【おべんきょ情トラ】身につくロースクール/商法5/債務者の破産と商事留置権の効力

■あくまで個人的なまとめを掲げています*1


 債務者が破産した場合、民法上の民事留置権は失効するが、商法上の商事留置権は特別の先取特権とみなされる(破産法66条1項及び3項)。商取引が継続的関係であることを前提にして、日々変動する商品に担保物権を設定・変更する煩雑さを回避し、信用取引の円滑さ、迅速性及び安全性を確保するという商事留置権の趣旨を貫徹させるものと考えられる。
 ただし、このように商事留置権が特別の先取特権とみなされることにより、当該商事留置権の留置的効力が債務者の破産後も存続するのか、または、消滅するのかについて明らかではない。このことについて、判例は、破産宣告によって留置的効力が消滅する旨の明文の規定がないし、また、留置的効力の消滅によって特別の先取特権の実行が困難となりかねないという理由で、留置的効力は債務者の破産後もなお存続すると解している。
 しかし、たとえ留置的効力が存続したとしても、破産管財人は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定により、別除権の目的である財産の換価をすることができ、この場合、別除権者は、それを拒むことができない(破産法184条2項)し、留置権者が法律に定められた実行方法によらないで目的財産の処分をする権利を有しなければ、破産手続外で自らの債権の弁済に充当することはできないといった制約があるということができる。

*1:このまとめは、【情トラ】が作成したものであり、その内容については無保証ですので、ご注意ください