市民裁判員先行記第8回/Winny事件第3回公判

 京都地裁にて、Winny事件、つまりは著作権法違反幇助に係る事件の第3回公判、傍聴に行ってきました。今日は、傍聴券は先着順とのこと。この間は定員にも満たなかった(前回参照)ですし、ゆっくり行っても大丈夫でしょう。


■傍聴前について

  • 12:30ごろ 午前中に2つの用事をすませて、本当は午後からも行こうと思っていたところがあったんですけど、続けて傍聴することに意味があるとばかりに、金チャリ太郎をとばして、京都地裁に到着。この前の2回と違って、もう外で並ばなくてもよかったです。
  • 12:35〜 最後尾に並んで座って読書など。いつも思うのですが、別にずーっと並ばせなくても、早く来た順に整理券でも渡してもらえればアリガタイのになぁ,と。他の裁判所でも同じなのでしょうか。
  • 13:10ごろ 裁判所の職員さんから、注意事項の説明など。この間も同様のことを聴いたわけで、少しばかりに常連気分。
  • 13:20〜 入廷開始。早速、バックを預けて、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)を受けて、101号法廷に。今回は確認しました。ちゃんと女性の職員さんがいらっしゃいました。座席は、満員には届かず、少しだけ空いておりました。
  • 13:30 裁判官が登場されて、いざ開廷。


■公判内容について(※注※ 以下はあくまで【情トラ】の個人的なメモをカンタンにまとめたです。全てを再現しているわけではモチロンありませんし、また、私の理解不足や事実誤認などもあるかもしれません(、いや、必ずあるはずです)ので、ご注意を!)
■また、一応、一問一答でメモしてますので、もっと詳細に再現することも可能ではありますが、概要をまとめるだけにしますのでご了承ください。非常に詳しいまとめもあり、そちらも参考になりますよ。

■なお、Winny(ウイニー、ウィニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛



■弁護側から、証人2名に対する反対尋問。まず1人目への尋問のうち、個人的に印象に残ったものは次に掲げるもの。

    • 証人のインターネットの知識について
      • 特に情報処理等の専門的なIT資格は有していないとのこと。
    • 捜査体制について
      • 捜査の具体的な指示は誰がだしていたのかにという問いに対し、上司2名の個人名があげられた。
    • Winnyに関係するファイルを確認したとあるが、その手法について
      • 「ファイル名を確認した」、「実況見分においては、どこに何があるのかの確認をするので、データの中身は確認していない」との趣旨の回答。なお、暗号化されたファイル名は、フリーソフトであるnyキャッシュ、キャッシュインフォで復合化したとのこと。
    • nyキャッシュ、キャッシュインフォについて
      • 誰がつくったのかは不知、製作者に問い合わせしたこともなく、プログラムソースの解析もしていないとのこと。
    • 公式サイトの画面を写した証拠に、「違法なファイルのやりとりはしないでください」との注意書を写していないが何故かということについて
      • 「その証拠の目的からして、画面の上の部分がうつっていればよいから」との回答。
    • Winnyを使って集めたものの一覧について
      • それぞれの中身について創作性があったのか等の問いについては、自らが著作物かどうかを振り分けたわけではないし、上司にどのような基準を用いたのかを尋ねたこともないとのこと。
    • 2ちゃんねるにおけるトリップについて
      • 自らも書き込みをして試してみた。その際のトリップには「HA123」という文字列を使ったとのこと。
    • 捜査の責任者は誰かということ(つまりは、著作物の判断は誰がしているのか、また、何を誰に聴けばよいのか明らかにするため)について
      • 最高責任者は五条署署長。決断のリーダーについては、わからないとのこと(!?)

■1人目の証人への尋問は、検察官による次のような最終尋問を経て終了。

    • キャッシュインフォとnyキャッシュの正確性について
      • 「キャッシュインフォを使いファイル名を復号化」→「内容を確認」→「キャッシュインフォにより復号化されたファイル名と同一の内容であった」→「nyキャッシュでも復号化」→「キャッシュインフォで復号化されたファイル名と同一のファイル名となった」→「それゆえに、双方のソフトともに復号が正常に行われたと判断」したとのこと。

■ここまでで15:10。一旦、休憩に入りました。


■休憩後の15:20から、2人目の証人尋問。この尋問に関して、個人的に印象に残ったものは次に掲げるもの。

    • Winnyに関連する」とはどういう根拠で判断しているのかについて
      • ファイル名、またはテキストファイルであれば、そのテキスト内に「Winny」とあるかどうかであるとのこと。
    • 正規品とWinnyでダウンロードしたものの区別方法について
      • インストールしたものであれば、区別は難しい。データで保存されたものであれば、ファイル名の特徴や(書き込みされたときの)タイムスタンプなど何らかの方法によってわかると思うとのこと。
    • ゲーム類の一覧表(「Winnyを使ってダウンロードしたと思われるアダルトゲームの一覧表」−検察側が調書に追加添付を求めたもの)をつくった目的について
      • Winnyでダウンロードしたものかどうかチェックしなさいという指示は受けていない。また、このタイトルリストをみてWinnyと関連するものかどうかはわからない、との趣旨の回答。


■最後に、検察側が調書に追加添付を求めた「Winnyを使ってダウンロードしたと思われるアダルトゲームの一覧表」について、証人尋問において「このタイトルリストをみてWinnyと関連するものかどうかはわからない」との回答を得たことから、弁護側は「調書に追加添付するのはおかしい。また、正規品を持っていたこと(つまり、当該一覧表に被告人所有の正規品も含めて掲載していること(?))は、著作権侵害幇助に全く関係ない」と主張。しかし、検察側と弁護側、そして裁判所とのやりとりを経て、裁判所により「調書添付を許可します」との結論が出されています。


■まとめ
 2人の尋問が終わり、16:30ごろに閉廷。次回は、また新たな証人2人への検察官による主尋問のようです。

 ここから、【情トラ】の感想を少しだけ。実は【情トラ】はWinnyを使ったことがなく、また、それに関する書籍なども読んだことがないので、イメージが湧かなかったのですが、警察によるWinnyでダウンロードしたファイルかどうかの判断は、主にファイル名の確認により行ったとのこと。それならば、このファイル名を正規品のファイル名と同じものに変更しておけば、もう区別がつかなくなるということなのでしょうか?

 ならば、たとえ、Winnyをインストールしており、どうにも怪しいソフトなどをたくさんもっていたとしても、それらのデータを保存しておくファイルの名称を正規品と同じように書き換え(→こうした作業をするソフトを作成すればよいということか?)、「箱や説明書、領収書なんかは全て捨ててしまった」と主張すれば、もはや取調べする側は、その主張を検証する手立てを持たないということになるのでしょうかね? んー、よくわからへんのぉ。

 また、今回の弁護人による反対尋問では、「主尋問にはない駆け引き(壇弁護士の事務室より)」が垣間見え、これらを以後の(弁護人による)犯罪事実に関する反証へと、どのようにつなげるのか興味深いところです。こういう点を考えていくと、やはり続けて傍聴することは、いろいろと裁判の仕組みの勉強になります。

 次回は、11月5日。また、金曜日。行く予定にしてます。もう少しWinnyの実際の仕様について勉強しておきます。