法学会春季学術講演会

 次の講演を聴いてきました。

  • 「ドイツにおける立法過程の特質と連邦制」 京都大学法学部教授 服部高宏 氏

 この講演は,「ドイツの立法過程に特有の動態とその問題点を,とくに連邦制との関係で明らかにする」との目的で,個人的に,前々から調べておきたいと思っていたコトなどを,かなりの程度,詳細に把握することができ,非常に有意義な内容でした。
 ドイツでは,「独自の国家権力と独自の憲法をもつ16の州」から構成される「(協調的)連邦主義」が採用されており,日本の在り方とは,大きく異なるワケなのですが,特に,日本における道州制論議等を視野にいれると,州と連邦との関係などについて,参考になりうるだろうと睨んでいたコトもあり,「フンフンなるほどなるほど」といった感じで,メモしまくり。コレをキッカケに少しでもアンテナを高くしておきたいと考えているトコロなのであります(あと,できれば,フランスの大都市圏制度の事例なども,いつかどこかで。松本英昭 氏 曰く,「参考になる」とのことでもありましたから。)。


 なお,この講演において最も関心を覚えたことは,基本法72条2項及び3項の規定について。これらは「連邦法律と州法律の立法権限に関する規定」であり,日本でいうと「法律と条例の立法権限に関する規定」とでもいうもの。

72条2項

 連邦は,この(競合的立法(連邦が法律によってその立法権限を行使していない間,及びその限度において,州が権限を有する立法)の)領域において,連邦領域での均一な生活関係を創り出し,又は,国家全体の利益のための法的若しくは経済的統一を維持するために,連邦法律による規律を必要とするときは,立法権を有する。

72条3項

 連邦法律上の規律について第2項にいう必要性がもはや存在しないときは,州法によってこれを代えることができる旨を,連邦法律によって規定することができる。

 そして,この72条2項の規定に関する初めての憲法判断が次のようなものであったとのこと。

 連邦に立法権限があると言うためには,72条2項にある「均一な生活関係の創出」や「法的又は経済的統一の保持」のために是非とも必要だというだけでは不十分であり,次の3つの場合でなければならない。すなわち,(1)連邦国家の社会構造を損なうような仕方で,州それぞれの生活関係が違った方法に発展し,又はそうした具体的展開が見られるとき,(2)多様な州立法が,連邦及び州の利益のために受け入れられないような法の分裂の様相を示すとき,(3)ドイツ連邦共和国の経済領域の機能の維持が問題になっているとき,である。

 以上に関連して,日本における「法令と条例の関係」に係る議論については,次のエントリなども参考になるかと。
【情トラ】附゛録゛ - 法令の上書き条例について