(解釈)医師の守秘義務と生活保護法の関係

 以下は、「自治体法務Wiki - (解釈)医師の守秘義務と生活保護法の関係」に関して個人的に疑問に思っていたことなのですが、実際の現場の状況がわからないこともあり、公開していなかったモノ。今回、厚生労働省が当該ガイドラインパブリックコメントを実施していることにより、その疑問が(ある程度)解消したので、私の理解不足があることを大前提にしたうえで、up してみます。

  • 疑問であったこと

 「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(平成16年12月24日 厚生労働省 作成)」との関係は、どのように考えることができるのか。
 cf. 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(PDF)


 個人情報保護法及びガイドラインは、個人情報の目的外利用や個人データの第三者提供の場合には、原則として本人の同意を得ることを求めている。
 このことから、まずは、保護の実施機関が市町村である場合の病状調査への回答につき、本人の同意を得るか、個人情報の利用範囲内に含むことを明らかにしておき、患者側から特段明確な反対・留保の意思表示がない場合には、これらの範囲内での個人情報の利用について同意が得られているものとするように(、生活保護法第50条第2項に基づき、都道府県が指導することで)、個々の医療機関が対応していくべきではないか。こうした対応こそが、生活保護法第50条第1項にいう「懇切丁寧に被保護者の医療を担当しなければならない」ことにも合致するはずである。


 しかし、やはり本人の同意が得られないこともあるだろう。そのような場合における「生活保護法の医療扶助として医療を給付する指定医療機関が保護の実施機関の病状調査に応じる法的義務の根拠」を考えたときに、生活保護法第50条及び指定医療機関医療担当規程第6条の規定があげられる(のかもしれない。)。
 ところが、同規程第6条においては、「生活保護法による保護につき、必要な証明書又は意見書等の交付を求められたときは、無償でこれを交付しなければならない」とある。具体的には、「証明書」とは患者が求めるものを想定しており、「意見書」は保護の実施機関が求めるものを想定していると考えられるが、果たして、この「意見書(等)」とは、どのような内容を指し示すのか明らかではない(ような感じがしなくもない。)。
 また、ガイドライン別表3「医療・介護関連事業者の通常の業務で想定される主な事例(法令に基づく場合)」に掲げられた事例と比較してみた場合、法及び規程において、具体的な定めがなされていないことは、特に「利用目的以外の目的で個人情報を取り扱う」根拠として十分と言いうるのだろうか。
【参考として】

利用目的の制限の例外に該当する「法令に基づく場合」等であっても、利用目的以外の目的で個人情報を取り扱う場合は、当該法令等の趣旨をふまえ、その取り扱う範囲を真に必要な範囲に限定することが求められる。
ガイドライン p.11

●別表3(医療・介護関係事業者の通常の業務で想定される主な事例(法令に基づく場合))に以下を追加する。
・指定医療機関による都道府県・市町村への被保護者に係る病状報告(生活保護法第50条、指定医療機関医療担当規程第6条、第9条)

 このように具体的な内容を示したガイドラインへの追加によって、「利用目的の制限の例外に該当する『法令に基づく場合』等であっても、利用目的以外の目的で個人情報を取り扱う場合は、当該法令等の趣旨をふまえ、その取り扱う範囲を真に必要な範囲に限定」したと考えることができる(ような気がしなくもない。)。
 cf. 「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドラインの一部改正(案)」に対する意見募集