Re:行政庁間のパブリック・コメントの運用

行政庁間のパブリック・コメントの運用 - 自治体法務の備忘録(Old)
 id:kei-zu さんご指摘の点について。
>より一層活用すること
とだけ記載したので,わかりにくかったと思われます。というわけで,以下,ささやかな補足。


 基本的には,id:kei-zu さんが次のように記されているうち,後者(のようなもの)を想定しています(特に,単なる「情報提供」にとどまらず,利害関係をもつ主体間で「利害調整」等を行うのであれば,なおさら。)。
>「提示された制度の修正」にとどまる対処よりも、場合によれば総合設計にも関わるような「自治体間の垂直的な関与・参加、水平的な連携・協力的な関係」


 しかし,そのうえで,あえて次のように記しています。
>何もこのような手続を新たに創出しなくとも
 これは,自治体間において新たな手続を創出するとなると,住民からみたとき,住民にとって可視化されていない,行政の内部的な手続としか評価し得ないものになる可能性が高いのではないか,と考えたがためです。
 より具体的にいえば,個人的にパブリックコメント制度を評価する一面として,同制度によって,「条例等の制定改廃等に関する素案及び検討資料が示され,当該素案に対する意見や情報,それらに対する行政の考え方等が公表されること」,そして,こうした「情報の蓄積が,各自治体ごとの政策情報アーカイブになりうること」を挙げているのですが,果たして「新たに創出する手続」にも,そのような「住民に対する情報公開ないし情報アーカイブ化」が期待できるかといえば,あくまで「自治体」と「自治体」との間における手続・制度でしかないものとなってしまうのではないか,と考えたからということができます。
 このことは,
>「(パブリック・コメント手続の)案が出来る前にちょっと関わらせろや」
といったときにも,同じようなことが言え,住民側からすると,どのように関与したのか・されたのかについても,知ることができればありがたいにも関わらず,知ることができない情報となってしまうのではないか,と考えられなくもありません。そもそも,こうした「住民に対する情報公開ないし情報アーカイブ化」を求める考えは,たとえば「率直な意見交換ができなくなる」といった観点から,回避される可能性が高いのも確かではないか,と思われますし。
 そこで,既にある制度・手続である「パブリックコメント制度をより一層活用すること」を提案することによって,ある意味,「省略化もはかれますよー」という説明をしながらも,その真に意図するところは「住民に対する情報公開ないし情報アーカイブ化がなされることを,(それほど行政側に意識させることなく自然なかたちで)組み込んでしまおう」という想いがなかったとはいえなさそうですということをネタばらし。


 なお,以上のような考えからすると,例の「総務省経産省」問題についても,
>政令(の閣議決定)だったら各省協議で反対できるでしょうに

    • 【追記】 この部分は,続・航海日誌 2007年7月17日(火)分エントリからの引用ですが,よく読むと,「各省協議の場で,今回の件に関する反対意見を表明する」という意味ではなく,「電波利用料額の改定について,政令の改正で対応できる制度」に変更したときに,総務省が半ば自由に値上げしようとしても,「各省協議で反対できるでしょうに」という意味である模様。ちょっと意味を取り違えていました,スミマセン

といえども,「各省協議で反対するよりも,パブリックコメント手続を活用することにより,その『関わり』が公開・蓄積化されるがゆえに,国民・住民に,より有意義な情報が提供されることになり,さらなる情報の循環が生まれるのではないか」と期待している次第でありやす。

*1:なお,このエントリには,いわゆる「訴えの利益」に関する言及を忘れていましたので,その旨を追記しています