法科大学院における先進的教育の実践研究セミナー@京都リサーチパーク
■法科大学院における先進的教育の実践研究セミナー
ちょっとだけ、個人的な感想などを主体として、メモ箇条書き。なお、あくまで、以下は【情トラ】が聴いて個人的に理解した限りでのメモにすぎませんので、その旨は必ずご留意くださいますように願います。
■「デジタル革命:法学教育におけるIT利用の現状と将来」指宿信 教授(立命館大学大学院法務研究科)
- 法学教育において、なぜ「デジタル化=ICT利用」なのか
- 一元的な管理が可能であること、個々のデータを結合して利用できることなどは、非常に同意
- 質疑の共有に関する課題として、他人が読める/聞ける状況において、質問をしたがらない傾向があるのではないか
- 何かのきっかけ、または、はたらきかけ等があれば、打開できる課題なのではないかとも感じなくもない
- NDOメソッドとは - はてなキーワードなどに示されるような意識も浸透しつつあるのでは
- 講義などにおけるマルチメディア利用(ex.留置場の画像や、逮捕後の手続の流れを示した図の利用、任意取調べの録音をデジタル化して聞かせるなどの取組み)
- やっぱり、とってもインパクトがある
■「遠隔講義システム等を活用した教育実践事例」米田憲市 助教授(鹿児島大学大学院司法政策研究科法曹実務専攻)
- ICTを利用する新しい実務スタイル、つまりは、事務所にいないと仕事ができないような環境づくりではなく、パソコン等により仕事環境をモバイル化できる能力の必要性
- 既に、そうした必要性は常識だと考えている人も多いのではないかとも思わなくもない
- 大学混成のグループをつくり、作業をさせることも行う必修科目としての法情報論
- 積極的な学生、消極的な学生に、けっこーな差が生じそうな感じがしなくはない
- 開発しているシステムのオープン化
- オープンソース化ということか。是非行っていただければありがたい限りです
■「基礎と応用の双方を欲張る講義実践」松岡久和 教授(京都大学大学院法学研究科)
- (現行口述試験問題を想定した)完全オリジナルの問題を作成
- なるほど、口述試験という方法は、理解を確認するのにとても適したものだとの感じは、確かにするわけで
- 集団的学習の効果の強調、教えあいをしなさいとの指導
- これも上記に同じく
- (「私がこのようによんでいる」との前置きありで)隠れた「ブラックリスト」
- 問題、そして、その解答及び解説を学生に作成させることの意義
- これは、【情トラ】も拙いながら、ずっと前から実践している方法です
- ex. 【おべんきょ情トラ】身につくロースクール/準備編1 - 【情トラ】附゛録゛
- 【Teacher's Manual】について
- 参考資料として、実際に作成して利用されたものと同程度にまとめられたマニュアルが配布されました。これを参照しつつ、今後は、授業の復習の際などに、こうしたマニュアルを自作してみるといった方法も試してみたいです。個人的にはめっちゃ効果ありそうな気が
■「法情報の収集・分析能力の効率的取得」高嶌英弘 教授(京都産業大学法務研究科)
- ①法律学の基礎知識の取得、②法情報の収集能力、③取得した情報の分析能力、との3点を有機的にリンクさせつつ涵養するのが理想
- ロー生の自学自習の基本となる能力ということには、同意。また、これは、規模的な問題があるにせよ、法学部生に対しても行うべきことなのではないか(、それとも既にやっている?)。実現性は別にして、ロー生にこのような法情報関連授業を行い、それを修得したロー生が学部生を教えることも両者にとって有用であると考えられなくはないか
- やってみせ、言ってきかせて、させてみせ、誉めてやらねば人は動かじ
- ほぉ
■「法科大学院卒業生向けサービス『新司法試験学習支援システム』の発表等」大友幸雄 取締役部長(株式会社TKC)
- 法科大学院教育研究支援システムとしてロー・ライブラリーを提供しているTKC。法科大学院卒業したあとも使いたいとの声にこたえて、新司法試験受験生版ロー・ライブラリーを開始するとのこと。利用料金は、1年間24,000円(消費税別)
- 法律事務所や企業法務等に提供しているロー・ライブラリーの有償サービスは、フルで活用して(1年ではなく)1月で4万円程度とのことなので、かなりお得なプライスか
■「今後の法科大学院教育に求められるITを活用した教育の実践」パネルディスカッション
- グループで相互検討することの重要性
- 来年次には活発に行いたいと思う次第
- 94%のロー生が、TKCを利用
- おぉ。卒業後もそのまま囲いこみできるか要注目
- それぞれのメディアの特性をふまえる必要性。紙媒体には、一覧性があることや書込みの自由性があることなどが挙げられる
- デジタル媒体の特性として、統合性、再活用の簡便性、検索性の高さなどが挙げられるのでは
- ベンダー側の理解。たとえば、パッケージングしての提供だけではなく、カスタマイズの自由もほしいなどといった、ユーザーの声を反映できるシステムにて、常時受け付けてほしい
- 様々な要望をどのようにして、すいあげ、管理、実装するか。柔軟な工夫が必要では
- 法科大学院生の成績等に関し、先般の新司法試験プレテスト短答式試験の結果については、足きりをするとたいへんなことになる(?)ものだったよう。ただし、たとえば、定期試験直後の実施、冷やかし(的)受験もありうるなどのモチベーションの問題、憲民刑以外の科目についてマダ勉強が足りないのではないか、といった見方もありうる。なお、民事系は、得点率40%を受験者の8割が達成している(らしい)。また、その他については、まだ詳細な検討がなされることと思われる。何より一番大事なものは論文式試験なのであって、法科大学院教育こそが一番の近道であるとのメッセージが込められていることに注目してほしい
- (以上は、私が理解した限りでのメモ。決して正確な引用では有り得ませんので、ご注意を。)非常にためになるお話でした、ハイ
【追記】
参考として。
■blog of Dr. Makoto Ibusuki / TKCセミナー
また、あくまで個人的な感想をもう少しだけ。とくに、この参考として掲げた指宿教授がblogで記されている米田助教授報告に関する次の部分に関して。
手書きメモは許さない、六法の持ち込みも許さないという徹底した姿勢は、驚きをもって受け取られたようだ
こうした姿勢は、少なくとも私自身にとっては、何ら驚くべきことでもなんでもなく、既に常識ではないかと感じています。実際に、私は授業中においては、PCを持ち込むことにより、紙媒体の六法を利用していませんし、手書きメモなど全くしていません。そして、それは誰かから指示されたから、実践しているというわけではありません。
なぜ、そうしているかって、それが(私にとっては)効率的かつ効果的だと実感しているからとしか言いようがありませんが、少なくとも紙媒体の特性とデジタル媒体の特性を(自分なりに)理解して、それぞれ使い分けをしている現状においては、授業中にはそうしたスタイルが(私にとって)最適だと考えているところなのです。
思うに、こうしたデジタル媒体を活用する学生は、現状としては少数派なのかもしれませんが、これからドンドン増えていくだけであって、決して、少数派のままでとどまるということはないといえるのではないでしょうか。
なお、次に掲げるエントリは、こうしたICT等の活用に関することや、セミナー中に話題にあがっていた質疑の共有に関連する指摘*1などがあって、長いですけど、非常に示唆に富むものなので、ご参考までに。
■フォーサイトクラブ・セミナー「ウェブ社会『大変化』への正しい対応・間違った対応」梅田望夫さん講演ログ - pekeqのブログ
※せっかくなので、気後れせずに(!?)、指宿先生のblogにtrackbackさせていただきます。やっぱり「ICTを利用した教育の紹介」に関するセミナーの感想は、ICTを利用してということで。
*1:抜粋すると、「日本の人は、欠点をなくしてからその上に表現しないきゃいけないと思ってる 日本の人はまじめで、全部勉強しないといけないとおもってる」といった指摘など。