規制権限の不行使の違法について

 規制権限の不行使に係る国賠法上の違法につき,判例がいうところの枠組みは,次のとおりとされる。
 「国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である」(最判平成平成元年11月24日「宅建業事件」,最判平成7年6月23日「クロロキン事件」)
 もっとも,この枠組みが妥当するのは,当該規制権限を定めた規定が,「〜することができる」旨の定めである場合であって,「〜しなければならない」旨の定めである場合には,当該枠組みと原則例外が逆転すると考えられる(のではないか)。すなわち,「〜しなければならない」旨の定めに基づく「規制権限の不行使」については,原則として,「その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となる」と解され,具体的事情の下において,特別の事情等が認められれば,例外として,違法とはならないと解されるものと考えられる(のではないか)。