地方の自主性・自律性の拡大のあり方について/概略

 私が個人的に関心をよせるトコロの(大きな)テーマのひとつに、いわゆるパブリックコメントがあるのですが、それに関連しているとともに、id:kei-zu さんの次のエントリに掲げられた内容を、チョット違った観点から考えたといえるであろうという議論が、第28次地方制度調査会第27回専門小委員会の議事録において掲出されています。
今の私たちの限界と可能性 - 自治体法務の備忘録(Old)

 議題は、「地方の自主性・自律性の拡大のあり方について」というもの。参考までに、【情トラ】による概略のまとめを、以下に掲げておきます。なるべく適切な抜粋(表現等の改変を含む。)になるようにはしているつもりですが、ヤハリ次のWebページを確認することをオススメしますけど。
http://www.soumu.go.jp/singi/No28_senmon_27.html

  • 地方公共団体に関係のある国の制度等に対する地方公共団体の意見の反映」
    • 自主性・自律性の拡大の方策の一つとしての地方公共団体の意見の反映
    • その一例としての法令の企画立案の段階で地方六団体に事前の通知を行うという、いわゆる地方版のパブリックコメント的な制度
    • その他地方団体から出されたいろいろな提言の整理、諸外国の制度の調査を資料として用意
  • 「検討の視点・背景」
    • 個別法令に対する地方団体の事務の義務付けとか、事務事業執行方法に対する枠付けの存続・新設、あるいは事務移譲が不十分だと、地方の自由度の確保が阻害されているという声が地方団体に強い
    • 地方公共団体に関係のある法令の制定・改廃などについて、地方公共団体の意見を反映する制度の拡充が考えられ、その結果として、国の側としても地域の実情なり、住民の要望を熟知し、実際に事務処理を行います地方団体の意見を法令の制定・改廃に取り入れることにより、より適切な制度の構築が可能になるというメリットが生じると考えられる
  • 「現行制度」
    • 地方公共団体の議会の意見書提出権(地方議会が意見書を国会、関係行政庁に提出できるもの。平成12年の改正で意見書提出先として国会が追加)
    • 長・議長の連合組織の意見申出権(地方自治法263条の3第1項のいわゆる地方六団体が、第2項で、「地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し、総務大臣を経由して内閣に意見を申し出、又は国会に意見書を提出することができる。」と、平成5年に議員立法で新たに設けられた規定)
    • 個別の法令では、例えば、廃棄物処理法の全国計画について知事の意見を求めるとか、森林法の保安林指定について関係知事の意見を求めるといった意見の聴取規定というのはたくさんあるところ
    • 審議会などの委員に地方団体の代表が就任するという形も、事実上の行為として参画の制度的なもの
  • 「これまで意見反映についてどのような提案・要望がなされているか」
    • 現行制度、つまり地方六団体の意見提出権、これをもっと活用すべきである
    • 連合組織の意見申出権を拡充すべきである
    • 内閣などに第三者機関を置く
    • 意見聴取、回答を国に義務付ける
    • 国と地方の協議の場の制度化、地方の関連する制度全般について意見を反映する仕組みをつくってほしい
    • 事前の法令の制定・改廃などの内容を知り得る制度にしてほしい
    • その他
  • 「意見反映の方策を検討する観点の整理」
    • 意見反映をする場合に、対象は何か。法律及びこれに基づく政令、そのほかに個別法に基づく計画や指針などを含むかどうか
    • 意見を述べる組織・機関は何か。個別の地方公共団体、長・議長の連合組織。地方公共団体にいわば代わって意見を述べるという機関として、内閣あるいは内閣府などに設置される第三者機関。国会(二院制のもとでの地方公共団体の代表の参画する一院)、国会の委員会という形で地方団体の代表が参画するなど
    • 意見を述べる方法はどうするか。国会・内閣などに意見申出、各大臣などとの協議、国・地方協議の場を設けるもの。そのほか事実上の組織による協議、審議会に委員として参画、国会への意思形成に参画、国民議会の議員と地方議員などとの兼職という形での参画、地方団体が法案提出権を持つ制度
    • 国の事前の対応義務はどうするか。事前通知、事前説明(パブリックコメントの地方版)。事前に意見聴取なり諮問を義務付けるという形
    • 事後に国がどういう義務を負うか。誠実処理義務、回答の義務、尊重義務、措置義務
  • 「具体的検討」
    • 現在の連合組織の意見申出権などの現行制度の活用(平成6年9月に一度しか使われていない)
      • 分野を限定せずにいろいろな問題について意見を述べるということが重要
      • 事後でなく事前に法令の制定・改廃の内容を知り得る制度が必要
        • 地方公共団体に対し新たな事務又は負担を義務付けると認められる法令案を作成しようとするときは、当該案の作成を担当する大臣が、あらかじめ、関連する資料を添えてその旨を関係連合組織に通知することを制度化することが考えられるか
        • 必要に応じ、各省大臣などと地方公共団体の代表との間で、地方自治に影響を及ぼす事項について協議する機会を設けることはどうか。意見書という方式にするのか、対面方式の会議なのか、常設の機関で考えるのか、アドホックなものとして考えるのか、法律か、閣議決定か、事実上のものとして設置するのか
  • 「委員による意見交換等」
    • 小早川副会長(小早川光郎東京大学教授)
    • 重要なのは、まずは情報の的確な流れの道をつくること。事後でなく事前に法令の制定・改廃の内容を知り得る制度が必要。この度の行政手続法改正で一般的な行政立法、政省令等についての一般的なパブリックコメント制度の法定化というのができたので、それを踏まえ、国・地方関係について、さらにどういう上乗せが必要かという、そういう整理になるんじゃないか
    • その際に上乗せの観点としては、1つは、法令案の中身が固まる前の段階で実効的な参与ができるような、そういうタイミングの問題が一つ。パブコメについては、とかく固まってから手続が始まるという、そういう批判があるわけで、そうならないような留意が必要
    • それから行政手続法は、法律制定には適用がないので、法律の形をとる国の施策についても、新しい何らかの制度の対象にしていくということはぜひ必要なことであろう
    • 「対象」の「法律及びこれに基づく政令」と、「個別法に基づく計画・指針」とを2つ分けてあるが、一律に一定の線引きをして網をかけるというのは難しいかも。ただ、いずれにしても、何らかの立法原則みたいなものはあり得て、個別法で計画なり基本方針なりを行政機関、国で定めるという、そういう仕組みをとる場合には地方の参画をちゃんと手続上仕組めということを、一般法として地方自治法なり地方自治基本法の中で書いておくということは考えられるのではないか
    • 小幡委員(小幡純子上智大学教授)
    • 法令案の作成はいろいろな段階があると思うが、これは段階としては、例えば内閣法制局に行く前の、原案の段階での話なのか、あるいはもう少しあとの閣議にかけていく前あたりの話なのか、どういう感じで考えているのか
    • 高部自治行政局長
    • なかなか一般的に言えなくて、早ければ早いほど余り具体性がなくて、だんだん詰まっていくという過程を踏むでしょうし、詰まり方もかなり長い期間をかけてやる場合もあれば、短いこともあるということなので、できるだけ早い方がいいだろうが、やはり抽象的にできるだけという感じにならざるを得ないのかなと思う。ぎりぎり制度的に担保できるのは、閣議決定よりも前であること
    • 小幡委員
    • 考え方としては、なるべく早めにというふうにやっていただいた方がよろしいのではないか
    • 林委員(林宜嗣関西学院大学教授)
    • おそらく現行制度の中で、かなり国からの義務付け、関与が行われている、そういう問題意識の中で様々な意見が出てきているんじゃないか。問題なのは、既存のそういう関与、義務付け、これをどうするかという組織が必要なのではないか。今、地方六団体からいろいろな形で要望が出てきている。それに対して回答があっても、それがなかなか実現しないといったときに、これをどのように実現されのかというようなことも考えていかないといけないのかなという気がする
    • 松本小委員長(松本英昭(財)自治総合センター理事長)
    • イニシアティブをどう考えているか。最初のパブリックコメント手続に準じた国・地方関係の手続の整備というのは、イニシアティブじゃない。その次の協議というものは、これはイニシアティブが入っている。今の林先生のご質問に合わせると、既存のものについても、ここを変えてくださいという協議の申出ができれば、先生のご要望の趣旨に合う
    • 西尾委員(西尾勝国際基督教大学教授)
    • (対象が)地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる法令案となっていて、事務の義務付けということが大きな要件になっている。しかし、それは少し狭め過ぎではないか。つまり、事務を市町村なり都道府県に義務付けるわけではないけれども、しかし、新しい制度の枠組みは国が決めてしまうという、その枠組みが細かく決め過ぎているのではないか
    • 例えば、最近施行された景観法は、中核市以上は自動的に景観行政団体ということになっているが、一般の市町村は自ら景観行政団体になるということをして、そして、やればそれを使えるという法律であって、一般の市町村に対して、新しくこれをしなさいと義務付けたわけではない
    • しかし、それを使おうと思うと枠組みは設定されているわけで、その仕組みが自治体にとって極めて好都合な仕組みかどうか、もっとこう改善した方がいいのではないかというようなことはあり得る。もう少し何でも言えるように対象を広げた方がいいのではないかという気がする
    • 松本小委員長
    • その世界に入れば枠組みが法令で決められてしまっていて、結局、義務付けられたと同じことになってしまう。入るか入らないかだけは自由だけれども、入っちゃうとこれに従えと。こういう仕組みになっているものは、今考えている制度の対象にするのか
    • 高部自治行政局長
    • まず、地方自治に影響を及ぼす法律、政令その他の事項と幅広に意見を提出できるというのが入って、分権一括法で一定の応答義務を入れた。応答義務を入れたときに、特に回答するものとすると入れたものについては、事務又は負担を義務付けると認められる国の施策と書いてあり、この辺が具体的に検討するときに足がかりになるのではないか。これをどう置き直そうかというところで、当面、法律・政令等というふうに書かせていただいたというのが検討の経過
    • 小早川副会長
    • 事務負担を義務付けるという表現もそうだが、何となく全体が防御的な色合いで書かれていて、国の方からめちゃくちゃな要求をされるので、それに対して自治体の側に防衛手段を持たせようという感じ。そこをもうちょっと、基本的な発想の仕方を考え直した方がいいのかなという気が
    • 今まで国の行政機関が立法に携わってくるのがいいというのであったのであれば、自治体が国の立法に携わるのが、機能的にもよい立法をつくる上でもこれは重要なことになるのではないかと思うので(、そこは、あんまり両者の融合関係をまた復活させるということになるのは、これは大変危険で注意する必要がありますけれども、ただ)、国の立法への自治体の関与というのは、そういう基本的な発想が一つあっていいんじゃないか
    • 何も防御的にひどい目に遭うときにだけ、自衛策を手段を持てというのではなくて、もっと広めに関与、参与というものを認めるべきではないかという気がする。全体の書き方の問題と、具体的な提案の仕組み方の両方にわたってということ
    • 長谷部委員(長谷部恭男東京大学教授)
    • 地方の連合組織にいろいろご意見を聴く、それから協議をするというのは大変よろしいこと。なるべく事前の段階でお話し合いになるというのは結構なこと
    • (ただし)これが例えば連合組織の同意がないと法案が出せないなどということになると、要するに、これは法案に関する必要的な共同提案権者だという位置付けにしてしまうと、やはり憲法41条や憲法72条との関係をもう少し一生懸命整理しないといけない話になる。つまり法案提出権というのは、立法権の一要素だというふうに従来は考えられてきており、立法権の一要素だというふうに考えないとすると、国会議員から法案提出権を全部とっちゃってもいいということになりかねない。
    • 地方の問題について、地方公共団体が国会の立法活動を指導していくのが当然なのかどうかということも考えた上での話に多分なっていくのかなという気がしている