいた不透明な裁量による画一的取扱い」
↓
↓
◆「透明な『対話』に基づいた本質的な理解を踏まえた合意による個別的調整」
したがって、ここに掲げた「対話」という概念を重視し、行政法学に関して論じるこの書は*10、まさに、この図式の後者について、その詳細を論じているともいえるのではないかと思うところです。
以上、法学バトンといいながら、私が、最近、考えていることを、覚書のように書き連ねてみただけという結果に陥っているのではないかと思いますけど、、、まあ、構いませんよね?
■バトンを渡す人
思い浮かぶ方は、イロイロいらっしゃって、たとえば某県*11某知事など、案外、気軽に回答していただけるのではないかと思うものの、やっぱり自粛。その他の方については、ちょっと考えておきます。
で、それ以外で思ったのが、たいへん図々しいお願いかもしれませんが、次のような依頼を、47都道府県 法務担当者 様 宛てにお送りしてみることです。こうしたお願いしてみようなんて考えるのは、私ぐらいなものでしょうし。せっかくですから、市民を含めて相互参照できるようにしてみましょうよ、という趣旨で。
TO:各都道府県 法務担当者 様
FROM:【情トラ】管理人※各都道府県あて同時配信メールにて失礼いたします。
いつも、貴都道府県提供の例規集及び公報(いずれもweb版)を有意義に活用させてもらっております。京都市在住の 【情トラ】 と申します。先般は、例規集及び公報のWeb公開に関する照会に対し、ご回答いただきまして、誠にありがとうございました。
さて、お忙しいなか、たいへん恐縮ではありますが、このたび、下記のことについて、よろしければお教えいただけないかと考え、メールをお送りさせていただいた次第です。
この照会の趣旨は、純粋に個人的な興味という部分もあるのですが、ご回答いただいた結果について、私のほうでとりまとめさせていただき、みなさま方にご報告申し上げることで、一定の意義がある情報共有ができるのではないかと考えているところです。
このお願いに関するご回答又はお問い合わせ等につきましては、次のメールアドレス宛てにお送りいただけますようお願いいたします。
■返信先
(略)
以上、お忙しいなか、非常に申し訳ございませんが、なにとぞ、ご協力方いただきますようよろしくお願いいたします。
記
1.照会事項について
(1)貴課(係・グループ等)において所有されている法学文献の総数は、およそどのくらいでしょうか。
(2)直近に購入された法学書は、何という書籍でしょうか。
(3)よく活用される法学書を、5つまで挙げていただけますでしょうか。
(4)定期購読されている雑誌は、何種類になりますでしょうか。
2.照会の詳細について
(1)法学文献とは、一般に販売されている書籍等を意味することといたします。いわゆる例規集や法令集は含めなくて結構です。
(2)法学書とは、とくに憲法、民法、行政法等の区別を問いません。また、法制執務に関するものも含めることといたします。
(3)活用する法学書に関しては、5つという数は一応の目安にすぎません。1つから4つまででも、5つをこえても構いません。
(4)定期購読されている雑誌については、できましたらその名称もお教えください。
3.回答について
今回の照会に対する回答は、全くの任意で結構です。ただし、47都道府県全てに、同様に依頼しているところですので、できるだけご回答いただいたほうが、有意なとりまとめができるものと考えております。
また、回答期限ですが、8月末日を一応の区切りにさせていただきます。その時点で、ご回答いただいたものを集計して、結果を皆さま方にご報告差し上げたいと考えております。
なお、とりまとめに関して、ご希望等がありましたら、その旨をご回答に添えていただけましたら、可能な限り対応するつもりです。
■◆■◆■
京都府京都市 在住
【政・官・民の情報トライアングル】
H P : http://www.geocities.jp/joho_triangle/
Diary: http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/
この照会については、もう少し、内容を練ったうえで、週明けにでも送信してみたいと思います。
*1:多くは調査官解説ですけど。
*2:カナリの量になっていますが、こうしておけば、何がどこにあるのかだけはスグにわかるので。
*3:某ロースクールの「未修」クラスで何を使用している(使用する)のか興味がある方は、私信メールでもいただければ、ご参考までにお示しいたしますよ。このblogで、これまでに少なからず示してきているのですけどね。
*4:が、現在の個人的ブーム。きちんと理解できるかどうかはあくまで別問題。
*5:私が知る限りのごくごく少数の意見に過ぎませんが。
*6:余談ですけど、現在、「ローカル・マニフェスト」が、政策制定過程及び評価手法に関して、大きな意味を持つようになってきつつあることに、私は注目しています。
*7:詳細は、本書をご確認ください。
*8:たとえば、いわゆるADRが注目されている現状も、こうした流れを踏まえてのことではないかといえるのではないでしょうか。
*9:なお、今年度の後期に、阿部昌樹先生の授業をとっているので、できる限りのものを吸収したいと期待しているところであります。
*10:、私の独りよがりの見解かもしれませんが
*11:S県