外国人労働者問題【立命館】

【1】
■日本の外国人労働者数は増加傾向をたどっているが、政府の対策は後手に回っている。受け入れ拡大を求める声も多く、政府には、どれだけの人数をどのような分野で受け入れるのか、総合的な戦略が求められている。

【2】
■外国人就労の拡大派の論拠には、次に挙げるものが考えられる。まず、看護師など、今後、少子高齢化社会において、需要が高まる職種の人員不足への対応である。また、日本の労働人口減少への危機感も、単純労働者の受け入れ拡大を求める声につながっており、外国政府からも、そうした声があることは、国際的協調の面から重要視される。さらに、国際的に、ハイテク分野を中心にした優秀な人材の獲得競争が始まっていることも、大きな論拠のひとつである。
■対して、慎重派の論拠には、次のことが挙げられよう。まず、人員不足には、家庭に入った女性の再活用や高齢者の再雇用に対応できるとの反論がある。また、安易な受け入れが各職種の仕事の質を落し、外国人を含む全体の雇用環境の悪化を招きかねないとの懸念があるだけではなく、社会の治安悪化への懸念もあるとする。そして、住宅、教育、医療といった分野での政府の費用負担の増加を警戒する意見もあるのである。
■これらの論拠は、確かに説得力を持つものである。しかし、日本の外国人労働者数が増加傾向にあり、登録者数だけでも02年末に185万人となっている事実に着目すべきではないか。慎重さが求められるといっても、既に外国人就労は拡大の一途をたどっているのである。その事実からすると、慎重派の論拠は、単なる無為無策に現状維持を求める声に聞こえてしまうのである。
■ならば、どのような方策でもいいから拡大すべきかというと、そうではない。やはり、分野によっては、人の健康、安全に関わる問題もある。そうした分野においては、必要最小限の規制及び対策が必要となろう。そして、政府の費用負担増加については、短期的にみるのではなく、長期的に経済が活性化し、結果として、政府の財政問題解決につながることを期待するべきなのである。