議会基本条例について/議会への附属機関の設置に関連して

 先般,制定され,公布・施行された「三重県議会基本条例」においては,「議会が,条例で定めるところにより,附属機関を設置することができる」との規定がある。

 (附属機関の設置)
第十二条 議会は、議会活動に関し、審査、諮問又は調査のため必要があると認めるときは、別に条例で定めるところにより、附属機関を設置することができる。
http://www.pref.mie.jp/GIKAIS/kengi/honkaigi/gitei-gian/gian-list/gikaikihonnjyourei.htm

 この規定については,そもそも「議会に,附属機関を設置すること」に関し,地方自治法第138条の4第3項は「執行機関に附属機関を置くことができる」と定めているだけで,議会に関して何ら定めていないことから,果たして認められるか否かが問題となる。
 このことにつき,従来からの通説は,同項を反対解釈するものとされ,議会には附属機関を設置することができないと解している。しかし,三重県議会においては,「地方自治法は議会の附属機関を予定していないが,これを当然には否定していないように読める」との解釈を根拠に,本件条例に附属機関を設置できる旨の上記規定を設けているところである。
【参考として】議会基本条例という名の約束/http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000200701040003


 このいずれの解釈が妥当であるかに関して,個人的には,憲法上,議会が「議事機関」と位置づけられていることからすると,附属機関を設置して何かしらの議論又は意思決定に関する権限等を当該機関に委ねてしまうようなことは,議会が住民の多様な意思を反映させ意思決定を主体的に行うという本質的な権限を自ら手放すことと同義であり,自らの重要な役割を放棄したとして問題があるといえないか,などと考えている。
 そして,こうした疑義から,議会への附属機関の設置については,次のようなことが問題となりうるのではないか。すなわち,議会に附属機関を設置したとしても,同機関を組織する委員その他の構成員は非常勤の職員となり(地方自治法202条の3第2項),給与条例等に基づき報酬等が支払われることになるはずであるが,これらの報酬等が違法な公金の支出にならないかということである。
 具体的には,そもそも議会に附属機関を設置することが通説どおり認められないと判断される場合,同機関を組織する委員その他の構成員は,非常勤の職員であるとは根拠づけられないことになる。よって,単なる報償費等として支出する必要があるか,または,費用弁償が認められないなどと考えられないかということである。
 もっとも,議会自らがその役割・機能を向上・充実させようという取組みについては,できる限り,肯定的にとらえたいと思うところでもある*1
【参考として】議会基本条例という名の約束/http://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000200701100003


 なお,三重県議会などに続き,他の自治体の議会も同様の取組みを始めるのかということにも強い関心がある。そして,そうした取組みを始めるとして,各議会がどのような条例を制定することになるのかについても。
 それぞれの議会が,その規模や社会環境,アクターの意向・選好,住民参画の動向等に応じて,模索し,決定していかなければならないことになるのだろう。しかし,その際に,各議会は,栗山町議会・三重県議会・伊賀市議会などの条例等を参照しながら,さらには相互に競争しながら,条例等を制定し,運用していくことが考えられよう。

*1:上記の個人的な考えについては,その旨を意見提出しておけばよかったかもしれません。多忙だったこともあり,きちんとまとめて提出することを怠ってました。。