有料道路におけるキセル行為

 別に,何というコトでもないのですが,ふと思ったこと*1をメモ。

(事実関係)
 被告人は,AインターからDインターまで有料道路を通行し,Dインターを出る際,Aインターから通行してきたことを秘し,あたかもDインター近くのCインターから通行してきたようにDインター料金所係員甲を欺き,あらかじめ所持していたCインターからの通行券を,CDインター間の通行料金とともに差し出して,AD間の通行料金とCD間の通行料金の差額相当額の料金の支払を免れた。
※福井地判昭和56年8月31日

 本判決では,まず被告人による使用済みによる無効の「入口C」の通行券をDインター料金所係員甲に提示した行為を,正常な通過者を装うためになした作為の欺罔行為としている。
 問題は甲に詐欺利得罪の成立に必要な処分行為があったとみることができるかである。甲は欺罔されてAC間の通行料金は請求することはできなかったが,CD間の通行料金は請求しその支払を受けている。本判決はこの料金徴収員の通行料金の過少請求行為をとらえて財産的処分行為にあたるとしたが,甲は被告人が事実上支払を免れたAC間の通行料金債権については認識がないのであるから,その部分についてはやはり処分意思がないものといわなければならない。
※『判例刑法研究 (6)』pp.234-236

 この事案において,上記解説では,Dインター料金所係員甲が「CD間の通行料金は請求しその支払を受けている」とあるが,Dインター料金所係員甲は「CD間の通行料金を請求したところ,CD間の通行料金の支払を受けたのではなく,Aから当該料金相当分の通行距離に係る料金の支払を受けた」のではないか。
 具体的に考えると,A→B→C→Dとインターがあるとして,通行料金がそれぞれ,AB間2,000円,AD間8,000円,CD間2,000円という場合,Dインター料金所係員甲は「CD間の通行料金2,000円を請求したところ,CD間の通行料金の支払を受けたのではなく,AB間の通行料金2,000円の支払を受けた」のではないか。
 よって,Dインター料金所係員甲は,結局のところ,被告人に欺罔されて錯誤におとし入れられ,CD間の通行料金を請求したのに,その支払を受けていないまま,その瑕疵ある意思にもとづいて財産的処分行為(Dインター料金所を通過させた行為)を行い,被告人が財産上の利益(CD間の通行料金を支払わなかったこと)を取得したといえるのではないか。

*1:個人的には,こんなことアンマリこだわるようなことではないと思っているようなこと。