説明と同意【桐蔭横浜】

■<インフォームドコンセント>は、日本では、医者と患者の相対関係を表すため、<説明と同意>と意訳される。この語が一般化した経緯は、かつて患者は医者の権威に盲目的に従っていたが、医療過誤に対し患者の権利を守るため、法的権利として確立・定着し、これが通常の診療場面にまで拡がったところにある。つまり、この考え方は、患者の自己決定が重要視されるようになったからこそ拡がったわけである。
■しかし、そもそも医者と患者の関係は、その専門知識の必要性などから、アンバランスなパターナリズムの関係にならざるを得ない。このアンバランスを是正するため、医者が、患者が受動的でしかありえないことを自覚し、自らが専門家である前に、一人の人間として患者の苦しみを他人事だと思わないことまず必要になる。このことによって、患者ができる限り自己決定するという、説明と同意の目的を達する出発点になるのである。
臨床の知とは何か (岩波新書)中村雄二郎