資源ゴミ等に係る条例等に関するいくつかのメモ

 先般,掲げておいたゴミの所有権を自治体に帰属させる方法の案について,id:kei-zu さんから言及いただきやした。

 ゴミの所有権を自治体に帰属させる方法については,たとえば,指定ゴミ袋を利用することによって,当該指定ゴミ袋に「この指定ゴミ袋の使用者と市は,その使用条件(ex.分別等に関する条件)を遵守して,指定収集所に出した廃棄物については,市の所有物とする旨を合意する」といった,いわゆる約款(らしきもの)を示しておくという案は,,,どうかなぁー。
いくつかの法務関連記事に対する私的メモ - 【情トラ】附゛録゛ から一部を抜粋

 自治体はそこまでやらんでしょう、ということです。
 自治体が排出された資源ゴミを自らの管理下あることを明白にした場合において、はたして自治体がどこまで責任をとれるのか(という問題がありますから。)
資源ゴミに係る公有権 - 自治体法務の備忘録(Old) から一部を抜粋。ただし,括弧内は引用者による。

 そもそも廃棄物の所有権を自治体に帰属させ,その持ち去りを禁止するという構成の条例を制定すること自体が,「自治体がそこまでやっている」事例ではないかと思ったので,ならば,そうした構成の条例を制定する際には,その所有権を帰属させる法的構成を明確にしておく必要があるだろうということから,考えてみた案ですね,約款構成は。資源ゴミの種類等によっては,自治体の歳入につながるものもあるかもしれませんし。
 とはいえ,浅慮に過ぎませんので,その旨ご留意くださいませ,です。


 あと,世田谷区清掃・リサイクル条例違反事件に関し,少々詳しめの内容の記事が掲載されていたのでメモ。

・無罪言渡し事件
 ごみ集積場から古新聞などを持ち去ったとして、東京都世田谷区の清掃・リサイクル条例違反に問われた古紙回収業の男計5人に対する5件の判決が26日、東京簡裁であり、いずれも無罪が言い渡された。条例は「所定の場所」に置かれたごみの持ち去りを禁じているが、判決は弁護側の主張をほぼ認め、「どこが所定の場所かあいまい」などと指摘した。
 検察側は、いずれも条例の罰則の最高額の罰金20万円を求刑していた。3人に対しては、堀内信明裁判官が、2人には松本弘裁判官が言い渡し、松本裁判官は「不明確な規定で処罰するのは憲法に違反する」と条例は「違憲」との異例の見解を示した。
 5人は04年8月〜05年2月にかけて古紙を持ち去ったとして05年に起訴された。堀内裁判官は「廃棄物処理法にも無断持ち去りについて罰則を伴う禁止規定がないのに、自治体が罰則を条例で制定したのは裁量権の逸脱に当たる」とも述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070326-00000135-mai-soci から一部を抜粋

・無罪言渡し事件
 古紙価格の急騰を受け、平成12年ごろから、業者が集積場所から古紙を勝手に持っていく行為が全国的に横行。15年12月から条例にごみ持ち去りに対する罰則規定を盛り込んだ世田谷区に続いて、大津や岡山、さいたま市などが同様の条例を制定しており、今回の判決はこれら自治体の対策にも影響を与えそうだ
 同条例では「一般廃棄物計画で定める所定の場所からの古紙などの収集を禁じる」と規定しているが、判決で松本裁判官は「所定の場所に関して一般人が分かる基準が明確に示されておらず、法規の内容を明確にし、公平に処罰するために必要な事前の『公平な告知』を定めた憲法31条に反する」と述べた。
(中略)
 業者側は「区の回収は膨大なコストが掛かるうえ、業者が一方的に回収から排除されており不合理。これからは泥棒扱いされず、胸を張って仕事ができる」と話す。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/44924/ から一部を抜粋

 このうち「どこが所定の場所かあいまい」との指摘については,確かに,世田谷区清掃・リサイクル条例第31条の2第1項には,「一般廃棄物処理計画で定める所定の場所に置かれた廃棄物のうち、古紙、ガラスびん、缶等再利用の対象となる物として区長が指定するものについては、区長及び区長が指定する者以外の者は、これらを収集し、又は運搬してはならない」とありますが,その一般廃棄物処理計画(cf.http://www.city.setagaya.tokyo.jp/030/d00005134.html)を読む限り,59,60頁に「集積所回収」と記載されているだけのようですので(見落とし等があるかもしれません。),「あいまい」と指摘されて仕方がないような気がしなくもない。
【追記(その2)】
 上記リンク先に掲げられているものは「世田谷区一般廃棄物処理基本計画」であって,「計画は、区役所区政情報センター、各総合支所区政情報コーナーで有料で(400円)頒布」とあるので,この「計画」において集積所につき,ある程度,定めているのかもしれません,ということを,やっぱり見落としていました。
【追記(その2)は,ここまで】

 ならば,どう「あいまい」ではないように定めるかですけど,「所定の場所に関して一般人が分かる基準」を「明確に示」すことは,難問かも。「基準」ではなく「特定」として,一々告示で対応する案や,その場に区の集積所である旨の掲出を行い特定する案,場所ではなく,区に収集してもらう古紙そのものを特定すべく,マジックで「世田谷」などと書いてもらうといった案などが思い浮かびはしましたが,いずれも果たして可能か,それで足りるかといった問題もあるような。(これまた)浅慮に過ぎませんので,あしからず。
【追記(その4)】

・有罪言渡し事件
 東京都世田谷区のごみ集積所から無断で古紙を持ち去ったとして同区清掃・リサイクル条例違反の罪に問われた回収業者3人に対し、東京簡裁の桜井広美裁判官は27日、いずれも罰金15万円(求刑罰金20万円)の判決を言い渡した。26日には同簡裁判決で別の裁判官2人が業者計5人を無罪としており、集積所が犯罪の構成要件となる犯行場所として特定できるかどうかについて、正反対の判断が下された。
(中略)
 桜井裁判官は判決で、集積所について「資源ゴミ回収のコンテナもそばにあり、通常の判断能力があれば認識できる」と指摘し、起訴事実通りの犯行場所を認定した。また、条例はごみを安定的にリサイクルするために制定され、罰則はその目的にかなうとした。
 これに対し、26日に無罪とした裁判官2人は、区内に約5万カ所ある集積所では、看板設置を嫌がる周辺住民も多く、周辺以外は業者だけでなく一般区民も位置の把握が困難と指摘。犯行場所を明確に示せないような罰則を設けることは許されないとしていた。
http://www.asahi.com/national/update/0327/TKY200703270436.html から一部を抜粋

 「5万箇所」,「看板設置を嫌がる周辺住民も多」い,とのこと。
【追記(その4)は,ここまで】

 なお,「廃棄物処理法にも無断持ち去りについて罰則を伴う禁止規定がないのに、自治体が罰則を条例で制定したのは裁量権の逸脱に当たる」のでしょうか。これについては,とりあえずコメントなしということで。東京地検次席検事の話によると,「検察の主張が理解されず、遺憾である。控訴の方向で検討したい」とのことですから,今後についても注目。
【追記(その1)】
違憲・違法 - 初心忘るべからず
 id:tihoujiti さんも,この判決について言及されておられた模様。

【追記(その3)】

・有罪言渡し事件
 東京都世田谷区のごみ集積場から古新聞などを持ち去ったとして区清掃・リサイクル条例違反に問われた古紙回収業者3人に対し、東京簡裁は27日、いずれも罰金15万円(求刑・いずれも罰金20万円)の判決を言い渡した。
(中略)
 判決で桜井広美裁判官は「地図で表示された集積場の位置と実際の場所にずれはあるものの、地図表示と現地の看板を合わせて見ると、そこ(実際の場所)が集積場であることは強く推認でき、集積場の特定が不明確とは言えない」と認定。「業者は集積場と認識しながら犯行に及んだことは明らか。何度も警告を受けていたが、条例に納得出来ないとの理由で犯行に及び、起訴後も持ち去りを継続しており、責任を軽視できない」と指摘した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070327-00000091-mai-soci から一部を抜粋

 まー,簡裁判決であって,いわゆる判例ではないということで。
 ところで,世田谷区長のお話では,「資源の持ち去りには区民から取り締まりの強い要望があり、引き続き適正に対処したい」とのことですが,具体的には,どのような内容の要望なのか。資源を持ち去る(いわば盗んでいくように思える(?))ことに対する取り締まりの要望か,それとも,ゴミが散乱することに対する要望か,はたまた,それらとは異なる内容か。少しばかり興味があります。

【追記(その5)】