パブリックコメント・カレンダー090116

成年年齢が20歳と定められている理由
1 総論
 民法の成年年齢が20歳と定められた理由については,必ずしも明らかではないものの,旧民法制定当時の日本人の平均寿命や精神的な成熟度などを総合考慮したものであるといわれている。
(注)当時の日本人の平均寿命:約43歳


2 基本書における記載
○ 谷口知平= 石田喜久夫編『新版注釈民法(1)総則(1)〔改訂版〕』〔2002〕294頁以下〔高梨公之・高梨俊一〕
 20歳成年制の成立過程,民法施行前の判例・慣習等について検討を加えた上,20歳成年制の理由付けについて,以下のように述べている。
「明治期の制定法が,当時21歳から25歳程度(21歳とするものが比較的多い)を成年年齢と定めていた欧米諸国に比べて,やや若い20歳成年制を採用したことについて,当時の学説には,日本人の平均寿命の短さ,あるいは日本人の精神的成熟の早さなどを理由として挙げるものがある。現実的な理由としては,当時の立法者が,近代的な経済取引秩序を作り上げるための必要条件として欧米の成年制度を受け入れることを基本に,15歳程度を成年とするわが国の旧来の慣行をも考慮に入れて,当時の国際的基準からいえばやや低く,それまでのわが国の慣行からすればかなり高い成年年齢を,律令を理由付けに,採用したと考えることができよう。なお,『全国民事慣例類集』には,20歳ないしそれ以上の成年期を定めた地方があることも記されており,本人保護を主な目的とする無能力者制度の趣旨からも,それまでの日本の慣行の中では高度な20歳を標準としたとする考察もある。」


○米倉明『民法講義総則(1)』〔1984〕108〜109頁
「なぜ成年は満二〇年とされたのかについて一言ふれておこう。明治九年四月一日太政官布告第四一号は「丁年」を二〇年と定めており,次いで旧民法人事編三条も同旨を定め,現行民法三条の起草者梅博士がこれを参酌し,他方では慣習も調査した結果(その結果は二一年となっているものがあるが,満年齢に直せば二〇年である),西洋では二一年となっている例が多いのだけれども,日本人のように寿命の短い国民には二〇年が適当であろうし,また,日本人は他の国民に比べて,世間的知識の発達がすこぶる早いので満二〇年とするのが適当であろうというわけで,満二〇年をもって成年とすることとされたのである。」


○永田菊四郎『新民法要義第1巻総則』〔1965〕94頁以下
「…徳川時代において通常は,一五歳をもつて成年期とし,地方によつて,一六歳,一七歳,一八,一九歳,二〇歳,二二,三歳,又は,婚姻の時をもつて,成年期としたものと解すべきである。民法第三条の成年期が従来の(前記明治九年太政官布告以降は別として),慣習に従つたというのは,必ずしも,正確ではないように考えられる。しかし,それにしても,二〇歳とした地方は,割合に多かつたのであるから(二二,二三才という地方は極く僅少),この点に比重をおくならば,慣習に従つたと解することもできる。本人保護を主な目的とする無能力者制度とも照し合せて,高度な二〇歳を標準としたものであろう。」