パブリックコメント・カレンダー070911

消費者契約法の評価
 消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみて法が制定されたことを目的に関する規定(第1条)の中で正面から規定し、消費者と事業者との間で締結される消費者契約一般を適用対象としたこと(第2条)については、意義があったものと認められる。特に不当条項に関する規定については、第9条第1号や第10条に関して最高裁判決を含め多数の裁判例が集積しており、消費者の利益擁護に大きな効果を発揮している。また、不当勧誘に関する規定についても、下級審レベルではいくつかの裁判例が集積している。
 本法が適用対象とする消費者契約に係る紛争は、比較的少額なものが多いと考えられることから、裁判外の紛争解決手段の一つである消費生活相談の場でも本法が積極的に活用されることが望ましい。実際、消費生活相談の場においては、本法の理解が進むことにより苦情相談や紛争解決に活用されてきている。また、裁判例が集積することで紛争解決基準が明確化されることによっても、消費生活相談の場において本法が活用されることに繋がっている。
 また、第3条第1項において情報提供に関する事業者の努力義務を規定していることについては、前述のとおり、裁判例の中に、取引上の信義則を根拠として事業者の損害賠償義務を認めるに当たって、その規定に触れているものがあるなど、一定の機能を果たしているものと考えられる。
 その一方で、不当条項に関する規定について多数の裁判例が集積しているといっても、いわゆる学納金返還請求訴訟や敷金返還請求訴訟等、一定の契約類型に集中している傾向も看取されるところであり、契約条項の不当性の判断には高度の専門的知識を必要とすることや、個人の被る損害が比較的少額であること等の事情から、問題が顕在化していない契約類型についても、依然として不当条項が存在している可能性も否定できない。また、特に不当勧誘に関する規定の適用については、勧誘文言や勧誘態様等に関し消費者による立証の困難性という問題がある。さらに、本法では、不当な勧誘行為又は不当な契約条項を類型化して適用範囲の明確化が図られていることにより、消費生活相談の場を含めて活用しやすくされているとともに、事業者の予測可能性を確保することにも資するものであるが、逆に適用の柔軟性を欠き民法等の他の法令の解釈・適用に委ねざるを得ない場合があることも否定できないところである。
 なお、法の実効性を確保する観点からは制度の周知・普及が必要であるが、本法の周知・普及の程度は必ずしも高くないという調査結果もあることに留意する必要がある。