日本経済活性化の道程

 本日の講師は、渡辺正太郎 経済同友会副代表幹事。経済同友会とは、企業経営者が個人として参加し、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、変転きわまりない国内外の経済社会の諸問題について考え、議論していくところを最大の特色としている社団法人とのこと。
■ http://www.doyukai.or.jp/
(※以下は、あくまで【情トラ】管理人の個人的なメモです。講義内容及び配布資料のほか、経済同友会のウェブサイト等の情報を基に、私見も入れつつ構成しています。)

 日本経済の現状については、失業率が5%半ばから4%後半まで下がるなど、自動車産業デジタル家電産業を中心に、景気回復しつつある。 しかし、有効求人倍率をみると、各地域ごとに、かなり回復してきたところと、依然として低い水準のままのところと、二極化がすすんでいるという現実がある。これはこの10年にすすんだグローバル化、つまり市場原理による競争に捨てられないように、どうやって生き残るのかという問題をはらんでいるといえよう。
 世界に眼を向ければ、アメリカが復活し、紛争のヨーロッパはEUによる統合、そして中国は急成長を遂げるといった状況がある。こうした状況に対して、日本は「官から民へ」とのコンセプトのもと産業力強化を望まなければならないが、まだまだ、構造改革はすすんでいないといわざるをえない。
 今回の参院選は、「1に年金、2に年金、3に年金」だったと言われるが、年金という難しい議論は今まで全て専門家に任せられてきた。企業年金にしたって、会社の人事部が取り扱っているだけで、関心をもっている経営者はほとんどいないのが現状だろう。 だが、今回の一連の騒動(?)によって、国民が興味をもって変わっていくのではないだろうか。同様に、現在の様々な国民負担は、非常にわかりにくい。企業負担分などもあり、分散されているのが原因だといえよう。もし、全ての負担を消費税とすれば、革命的に政治意識が高まるとも考えられるのではないか。
 経済同友会では、様々な面から政治に対して提言を行っているのであるが、特に2大政党制となるよう望んでいるところである。これは、小選挙区政権交代の可能性が生じることこそが、政治的な緊張感を生み出すのであって、1票の格差が是正された小選挙区制、マニフェスによる選挙などは、より促進していってほしいと考えている。 ただ、1票の格差については、以前から一生懸命取り組んでいるが埒があかない。都市の代議士もあまり熱心ではなく、やはり自らの今の選挙区割が変更になると不安を覚えるという意識があるのかもしれない。 なお、「小さな政府」という言葉があるが、具体的に数値化・定量化してほしいと思う。経済同友会では、国民負担率をGDP比で30%という数字を出している。
 そのほか、税制改革については、現在の日本はサプライサイドへの税金が多すぎるのではないかと考えている。ディマンドサイドへの税金として消費税で皆が広く薄く負担する方向にすすむべきではないか。 ものの原点にかえって考えないと、ゆがんでしまった制度を小手先だけで何とかしようとしても、アメリカと中国に挟まれているという地政学的なコンディションにやられてしまう。。。 あとは、「CSR」や「郵便事業」などなどについての言及がありました。


 そして、【情トラ】管理人が最も印象にのこったのは、JLC受講者との質疑応答について。「所得の不平等」に関する質問に対する回答として、「日本は大きく格差の是正を行っており、『日本は最もすすんだ社会主義だ』という評価をしている人もいる。(経済の活性化のためには、)ある程度の最適化(不平等となることも含む)は必要ではないか。つまりは、全体のレベルをいかに上げるかという視点で考えることが求められよう。」という(趣旨の)回答をされたのですが、、 この回答についての【情トラ】管理人の理解。 そもそも【情トラ】は、「構造改革」って何かと「痛みを伴う」ものと言われていることに対して、「痛められたままじゃー、どーすんの?」「勝ち組はいいけどさぁ、負け組は負けっぱなし、、どころか、トコトンまでやられっぱなしで、切り捨てっつーことですか?」って考えていたのですが、「全体のレベルをいかに上げるか、という視点をもつと、弱肉強食の不平等とは違った感じになりそー、、、だな!?」、「全体があがるのですから、下のほーもあがるというわけですね?」と感じた次第。ポロッと目からウロコが、、と感じたわけなのです(※このことについては、後日もう少しキチンと考えたいと思っています。)。
 【情トラ】からも、「1票の格差に関して、衆議院は確かに1票の格差を是正することは必要だとわかるが、参議院については別に是正は必要ないのではないか。それこそ衆参両議院の違いがなくなるのではないか?」という趣旨の質問をぶつけさせていただきました。この質問については、「参議院は、今も要らないのではないかという議論もある。1票の格差については、1県1人という決まった数があるのが、ひとつの原因ともいえるのでは。」というお答えをいただいたのですが、ナルホド、この1県1人とは、、衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号)第3条第2項において「まず各都道府県に定数一を配分したうえで残りについて人口比例で配分する」と定められていることに原因があるということですね。
 とすると、、【情トラ】が考えるところ、解決法は3つ。ひとつ目は「人口が少ない県においては、隣県とあわせて1人選出すること(=「1県1人」という縛りのうち「1人」をなくす)」、ふたつ目は「現在の都道府県境にこだわらず議員を選出するために、道州制を導入すること(=「1県1人」という縛りのうち「1県」をなくす)」、みっつ目は「議員定数を増やすこと(=必ず「1県1人」ぐらいは満たすよーな議員定数とする)」です。 個人的には、もっと議員定数を増やしていいのではないかと考えているので、みっつ目の方法がヨイのではないかと考えていますが、どーでしょうか。 なお、これについては、今後の年間テーマにも絡めて考えてみたいと思っております。

法第3条2項 各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は、一に、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第4条第1項に規定する衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とする。

 ほかには、「リーダーとは?」という質問に対して、「基本的には、志や思いの強さであって、信じたものをとにかくヤル!」というお答え(確かにっ!)。また、「政治家であれば、最も痛みを伴うことと層を説得することができること」とのお答えもナルホド納得できるものでありました。

 その後は、各グループにわかれて、「日本の構造改革にはコレが必要だベストスリーを挙げよ」とのテーマのもと、討議。ここでもたいへんにタメになる意見・お話を聴かせていただきました。アリガトウございましたっ。