広島市暴走族追放条例案に関する広島市議会議事録

 「広島市暴走族追放条例の制定について」の議案に関する広島市議会の議事録(強調は,引用者の手による。)。

平成14年第1回2月定例会
平成14年第1回広島市議会定例会会議録(第5号)

広島市議会議事日程
平成14年3月1日 午前10時開議


秋葉忠利 市長
 ただいま上程されました第62号議案は,広島市暴走族追放条例の制定についての議案でございます。これは,暴走族の暴走行為,蝟集,集会等が市民に不安感,恐怖感を与え,市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず,国際平和文化都市の印象を著しく傷つけていることから,暴走族問題を早急に解決する必要があるため,暴走族の蝟集,集会等の規制を盛り込んだ条例を新たに制定するものでございます。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。


○平野博昭 議長
 これより質疑に入ります。
 発言通告者に順次発言を許します。44番皆川恵史議員。


〔44番皆川恵史議員登壇〕(拍手)
◆44番(皆川恵史議員)
 ただいま上程されました暴走族追放条例に対します日本共産党市会議員団の質疑を行います。
 暴走族をなくすことは,私たち市民共通の願いです。しかし,そのためなら何をやってもいいというわけにはいきません。事はこの広島の未来を担う青少年をどう育てるのか,また,憲法にうたわれた表現の自由を初めとする国民の基本的人権にかかわる重大な問題を含んでおります。それだけに,本条例の審議は慎重に行われなければなりません。
 この条例提案の背景について,広島市は,暴走族の行うさまざまな行為が市民生活や青少年の健全育成のみならず,平和都市広島の印象を著しく傷つけ,これ以上放置できないからつくったとおっしゃっております。
 そこで,まず最初に,広島市の青少年対策,暴走族対策に対する基本的な認識についてお尋ねしたいと思います。
 第1点に,いわゆる暴走族と言われる少年たちは,広島市内に何グループ,何人ぐらいいるのか,それはこの数年ふえているのか,減っているのか。また,年齢は何歳くらいの少年たちが多いのか,この点についてお答えください。
 第2に,なぜ広島はこんなに暴走族が多いのか。恐らくその大半は18歳未満の少年たちだと思いますが,教育委員会はその原因についてどのようにとらえておられますか。
 第3に,他県と違う広島の暴走族の特徴について,広島県警によりますと,背後に暴力団がいると,こういうことだと言っております。少年たちの暴走や蝟集を暴力団が支配してやらせている。ここに広島の暴走族の特徴があると言うのですが,それならば,暴力団との関係を断ち切るために,広島県警はこれまで何をされてきたのでしょうか。昨年1年間でこうした暴力団をどれぐらい検挙したのか教えていただきたいと思います。
 第4に,暴走族の少年たちは,18歳になると暴走族を卒業すると言われています。それならば,これから新たに暴走族に加入する少年をなくしていくことに全力を傾けることこそ根絶に向けてやるべきことだと思います。
 その点で,この条例の中には,そうした基本計画を今からつくるんだと,こういうことが書いてありますが,例えば,少年の居場所づくりのために,これまで広島市としてどう取り組んでこられたのかお答えいただきたいと思います。
 第5点,あどけない子供たちが,なぜ中学や高校に入って暴走族に入るのか,こうした少年たちの本当の気持ちを,行政としてこれまで聞いたことがあるんでしょうか。私は,何人かの若者たちに,この条例案についてどう思うか聞いてみました。返ってきた答えは,もちろん暴走族を肯定した意見はありませんでしたが,少年よ大志を抱けというけれども,今の社会には夢も希望も抱けない。暴走族に入る気持ちはわからないでもない。話も聞かずに追放というのは,やり過ぎではないか。追放されても暴走族がなくなるとは思わない。大人はすぐ若者を取り締まろうとする。もっと若者の声を聞いて,行政にも生かしてもらいたいというものがありました。
 中でも,私が一番ショックを受けたのは,学校でも家庭でも居場所がなくて,そして社会からも追放されたら,後は爆発するか自殺するしかないんじゃないの,若者をそこまで追い込む社会はなんだか悲しい,こういう若者の声でございました。
 確かに,この条例をつくれば一時的には彼等の蝟集や集会は,やりにくくなるかもしれません。しかし,そこから追い出された少年たちは一体どこに行くんでしょうか。今,大切なことは,大人の論理で考えるのではなく,こうした若者たちの声を聞くことではないでしょうか。
 さらに,非行に走った子供たちにかかわって日夜苦労されている先生方や地域の人々,付添人活動を通じて少年非行克服に携わっている弁護士,そして,多くの市民の声を聞くための公聴会も開いて,全市民的な討論を呼びかけることではないでしょうか。そういうお考えは広島市にないのかどうか,お答えいただきたい。
 第6に,秋葉市長が所信表明でおっしゃった人道都市を目指すという精神は,暴走族に走ったこれらの少年たちも含めて人間を大切にする都市をつくることだと私は思います。それなら,今なぜ追放条例なのか。その前に,こうした少年たちを救うために,そして,同じような少年たちを出さないためにも,もっとやるべきことがあるのではないかと思います。
 先日行われました青少年問題対策特別委員長報告でも,「次代を担う少年たちが,将来への夢や希望をはぐくみ,それに向かって歩んでいけるような社会をつくることは,我々大人の責任であります。少年の健全な育成を図り,市民にとって安全で快適な都市づくりを進めてゆくために,行政,家庭,地域が一体となり,粘り強く努力を積み重ねてゆくことが,この暴走族問題の解決にとっては肝要であると考えます。」と述べています。
 この点について,提案者としての市長の御見解をお伺いいたします。
 次に,提案された条例の中身についてお伺いします。
 第1点,まず,条例の名称をなぜ追放条例とされたのですか。暴走族をなくするのが目的なら,根絶条例とした方がよいと思います。また,市民の安全の確保が目的なら,姫路市のように安全安心条例とした方がよいのではありませんか。取り締まりの相手は暴力団ではなく少年たちです。追放というのは適切な表現ではないと思いますが,いかがでしょうか。
 第2点,この条例の他都市と違う特徴は,他都市の条例が,暴走行為そのものの取り締まりを目的としたものであるのに対して,この条例は,暴走族の蝟集または集会の取り締まりを目的とした点にあることは明白です。しかし,何人といえども,他人に不安や恐怖を覚えさせるようなという程度で蝟集や集会を行うことを禁ずることは,憲法第21条の集会,結社,表現の自由に抵触するおそれが多分にあります。この点をどう考えておられますか。
 第3,さらに問題となるのは,規制の対象が暴走族という特定の集団に限定されずに,一般市民にも拡大適用される危険性はないのか。以下,条文に沿って幾つかの疑問点がありますのでお答えください。
 1,第2条では,暴走族の定義として二つの集団が挙げられております。前半の,「暴走行為をすることを目的として結成された集団」という定義はだれにでもわかりますが,後半の,「公共の場所において,公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で,い集,集会若しくは示威行為を行う集団」を暴走族と定義しています。これは暴走族の蝟集・集会を念頭に置いたものと思いますけれども,不安や特異な服装などという表現は極めて主観的で,抽象的文言で,一歩間違えば大変な人権侵害になります。
 例えば,ある市民団体が団体名が記入されたゼッケンをつけて集まった場合,その服装が公衆に不安もしくは恐怖を覚えさせるような特異な服装だと認定されたら,暴走族とみなされることになりかねません。このようなあいまいな文言は,憲法第31条の罪刑法定主義に違反するのではありませんか。
 2,同様に第16条第1項第1号でも,「公共の場所において,当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会を行うこと」を何人もしてはならない禁止行為としていますが,例えば,本来,すべての市民に自由に開放されている公園において,善良な市民が許可をとらずに集まって談笑しても,それが公衆に不安や恐怖を覚えさせる行為と認定されたら,この第1号にある禁止行為となる可能性があります。
 3,さらに重大なことは,第17条では,今述べた市民たちが特異な服装をしていたり,円陣を組んだりしたら,それだけで第17条にあるように,市長の退去命令の対象になりかねません。人権にかかわることに対して,このようなあいまいな文言で刑罰を科すのは,憲法第31条の罪刑法定主義に違反するのではありませんか。
 4,この条例のもう一つの問題は,不安とか恐怖とか特異な服装とかいう極めて主観的な認定を,一体だれがするのかという点です。お尋ねしますが,第16条第1項第1号と第17条にある認定はだれが行うのでしょうか。
 5,また,第17条は服装について触れていますが,服装というのは,本来個人のファッションであり,それが特異かどうかは見る人の主観に左右される問題です。そこまで条例で規制できるのでしょうか。顔面を覆うというのもあいまいな表現で,マフラーやサングラスやマスクで顔面を覆っても対象になるのかということが問題になります。円陣や旗を立てるというのも,市民の政治活動では日常的に行われていることです。こうした行為をすべて許可なく行ったら退去命令の対象になりかねないと思うのですが,いかがですか。
 6,最後に,罰則規定について,第19条では,第17条の市長の退去命令に違反した者は,6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処するとして刑罰を科しています。そうすると,仮に暴走族に加わっている15歳の少年が,この条例違反で逮捕された場合,6カ月以下の懲役という刑罰が下され,前科がつくということになるのでしょうか。
 少年法では,罪を犯した少年は,保護と教育を与えるという原則のもとに家庭裁判所に送致されます。改正された少年法でも,16歳以上の少年で殺人罪などの重犯罪を犯した場合に限り,地方裁判所に送られ,刑罰を科することができるとされています。つまり,20歳未満の少年はすべて少年法で裁かれます。改正少年法からいっても,少年たちに,この第19条にある刑罰を科することは,まずできないと思います。とするならば,本条例が予想している懲役刑を科す事案とは具体的にはどのような場合を想定しているのでしょうか。これは大人が蝟集し,または集会を行い,市長による中止または退去命令違反を問題にしようとしているのでしょうか,お答えいただきたいと思います。
 以上の点について,明確な答弁を求めて質疑を終わります。


○平野博昭 議長
 市民局長。


◎三宅吉彦 市民局長
 御質問のうち,本条例案自体についての項目につきまして,私の方から御答弁申し上げます。
 まず,暴走族をなくすための条例なら,名称は暴走族根絶の方がよいのではないかという御提案がございました。
 暴走族をなくすための条例に関しましては,最近の傾向として,追放という言葉が用いられてきております。例えば,愛媛県,千葉県などもそうであります。特に本市をカバーする県の条例におきましても追放という言葉が用いられております。こうしたことから暴走族追放条例といたしたものでございます。
 議員御指摘のとおり,なくすという意味では根絶の方が適当かもしれませんが,追放を追い払うという意味で用いないため,条例上は,暴走族追放という用語を定義いたしております。
 次に,憲法第21条との関係の御質問がございました。
 集会の自由は民主主義社会における重要な基本的人権の一つでありますが,その対応によっては,他者の権利と矛盾,衝突する可能性があり,それを調整するために最少限度の規制を受けることはやむを得ないものであります。したがって,例えば公園や広場においては,他の利用者等との調整を図るため,公園条例などでは,集会のために公園,広場の全部または一部を独占して利用する場合,許可を必要としています。本条例の,公共の場所における禁止行為は,許可を得ていない違法な行為をいうものであり,集会そのものを規制しようというものではないので,集会の自由には抵触しないと考えております。
 次に,一般市民にも拡大適用されないかということで,特異な服装や集団,市民団体のゼッケン,あるいは,行為の禁止が何人もというふうに規定されているがということ,それから,第17条に関して,特異な服装で円陣を組んだら退去命令の対象となるかということにつきましてお答えいたします。
 暴走族の定義としては,いわゆる暴走族とチーマーの外観や行為を列挙し,それらに特色づけられる集団を本条例上の暴走族といたしております。不安もしくは恐怖を覚えさせる特異な服装は,確かに人によって感じ方は違うという面がありますが,それでも,およそこう思うという社会通念がございますので,ゼッケンをつけて集まった市民団体を暴走族とみなすことはあり得ないと考えております。
 また,刑罰の対象となる行為は,第17条で,市長の中止命令または退去命令に従わない行為であると明確に規定しており,その命令の前提についても,特異な服装をし,顔面の全部もしくは一部を覆い隠し,円陣を組み,または旗を立てる等,具体的・選択的に示して威勢を示すことと規定しており,明確な犯罪構成要件を備えていることから,罪刑法定主義には違反いたしません。
 なお,この表現につきましては,罰則の規定に基づき,被疑者の検挙を行う広島県警,犯罪を立証し起訴する立場である広島地方検察庁とも協議したものでございます。
 行為の禁止の何人もにつきましては,暴走族の定義や罰則規定の関係など技術的な問題から何人もと書かざるを得なかったものでございます。何人もといたしておりますため,禁止行為は暴走族以外にも及びますが,罰則の前提となる市長の中止または退去命令は,この条例の目的が第1条に定めてあり,それは各条文を解釈する際に一般条項として制限的に働きますので,特異な服装や顔面の全部もしくは一部を覆い隠す等の例示に該当するからといって,善良な市民の集団に対し命令することはありません。また,条例の適用に当たっても,そうした逸脱がないよう心がけてまいります。
 第17条の,市長の中止または退去命令は,所有者または管理者の許可または承諾を得ないで公衆に不安または恐怖を覚えさせるような蝟集・集会であって,特異な服装をし,顔面の全部もしくは一部を覆い隠し,円陣を組みまたは旗を立てる等,威勢を示すことにより行われたときにできるとしており,威勢を示すことにより行われたものでなければ市長は命令できません。
 次に,第16条第1項第1号と第17条にある認定はだれが行うかという御質問です。
 第16条第1項第1号の禁止行為に該当し,第17条の中止または退去を命ずるに当たりましては,市長の名義において適法に行うことが必要です。したがって,行為の認定は,状況に応じ所定の職務権限に従い権限者が行うことになります。
 次は,特異な服装や顔面を覆うが第17条の中止命令等の退去命令の対象となるのかと,服装は主観の問題である,それから,円陣を組み旗を立てた市民活動も退去命令の対象となるかといった御質問がございました。
 不安もしくは恐怖を覚えさせる特異な服装は,確かに人によって感じ方が違うという面もありますが,それでも,およそこう思うという社会通念がございますので,条例での規制は可能であると考えています。
 本条例で罰則の対象となる行為は,端的に第17条の中止命令または退去命令に従わない行為であり,極めて明確でございます。また,その前提となる命令をどのような場合に出すかについても,特異な服装をし,顔面の全部もしくは一部を覆い隠し,円陣を組みまたは旗を立てる等と威勢を示すことについて具体的な例示を行っておりまして,明確でありますため拡大解釈される余地はないと考えております。
 それから,少年法との関係の御指摘がございました。
 少年が中止命令等に従わず検挙された場合には,少年法に基づき,通常は家庭裁判所で審判が行われ,少年院送致等の保護処分等により更正が図られます。これらの措置は,罰則規定を設けたことにより可能となるものでございます。
 また,家庭裁判所の調査により,刑事処分が相当と認められた場合は,検察官に送致され,起訴,刑事裁判となり,大人と同じように罰則の適用があります。
 さらに,暴走族問題については,暴走族の背後にいるいわゆる面倒見への対策が課題となっておりますが,本条例に罰則をつけたことにより中止命令,退去命令に従わないように指示,命令する面倒見も刑法第61条の教唆犯に当たるとして,本条例の罰則を適用できることが非常に大きなポイントと考えております。
 以上でございます。


○平野博昭 議長
 教育長。


◎松浦洋二 教育長
 暴走族に関する数点の御質問がありましたので,お答えをいたします。
 まず最初に,広島県の警察本部の資料によりますと,広島市域内に活動拠点を置く暴走族グループの数及び暴走族の構成員の人数は,各年ともに12月末時点で申しますと,平成10年は21グループ238人,平成11年は27グループ272人,平成12年は25グループ229人,平成13年は24グループ181人であります。また,暴走族の構成の年齢につきましては,14歳から18歳までの少年で構成されていると広島県警察本部の方から聞いております。
 次に,暴走族をめぐる問題は,少子化核家族化の進行,都市化の進行と地域社会の変容,多様な媒体による情報のはんらん等を背景として,学校,家庭,地域社会それぞれが抱えている問題が複雑に絡み合ってこれらの問題が生じているものと考えております。
 次に,暴力団員の逮捕状況については,私ども把握はしておりませんが,広島県警察本部によりますと,平成13年10月3日に,暴走族特別取締本部を発足して以来,平成14年1月末までに暴走族の後ろ盾となっていると言われているいわゆる面倒見と称される者を23人逮捕しているとのことでございます。
 次に,平成11年の「えびす講」における暴走族と警察との衝突事件以来,「とうかさん」やフラワーフェスティバル等での示威行為や袋町公園やアリスガーデンにおける週末の集会等が,市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず,国際平和文化都市の印象を著しく傷つけている状況にあります。そのため,暴走族の加入防止として,学校において暴走族加入防止教室を開催したり,青少年の居場所を確保するため,地域での活動支援を行ったり,さらには,直接地域の住民が中心になって暴走族の少年たちに家に帰るようにという声かけ運動をするなどの取り組みを行ってきました。
 しかしながら,状況が変わらないことや地元の住民,それから,各種のアンケート調査,タウンミーティング等において条例制定の強い要望も出てきてまいりました。
 このことから,暴走族の反社会的行為を防止することにより,市民生活の安全と安心が確保される地域社会の実現を図るため,暴走族追放に関し,本市,市民,事業者等の責務を明らかにするとともに,暴走族の蝟集,集会等に規制を行う必要があることから,暴走族追放の条例制定が不可欠であると考えておりますので,御理解をいただきたいと思います。
 以上でございます。


○平野博昭 議長
 44番。


◆44番(皆川恵史議員)
 ただいまの答弁をよく精査させていただきまして,また予算特別委員会でも審議させていただきたいと思うんですが,1点だけ。今回の広島の条例の最大の特徴は,先ほども申しましたように特定の集団の集会を禁止することができるかどうかという点が最大の特徴になっております。これを一都市の条例で,憲法にかかわるようなこういうことができるかどうかという点で,これは全国で初めてのケースではないかというふうに思います。そういう点では,暴走族そのものを取り締まるということに私ども異存はありませんけれども,非常に慎重な審議を必要とするというふうに思っております。この点だけ申し述べまして,あとは予算特別委員会でも聞かせていただきたいと思います。
 以上です。


○平野博昭 議長
 17番村上通明議員。


〔17番村上通明議員登壇〕
◆17番(村上通明議員)
 自民党・市政改革クラブの村上です。
 今,皆川議員の方からもございましたように,本件はこの後,予算特別委員会に付託され,その中である程度時間をかけて慎重に正副委員長等の判断によりまして扱われるということになっております。したがって,この本会議の質疑というものは,今,皆川議員が背景等を含めて整理されましたそれらを含めて,予算特別委員会審議の素材として各議員の前に提起されるというふうに受けとめていただければありがたいと思います。
 実務的に質疑いたします。
 まず,第2条,ここでは用語の定義ということが行われております。その中で,私は,今も何回も出てきましたが,蝟集という言葉,勉強不足,常識不足で恥ずかしいんですが,これを聞いたときに何かイメージが全くできませんでした。もう1点,公衆という言葉がございます。これも,通念的に私自身もいろいろ使っておりますけれども,非常に幅広い概念を持った言葉と。特に社会学あるいは市民生活上における公衆という問題については,解釈がいろいろとれる言葉でございます。この蝟集と公衆については,第2条の用語の定義に追加すべきではないかと思いますが,いかがでしょうか。
 次に,第5条,第14条に保護者の責務,保護者への要請ということが書いてございます。暴走族に子供たちあるいは少年が入っていく理由についてはいろんなことが言われておりますけれども,その第一義では家庭内におけるいろんな問題事があると思います。そこにおいて,保護者が実際に責務として本条例において努力を求められること,あるいは本条例において要請されていることを考えます前に,できるだけ早いうちに保護者を社会的に支援していく,この体制が非常に重要だと私は考えています。
 その意味では,保護者に対して相談機関への要望,早期連絡,これを明確にすることが実体論からいって必要ではないかと思っておりますが,いかがでございましょうか。
 次に,第11条,道路管理者等の責務の条項でございます。この中で,暴走行為を管理者は防止する措置をとるということが上げられているわけでございますが,具体的に公道における暴走を防止する措置というのはどういうものがあり得るのか,ほとんど私にはイメージできません。その具体例がございましたら確認をさせてください。
 次に,第12条,基本計画ですが,先ほど,保護者へのところで申したとおり,相談機関への早期連絡ということが一つの防止要件になるといたしましたら,この基本計画の中において,相談機関の設置,県は別途設けておりますけれども,本市においても明確に位置づける必要があるのではないかと思います。この点についてのお考えをお伺いします。
 第16条については,皆川議員が指摘されましたので質疑から省きますが,少なくとも,これが何人もとあることについては,常に慎重に議員の皆様もお考えいただきたいと思います。名称あるいは全体を通しての中身,これは暴走族を対象にしている,当たり前じゃないかと言われますけれども,この第16条は何人もという形で拡大しなければ,憲法問題等もクリアできなかったんだろうと思いますけれども*1,ここにはもう一度御留意いただければと思います。
 それから,これも皆川議員が御指摘されましたので質疑から省きますけれども,当該暴走行為を助長する目的,それとか,あるいは公衆に不安または恐怖を与える,この認定主体がだれなのかというのは非常に重要な問題でございます。これを指摘しておきます。
 次に,第17条,中止命令等になります。この中で,先ほど市民局長は,成立要件をるる上げられております。したがって,その中の一部が絶対なければ憲法に触れないから大丈夫である云々という答弁もございましたけれども,この一部が欠けたときの認定,成立要件,これがどうなるのか,これを明確にしておいていただきたいと思います。
 第2点として,市長の命ということになっておりますが,市長が現場に行かれるわけではございません。当然その実務代行者,委任先というものがあると思います。これはあらかじめ決めておかなければ,まさに条例はつくったけれども,実行は全くできなかったということになるわけでございますから,この実務代行者がどこを想定しているのか。また,それに対する委任方法及び市長命令までの手続,ここのところを明確にしていただきたいと思います。
 もう1点,その他になると思うんですけれども,この中には,保護者,市民,事業者等に対しまして,いろんな形の努力の要請,協力の要請が行われております。その際,これまで一番,保護者にしてもあるいは市民にしても事業者にしても困ったものは,万が一それをやって,市民としての協力をして被害を受けるおそれがある,あるいは残念ながら被害を受けた,その際にどうなるのかなということが協力の気持ちをなえさせてきた,こういう実態はあるのだろうと思います。
 したがって,本条例が本当に実効を求めるのであれば,被害を受けるおそれがある場合の保護,また,残念ながら被害を受けた場合の市としての補償責務,これを明確にしておくことが,本条例全体の実効性を高めると思うのでございますが,この点についての御見解をお伺いいたします。
 以上です。


○平野博昭 議長
 市民局長。


◎三宅吉彦 市民局長
 条例につきまして,まず,第2条用語の定義に関しまして,蝟集,公衆を追加してはどうかという御提案がございました。
 法令におきましては,ある言葉をそのまま使用しても特に異義が生じない場合は,その言葉を定義せず日常の意味でそのまま用いることになっています。このような考えのもとに,蝟集,公衆という言葉は,本条例の中において特別の意味を付与して用いるわけではないので,特に定義をいたしておりません。
 蝟集という言葉は,たむろする,群がる状況を端的に示す言葉であることから用いたものですが,議員御指摘のように日常余り使われる言葉ではありませんので,今後,暴走族対策の事業を進めていく中で,条例の普及も行い,皆さんにわかりやすく説明していきたいと思っております。
 保護者の責務,それから保護者への要請の中に,相談機関への早期連絡を追加してはという御提案,それから,続きまして,道路管理者等の責務における具体的な措置ということについてお答えいたします。
 保護者の責務や保護者への要請につきましては,保護者が自覚と責任を持って少年を温かく導くには,それぞれの家庭等におきまして千差万別の対応がございますので,やり方まで法令が立ち入るべきではないということから規定をいたしておりません。とはいえ,議員御指摘のとおり,保護者がなるべく早期に相談機関に連絡することは重要と考えておりますので,第12条に基づき策定する基本計画の中で検討してまいりたいと思います。
 それから,道路管理者等の責務における防止する措置の具体例ですが,中央分離帯の設置やポストコーンの設置,あるいは速度抑制舗装などを想定いたしております。
 それから,次に,第12条の基本計画に関して,新しい相談機関の設置を含むかという御質問がございました。暴走族からの離脱や離脱後の立ち直りについての相談機関として,現在のところ,本市の青少年総合相談センターや児童相談所広島県警本部の暴走族離脱サポートセンターなどがあります。今後,基本計画の策定の中で,議員御指摘の新たな相談機関が必要かどうかについては検討してまいりたいと思います。
 次は,第17条,中止命令等の成立要件の一部が欠けた場合どうなるかということ。それから,市長の実務代行者はだれか。それから,委任方法と命令までの手続ということです。
 第17条の,市長の中止または退去命令に当たっては,特異な服装をし,顔面の全部もしくは一部を覆い隠し,円陣を組み,または旗を立てる等,威勢を示すことによりとございますように,威勢を示す行為を具体的,選択的に示しているものでありまして,そのすべてを満たさなくても,威勢を示すことにより行われたものであれば,市長は命令できることといたしております。
 市長の,中止または退去命令につきましては,所定の職務権限に従い,権限を持つものが市長の名義で命令を出すことといたしております。具体的には,今後,職務権限規程の改正を行いまして,その中に職務権限として書き込むことになると,そのように考えております。
 それから,保護者,市民,事業者,そういった責務を負った者が被害を受けた場合の補償に関して規定が欠如していないか。住みよい社会を維持するため,元来,道義的には,それぞれその立場に応じた責務を有しているものと考えています。
 このたび,条例を定めるに当たり,確認的な意味も込めて条例上の責務として定めたものでございますので,責務を果たされた人を保護する規定を設けておりませんし,また,設けることは現実的でもないと考えております。同様に,被害を受けた場合にも補償は予定いたしておりません。
 なお,市民や保護者,事業者等が暴走族追放の活動において被害をこうむった場合,一般的には加害者がおり,当該加害者に賠償責任があるものと考えております。
 以上でございます。


○平野博昭 議長
 17番。


◆17番(村上通明議員)
 詳細は予算特別委員会におきますが,まず,これは青少年問題対策特別委員会,本議会で設置いたしておりますけれども,委員長を初め各委員の方が精力的に調査研究されまして,早期の提案となってきたということについて,もう一度敬意を表しておきたいと思います。
 その上で,これは本当に全市民の協力のもとに,広島のある意味では特異的な状況が起きている,これを,少なくともそこだけでも何とか早期に解決したいということが前提にあるんだろうと思うんですね。その中には,当然,市民の理解ということがなければ,行政だけが全部責任を負ってやってくれるんなら,それが一番いいけど,できないから市民にいろんな協力を求めているということなんですね。そこにおいて,法的にはこういう用語を使って,これはほかに揺るぎようがないからいいんだということではなくて,やはり,一言一言が明確に市民に理解される,これは国の法律ならいざ知らずとしても,準じているとはいえ,方法の一部であるとはいえ,市民のためにつくる条例なわけですから,ここにおいては,そういう法的概念云々の議論ではなくて,市民にどうしたら一番わかりやすい条文になるのか,そういう文章のつくり方というのは必要だろうと思っております。
 したがって,先ほど上げられました蝟集という言葉,少なくともですね,公衆はともかく蝟集という言葉,これだけは,もう一度,予特の議論過程の中において,まだ時間もあるわけでございますから,第2条への追加というのは,提案者としても再度御検討されるよう求めて終わります。


○平野博昭 議長
 以上で質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。
 本件については,予算特別委員会に付託いたしたいと思いますが,これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕


○平野博昭 議長
 異議なしと認め,さよう決定いたしました。

※なお,予算特別委員会の議事録は,広島市議会ウェブサイトに掲載されていませんでした。

*1:【情トラ】メモ/この「第16条は何人もという形で拡大しなければ,憲法問題等もクリアできなかったんだろうと思いますけれども」という点について。仮に,(否決されたものの)本件条例案の修正案にあったように「暴走族の構成員は」とすると,精神的自由に関する直接規制(内容規制)になり,その規制の合憲性を判断するには,いわゆる「明白かつ現在の危険」の基準に拠らなければならなくなるとの懸念があったのか。それゆえ「何人も」とすることで,本件条例が定める規制は,あくまで精神的自由に関する間接規制(内容中立的規制)であると位置づける必要があったのか。