パブリックコメント・カレンダー090327

 「体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚(以下、「体細胞クローン牛及び豚」という。)並びにそれらの後代に由来する食品」について、厚生労働省から提出のあった資料及び既発表の学術論文を用いて食品健康影響評価を実施した。
 体細胞クローン技術は、除核した成熟卵に体細胞又は体細胞の核を移植し、電気的刺激により融合させ、得られた(再構築)胚を受胚牛に受胎させ、産子を産出させるものである。体細胞クローン牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品について、従来の繁殖技術(人工授精等)による牛及び豚に由来する食品と比較して、同等の安全性を有するかを評価することを基本的な考え方とし、現時点における科学的知見に基づき検討した。


 体細胞クローン牛及び豚の出生前後において、従来の繁殖技術による牛及び豚と比較して、高い頻度で死産及び生後直死が認められる。また、体細胞クローン牛では、若齢期においても死亡率が高い傾向が認められている。しかし、この結果は、体細胞を利用して作製された再構築胚の全能性の完成度などによるものと考えられ、死亡原因そのものは従来の繁殖技術でも認められているものである。また、出生後及び若齢期に生理学的パラメータ値が従来の繁殖技術による牛及び豚と差異が認められることがあるものの、それらは成長とともに回復し、健全となる。
 また、体細胞クローン牛及び豚の後代では、従来の繁殖技術による牛及び豚と健全性に差異は認められない。
 これらのことから体細胞クローン技術を用いて産出され、食用に供される可能性のある牛及び豚並びにそれらの後代については、従来の繁殖技術による牛及び豚と比べて差異のない健全性を有すると認められた。


 体細胞クローン牛及び豚の周産期や若齢期に認められた異常については、エピジェネティックな変化が適正に行われず、体細胞クローン牛及び豚における発生と分化が適正に行われないことが主な原因と考えられる。
 体細胞クローン牛及び豚では、ドナー動物と核内のDNA の塩基配列が理論的に同一であるため、ドナー動物及び従来の繁殖技術による牛及び豚に存在しない新規の生体物質が産生されるものではない。体細胞クローン牛及び豚並びにそれらの後代に由来する肉及び乳について、従来の繁殖技術による牛及び豚に由来する肉及び乳と比較し、栄養成分、小核試験、ラット及びマウスにおける亜急性・慢性毒性試験、アレルギー誘発性等について、安全上、問題となる差異は認められなかった。
 また、肉及び乳以外の食品についての詳細なデータは得られていないが、前述のとおり、体細胞クローン牛及び豚において、新規の生体物質が産生されるものではないこと、肉及び乳において安全上、問題となる差異は認められなかったこと等から、従来の繁殖技術による牛及び豚に由来する食品と比較して、安全上の差異はないものと考えられた。


 従って、現時点における科学的知見に基づいて評価を行った結果、体細胞クローン牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品は、従来の繁殖技術による牛及び豚に由来する食品と比較して、同等の安全性を有すると考えられる。
 なお、体細胞クローン技術は新しい技術であることから、リスク管理機関においては、体細胞クローン牛及び豚に由来する食品の安全性に関する知見について、引き続き収集することが必要である。