第33回OSIPP政策フォーラム「政策コミュニケーション・プラットフォームの試み」

 大阪大学大学院国際公共政策研究科(0SIPP)が開催している公共政策の立案・実施に直接携わる政府、国際機関等の当局者と最先端の政策討議を行う場としての「政策フォーラム」。本日は、第33回目の開催だそうですが、【情トラ】は初参加。たまたまいろいろな大学のサイトを閲覧していたときに見つけて、たいへん興味をひかれたために、阪急電車乗り継いで行ってきました。


■「政策コミュニケーション・プラットフォームの試み」
 政策CPプロジェクト(http://seisaku.jp/)代表の島広樹氏による、このプロジェクトの概要説明と、参加者との質疑応答の90分。非常に有意義な時間を過ごすことができました。

  • 政策CPとは … 具体的には、実際にそのサイトを閲覧するのが最も良い方法でしょう。ここでは、その趣旨だけ転載(一部改変アリ)しておきます。

「政策コミュニケーション・プラットフォーム(政策CP)」プロジェクトでは、すべての人がそれぞれの役割に応じて、効率よく政治に参加することのできる、新しい社会基盤を構築することを目標としております。
このプロジェクトは、政治システムが混迷を極めている日本において、政治に失われた信頼を取り戻し、民主主義の新しい秩序を築くために計画されました。政策プロセスに最新の情報技術(プロファイリング、データベースなど)を持ち込むことにより、これまでの政策議論では不可能だった高度な機能(政策的立場のポジショニング、政策マッチング、政策パッケージの構成など)を可能とします。また、政策コミュニケーションのプロセスを統合し、政治家だけでなくさまざまなアクター(市民、専門家、NPO/NGO、企業など)に、それぞれの立場や役割に応じて、効率的よく政治に参加するためのツールを提供いたします。

■この政策CPとは、はやい話が今までの政治のあり方があまりにも閉鎖的であったため、新しいコミュニケーションの仕組みを整えることによって、その閉鎖性を打破しようということだと思います。その閉鎖性とは、たとえば、政官業の共生関係であり、議員同士の馴れ合い的な支持交換であったり、一部の関係者の利益のために、それ以外の大勢に広く薄い負担がかけられるという構造であると指摘できるのでしょう。
■では、その新しいコミュニケーションの仕組みとはどんなものかというと、現時点で公開されていたものは、「参議院選挙2004プログラム」です(現在もアクセスは可能)。これは、簡単にいうと「①30個の政策課題について候補者(政治家)に質問」し、「②その回答をデータベース化」する。そして「③そのデータベースに有権者がアクセス」し、「④自分の求める政策に最も近い候補者(政治家)を検索」することが、ネット上でカンタンにできるという仕組みです。
■試しに【情トラ】も検索してみましたっ、、、が、「残念ながら、今回のプログラムで登録されているなかで、上記の政策を全て約束する政治家は1人もいません。」との結果に終わってしまいました。。しかし、これは、よく考えれば、(残念ながら)当然のことかもしれません。だって、様々な分野における判断が30個全て一致する人ってフツーいないでしょうし。また、設問自体、判断が難しいものばかりともいえますので、候補者(政治家)の回答も保留とされている場合が少なくないのではないかと推測されるところです。
■なお、検索する際に、特に重視する政策課題を自らで絞り込むと、その回答が一致する候補者(政治家)があらわれると思います。そうした検索結果が出てきた場合は、その候補者(政治家)に対して、非常に親近感を持つきっかけとなるよーな感じがしますね。
■現時点では、このような、いわゆる政治家データベースが提供されているだけなのですが、本日のお話によると、市民やNPO有識者などから提案された政策のデータベース、様々な専門知識を有する市民のデータベースなどの提供とともに、そこから政策パッケージをつくりだすといったアプリケーションの開発まで構想されているよーです。
■【情トラ】としては(いろいろと考えるところはあるものの)、非常に魅力的な構想であることに間違いないので、政策CPの今後に注目していきたいと思いますっ。


■【情トラ】まとめ
 この政策CPの発想は、【情トラ】のプロジェクト(!?)、【政・官・民の情報トライアングル】におけるパブリックコメントの取組みと似通っているなぁと、まず、最初に感じました。とはいっても、政策CPは、様々な場面を想定しており、それに合わせたアプリケーションの開発も構築されていくそうですので、【情トラ】とは全く規模が違うのですが(^ー^)
 似ている点は次の4点。

    1. 従来からの最大にして唯一のシンクタンクである官僚のほかに、新たな政策シンクタンクの創出を目指していること。
    2. インターネット上に場を設けることによって、時間や空間を超えた情報共有を行おうとしていること。
    3. 単に一般市民の参加を呼びかけるだけではなく、NPO有識者といったいわゆる専門家(もちろんココには、一般市民で専門知識/特定の興味を持つ人も含みます。)の参加も求めていること。
    4. 以上のような政策や人材に関するデータベース化を通じて、情報の共有を行い、情報の循環を目指そうとしていること。

 以上のように、基本的には趣旨・目的のところで、(ご迷惑かもしれませんが)似てるんちゃうんかと感じた次第です。


 対して、異なるところは次の3点。

    1. 政治家を巻き込んだ形でのシステム設計をしていること。
      • 【情トラ】では、対議会という形では政治家に関与することを想定していますが、個々人としての政治家を通じたあり方は考えていません。
    2. 官僚(行政)の持つデータを基本的に利用しないこと。
    3. (現時点では)ネット上における利用者との双方向コミュニケーションがないこと。
      • 【情トラ】では、一応(ホントに一応ですが、、)掲示板とメーリングリスト、そしてblogを用意していることからコメントとトラックバックを用意しています。そして、もちろんメールでのやりとりも。

 これらは、基本的には手段のところでの違いということができるのではないでしょうか。もちろん、【情トラ】のほうが優れているなんか言うつもりは全くアリマセンっ。政治家を巻き込むことは良い面悪い面両方あるでしょうけど、やはり必要となる要素でしょうし、(組織としての)官僚を利用しないことは、そもそも官僚主義の打破を趣旨に掲げていることと整合がとれます。そして、双方向コミュニケーションについては今後整備されることでしょう。


 これらの点をふまえて、【情トラ】プロジェクトの今後を考えてみると、、、。

    1. もっと使い易くすること。
      • これは、【情トラ】では独自アプリケーションの開発まではできませんので、とりあえずはパブリックコメントの検討をこの【情トラ】附゛録゛において行おうと考えています。いろいろな意見を募るときにコメントやトラックバックが活用できるという利点があると思うからですけど。
    2. もっとわかりやすい表現を行うこと。
      • 【情トラ】プロジェクトは1人で行っていることもあり、気をつけないと独り善がりに陥ってしまうことが考えられます。やはりアクセス者の増加、リピーターの獲得を目指すためには、理解し易く、常に新しい情報の提供を行う必要があるのでしょうね。
    3. もっと利用者を増やすこと。
      • こればっかりは試行錯誤になってしまいますが、とりあえずは、アクセス数やメルマガ読者を増やすことは重要事項だと思うわけです。そのために、さまざまなコンテンツを用意すること(たとえば、市民裁判員先行記でWinny事件をとりあげること(→これは純粋な裁判に対する興味のほうが優先していますが。)。地方議会傍聴録をまとめてみること(→これも純粋な議会に対する興味が優先してますね。)。)、いろいろなところにリンクしてもらうこと(たとえば、国立国会図書館との相互リンクは、個人的に嬉しい成果です。)などなどが必要なのでしょう。うーん、難しいですけど、また、新たなコンテンツを考えていますし、何とかガンバッていきたいところです。


 ところで、こうした要素は政策CPにも、提案できることかもしれませんね。特に個人的にきになったのは、「もっとわかりやすい表現を行うこと」について。政策CPで用いられている表現で、私の不勉強にも起因するのですけど正確な意味がわからないものもありましたし、政治家検索において掲げられていた30個の政策課題に関しても、それぞれの解説があればいいのにと思ったりもしたわけです。このうち政策課題の解説については、たとえばhttp://www.seiron.org/のようなサイトと連携をとったりすることもひとつのアイデアかもしれません。


 まっ、いずれにせよ、本日はたいへん刺激になり、勉強させていただいたフォーラムであり、この告知を見つけた偶然(必然(?))を喜んでいる【情トラ】なのでした (^ー^)