【おべんきょ情トラ】身につくロースクール/商法3/商法509条の合理性と限定解釈の是非

■あくまで個人的なまとめを掲げています*1


 民法においては、隔地者間の契約は承諾の通知を発した時(申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時)に成立する(民法526条)が、商法においては、商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なくその諾否の通知を発しなければならず、それを怠れば申込みを承諾したものとみなす旨が定められている(商法509条)。これは、商人ならば容易に諾否の通知を発することができるはずであり、申込み者も迅速な回答を期待できるはずであるとの商取引の迅速主義や、平常取引に基づく契約締結への期待可能性の高さといった相手方の信頼保護などに配慮した規定とされる。


 この「営業の部類に属する契約」をどのように解するかについて、通説は、法の規定上当然のこととして、当該商人の基本的商行為に属する契約にのみ限られるとする。しかし、特に組織的商行為においては、その非個性化がすすみ、定型的・技術的な取引がなされているところであり、当該商人の基本的商行為に属する契約だからといって、取引の迅速な成立や相手方保護の必要性がさほど認められない場合がありうる。
 以上のように考えた場合、商人が営業上集団的反復的に行う契約であって、その商人が容易に諾否の通知を発することができ、かつ、申込み者も迅速な回答を期待しており、そして、平常取引に基づいて承諾を当然に期待するようなときに限って、商法509条を適用するべきと解することもできよう。

*1:このまとめは、【情トラ】が作成したものであり、その内容については無保証ですので、ご注意ください