【おべんきょ情トラ】身につくロースクール/行政法8/パブリックコメント手続に違背があったときに、どのような主張ができるか

ケースブック行政法 (弘文堂ケースブックシリーズ)に掲載された問いを自分なりにアレンジし、解答案を掲げています。

【行政立法と条例】
パブリック・コメント手続に際して、当該パブリック・コメントを実施する行政側に手続違背があったことにより意見・情報を提出できなかった場合、どのような主張ができると考えられるか*1

 パブリック・コメント手続に関しては、その目的を、「①利害関係人が、その権利を不当な行政立法から防御するため」とする場合と、「②国民一般が、民主主義的コントロールを及ぼすべく行政の意思決定過程に参加するため」とする場合、そして、「③行政機関が、専門的知識を踏まえた意見・情報を有識者等から募るため」とする場合が考えられるところである。
 ①は、ある程度特定の範囲内の個々人が、具体的な権利の主体として行政が策定する命令等に相対するという関係であり、②は、国民一般が、行政中心の意思形成に対し、その国民としての立場から意思を反映させるという関係である。そして、③は、行政機関が、ある意味では一方的に意見や情報を国民から募るという関係である(なお、これら1つだけではなく、3者のうちの2つを、または、3者ともに目的とすることも当然ながら考えられるところである。)。
 以上をふまえると、パブリック・コメント手続に際して、当該パブリック・コメントを実施する行政側に手続違背があったことにより意見・情報を提出できなかったときには、①の場合では、手続違背によって策定された行政命令によって、個別具体的な個人の権利が侵害されたとして訴えを提起することが可能ではないか。
 対して、②の場合には、手続違背によって、意見・情報提出権という命令等制定過程参加権が侵害されたとして訴えを提起することも考えうるのではないか。
 最後に、③の場合では、原則として、手続違背があったにせよ、何らかの権利が侵害されたということもないことから、訴えを提起することはできないと考えられるのではないか。

*1:この解答案は、【情トラ】が作成したものであり、その内容については無保証ですので、ご注意ください。