市民裁判員先行記第31回/Winny事件第16回公判
京都地裁。Winny開発者が被告人となった、著作権法違反幇助に係る事件。第16回公判に傍聴に行ってきました。13時30分から17時までギッチリ被告人質問。
■傍聴前について
- 13:00前 地裁到着。本日は知人と待ち合わせもアリで。
- 13:20頃 入廷開始。カバンを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後、101号法廷に。
- 13:30ちょい前 開廷。
■本日は、私用のため、最初の1時間程度及び最後の20分程度しか傍聴しておりません。ただし、その間については、知人の手によるメモがあります。といっても、たいへん技術的な話が多かったようですので、「Winnyの技術」をじっくり読まれた方がよろしいのではないかと思います。私が自ら傍聴したわけでもなく、また、技術的な話をそれほど理解できているわけでもありませんから。
◆なお、公判内容については、あくまで【情トラ】の個人的なメモをまとめたものです。全てを再現できているわけではモチロンありません。特に今回は、知人の手によるメモを基にした部分もあります。また、公判内容についても、語尾表現を簡潔にするなど、様々なかたちで【情トラ】の手による編集等も加えていますので、細かいニュアンスなどは全く異なる印象を与えることもあるかと思います。それだけではなく、実際には発言されていないにもかかわらず、【情トラ】が理解した(思い込んだ)ものを勝手に付け加えてしまっているトコロもあるかもしれません。さらには、私の理解不足や事実誤認なども、必ずあるはずです。とまあ、イロイロと但書がありますので、その旨ご留意されるようお願いいたします。
■なお、これまでのWinny(ウイニー、ウィニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
◆【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛
今回も、前回に引き続き被告人質問。先般のお知らせのとおり、弁護側が請求した証人尋問については、次回以降ということのようです。
■Winny事件に関するご連絡 - 【情トラ】附゛録゛
なお、前回同様に、入廷したときから、裁判官席、検察官席、弁護人席、そして、証言台の横に(机が置かれて)パソコンモニタがあり、傍聴人席からみて右側の壁には、その映像が映し出されていました。さらに、証言台にはマウスとキーボードが、その床にはパソコンが。
前回は、被告人がこれまでに作成してきたプログラムを、実際に動かしてみてどのようなものかについて確認するためでしたが、今回は、Winnyの技術に関する説明用としてのパワーポイント資料を映し出すためでした。その1枚目は、次のような感じ(あくまで感じにしか過ぎませんので。)。
平成16年(わ)第726号
著作権法違反幇助被告事件
被告人質問資料
平成17年10月3日
■はじめに、裁判長から、(検察側、弁護側の)双方から証拠取り調べ請求が出されているとのこと。検察側からの請求については、弁護側が「いずれも不同意」と回答。「そもそも(刑事訴訟法)322条1項の要件がない」と主張された次第。
■また、弁護側からの請求については、検察側から、その証拠の添付資料がFAX送信されてきていない旨を主張するなどして、「今日は、いずれも留保で」という回答。ただし、弁護側から「この資料については、本日の尋問にて示すことは構わないか」といった質問がなされたため、裁判長も含めたうえで、適宜判断するとのことで進められることに。
■なお、裁判長から、「CD-Rが請求のなかに含まれているが、それはCD-Rそのものではなくペーパー化したもので」といった趣旨の依頼がありましたが、それについては、弁護側から「CD-R自体は、プログラムの存在を示すという趣旨」との回答あり。
■続いて、弁護側から、「(プロジェクターで映し出したものについて、)ビデオで録画させていただきたい」との申し出。裁判長から検察側に意見を求めたところ、「然るべく」との回答。録画がスタートされました。
◆被告人に対する弁護側からの質問
- (弁護人)いきなりですが、CD-Rを示すことは構いませんか
- (検察官)どうぞ
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ)弁17号、18号を示します。前回、あなたはWinnyの技術を応用したプログラムがあるとおっしゃっていましたね
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))はい
- これですか(CD-Rを示す)
- はい
- 私の目の前で焼いたものですね
- はい
- 中身は17号がプログラムソースで、18号が実行ファイルですね
- はい
- これらが、公判における弁解のためにつくったわけではないという証明はできるか
- 押収されたPCのなかにあったはず
- 91号証を示します。この図は。
- 押収されたPCのフォルダファイル構成
- Cドライブのどこにあるか
- 名前が違うが「NW32」というファイルに
- 上から3つめ
- はい
- NW32という記載は
- 間違っています
- Dドライブには
- NW32ですが、これも名前が違う
- コンパック製のノートPC
- 入ってますが、また、名前が間違えています
- 誰がかいたのか
- 私が主に
- 他にかいた人がいるのか
- アスキーの編集の方(に手伝ってもらった(?))
- 出版日は
- 10月6日
- 出版前に1部手に入れたということか
- はい
- どうして、そのように言えるのか
- 本を読んでもらえばわかる
- P2Pとは
- Peer to Peer、PeerとPeerの間で成り立つソフトウェア。対等な立場のPCで成り立つネットワークの形態
- P2Pと対立する概念は
- クライアントサーバ、もしくはサーバクライアント
- クライアントサーバとは
- P2Pは対等なPCによるものだが、クライアントとサーバが明確に分かれている。サービスを一方的に受けるクライアント側と、サービスを一方的に提供するサーバ側に
- P2Pがクライアントサーバよりすぐれているところは
- ひとつは、全体が分散しているので効率がよい。ふたつめは、障害に強い、こわれにくい
- 更新弁論の際に使用したパワーポイントを被告人に見てもらいます。図(クライアントサーバに関する図)を説明できますか
- はい。
- ※図の説明
- サーバがダウンすると、ネットワークが停止し、すべてのクライアントがサービスを受けられなくなる
- P2Pについて(図を変えて)
- ※図の説明
- peerと呼ばれるPC間に流れる赤い玉が、データのやりとりを示す
- 負荷分散による強固なネットワークについて(図を変えて)
- ※図の説明
- 一台がダウンしても、残ったPC間でデータを共有できる
- 本(「Winnyの技術」)を具体的にみてもらいながらのほうが、わかりやすいはず。裁判長、3冊用意していますので
- (裁判長)よろしいですね。まっ、本ですので
- (検察官)どうぞ
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ)13ページから16ページを示します。これらのことは、このあたりにかかれていますね
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))そうです
- P2Pの技術とは
- 分散コンピューティングと、分散ストレージ
- 分散コンピューティングとは(図を変えて)
- それぞれのPCは計算能力が余っているので、それを集めて仮想的なスーパーコンピュータを実現するもの
- マウスがありますので(、図を動かしてください)
- ※図の説明
- CPUが余っているそれぞれのPCから集めて(?)、図上のスーパーコンピュータは実際に存在しているわけではなく、仮想的な高性能コンピュータをつくりだす
- 分散ストレージとは
- ストレージを集めて、より大きなストレージをつくりだす
- ストレージとは
- 記憶装置、一般的にみなさんが知っているものは、ハードディスク
- あなたは分散コンピューティングは
- 日本原子力研究所にいたときに、性能が低いスーパーコンピュータについて
- 分散ストレージは
- ファイル共有は、一種の分散ストレージなので、今回のWinny
- ファイル共有は分散ストレージに属するのか
- はい
- それ以前は
- ありません
- ファイル共有ソフトとは
- ファイルを共有するためのソフト
- ネットワークを使うのか
- はい。なので配信といってもよい
- ファイル共有は、クライアントサーバでもできるか
- できるが、ファイル共有といった場合、主にP2Pを指す
- なぜか
- (P2Pは)負荷を分散するので効率性が高く、サーバに依存しないので堅牢なネットワークを築けるから
- 逆にP2Pが苦手なことは
- 集中して行うこと。また、検索に問題がある
- 検索の情報量が増えるということか
- 情報そのものは変わらない(?)、転送量は飛躍的に増える
- ※図(「P2Pと検索情報の増加」)を示しながら、ノード数と検索データ量の関係について説明
- ノードとは
- ネットワークに参加しているPCのこと
- ※図を示しながら、ノード数と検索データ量の関係について説明
- N(ノード数)=2、S(検索データ量)=2
- N(ノード数)=3、S(検索データ量)=6
- N(ノード数)=5、S(検索データ量)=20
- 単純なものである場合、ノード数に対して検索データ量はどのようになるか
- S=N(N−1)
- ノード数100万なら
- 100万なら1兆ぐらい
- ※図示
- N=1、S=0
- N=10、S=99
- S=90ですね、誤記です
- N=10000、S=99990000
- ※縦軸(検索データ量)50万、横軸(ノード数)1000のグラフを示す
- P2Pの場合、ノードの数が増えると、検索データ量が飛躍的に増加する
- 対策が必要となる
- 従前はどのように対策されていたか
- ありがちな対策は、検索部分だけをクライアントサーバにするというもの
- それを一般的に何というか
- ハイブリット型P2P
- そのメリットは
- 技術的に容易であることと、サーバによる検索効率の向上
- デメリットは
- 検索サーバがダウンすると、P2Pにもかかわらずネットワークがはたらかない
- ピュア型P2Pのメリットは
- なんでピュア型というかは純粋だということ
- デメリットは
- 技術的に難しいこと、検索の効率の向上が必要であること
- 何か知っているものは
- Gnutellaが有名
- (パワーポイントが)フリーズしたかな
- 固まっているのでは
- ※動作確認し、動作復帰
- これまでを世代別に分類しているそうだが
- 3世代に
- 具体的には
- ハイブリット型を第一世代、Napsterがある
- メリット・デメリットは
- 技術的に容易、サーバに依存
- 第二世代は
- ピュア型ファイル共有
- メリット・デメリットは
- 堅牢なネットワーク、検索効率の向上が必要
- 第三世代は
- キャッシュシステムを用いる
- 何があるか
- Freenet
- cache型ファイル共有
- Winnyは
- 第三世代
- (「Winnyの技術」の)20ページから34ページを示します。このあたりにありますね
- はい
- 何という
- 「A Distributed Anonymous Information Storage and Retrieval System」
- ※原文はこちら(PDFです)
- ※訳文はこちら(Google's cacheです)
- 「分散匿名情報の保管と検索システム」か
- そのころには全訳はなかった
- 英語の論文を読んだのか
- 一応、ドクターもってますんで。プログラムをかくときなどは英語ですし(?)
■ここで、私用(講義)のため、私は退廷しました。ここからは知人メモによる概要です。
- 英文論文の内容は(?)
- メカニズムでキャッシュシステムを用いる
- キャッシュシステムとは
- 一時的に情報を蓄えるストレージで、他人にも送信できるもの。匿名性を実現できる
- 匿名性とは
- 情報の第一発信者をわからなくすること、情報の中身の匿名性ではない
- Freenetの論文を読んで、どう思った
- 匿名性が画期的と感じた
- ニュースソースの秘密を守れるということか
- そうだ。技術的にはセキュリティを守れる。暗号と同じレベル、言論の自由が守れる
- Freenetは普及すると思ったか
- いや、情報の発信者がわからないので、暗号化されたキャッシュをいちいち検索しなければならず大変。情報共有という点からは非効率。CacheはOrigin Dateをばらばらにした断片、これを全部集めないとOrigin Dateが復元できない
- ファイルローグを参考にしたか
- いや、第一世代なので参考にしていない。ファイルローグはサーバに依存するハイブリット型
- プロキシサーバのアイデアと匿名性を組み合わせることを思いついたのか
- なぜ階層型か
- より速い回線を受かってノード間で検索できる
- Winnyでは、Key(インデックス(小さなデータ))とBody(データファイルそのもの(大きなデータ))を分離している
- 分離のメリットは
- ネットワークの上流のところにKeyを集めておくことができる(上流だけにKeyを集められる)。そのKeyを検索するとBodyに辿り着ける。上流だけ見ればよいので検索しやすい
- あと、クラスタ化、つまり似た情報をまとめて群をつくることも
- クラスタ化のメリットは
- 検索しやすい、似たものを優先的に接続してくれる
- キャッシュ化のメリットは
- ブロック化されているので、一度転送に失敗しても、一からやりなおさずに、そのブロックから再転送すればよい
- 高速にダウンロードできる、多重ダウンロード。ノード、つまりPC毎にブロックをダウンロードしてこれる
- キャッシュで各ノードに分離されるので、sender(データ発信者)が誰かわからなくなる
- Winnyでは匿名性を守る程度に、他のノードに中継させているが、あまり中継させても非効率になるので、ほどほどの中継をさせている
- なぜWinnyを暗号化したのか
- 効率よくダウンロードさせるため
◆以上、知人のメモによる傍聴記録概要です。再度、記しておきますが、全てを再現できているわけではありません。様々なかたちで【情トラ】の手による編集等も加えています。それだけではなく、実際には発言されていないにもかかわらず、勝手に付け加えたトコロや漏らしたトコロが必ずあります。さらには、私の理解不足や事実誤認なども、必ずあります。イロイロと但書がありますので、その旨ご留意されるようお願いいたします。
■16:30過ぎに再び傍聴。話の流れがわからず、以下は(ホンマに)メモ書き(程度のもの)。
- ※「ルータを解した場合の接続」とのパワーポイントが映し出されている
- おそらくは、正犯とされる方の自宅と京都府警間で行われたWinny送信実験に関して、IPアドレス、ポートの開放などといったことに言及している模様
- 見分調書などからネットワーク設定等を確認し、「(この場合は通信を)やってもはじかれる」、「(この場合は)Winnyと通信できる」などといったことを、弁護人と被告人間で質疑応答
- ※「ダウンロード実験の矛盾点」とのパワーポイントあり
- ポートが違えば、もちろん(送受信)できないなどの応答あり
- ポートの矛盾について
- 警察が間違えているか、書類(の記載)が間違えているか
- 従前の技術にはなかったのか
- 当時はいろいろな試みはなされていた
- 問題点は
- 書き込み内容によって削除しないといけないものがある。全体をどうやって管理するかが難しい
- P2Pのキャッシュを用いたものは
- 同じ内容について(、分散していくため)同期がとれない
- 管理は
- どうやって削除するのか
- Winny2には電子認証を導入したのか
- β7.1に開発途中だったが、掲示板を特定し、書き込み者を特定する
- なんのため
- 将来的には管理可能にするため
- β7.1ではできていないのか
- 開発途中
- どうして
- (?)
- 警察が(開発するなと)
- そうですね
- その機能ができたら(?)
- メカニズム的には、問題があるファイルが流れたときに削除できる
- 開発はしないのか(?)
- つくっていいですか(?)
◆ここで、既に17時ごろになっていたこともあり、被告人質問は「今日はこの程度にしておきます」とのこと。次回は、この続きのようです。
※再々度、記しておきますが、全てを再現できているわけではモチロンありません。様々なかたちで【情トラ】の手による編集等も加えています。実際には発言されていないにもかかわらず勝手に付け加えたトコロや、発言されたにもかかわらず漏らしたトコロが必ず、非常に数多くあります。さらには、私の理解不足や事実誤認などもあります。以上の但書をご理解ください。
■【情トラ】感想
今回の内容の大部分については、次の書籍を読むことをオススメします。
- 作者: 金子勇,アスキー書籍編集部
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- メディア: 単行本
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そのほか、id:gb2さんの傍聴録には、私の力が及ばなかったトコロが数多くまとめられているようですので、どうぞご確認を。
今回の公判を(不完全ながらも)傍聴して、感じたこと多々あり。「Winnyの技術」をじっくり読んでおくことにしたいと思います。
あと、あのCD-Rに入っているという「Winnyの技術を応用したプログラム」って、なんなんやろー。これは次回明らかにしてもらえるのかな。一応、次回の11月7日についても、おおよそ今回と同じような感じで傍聴予定ではありますので、ちと楽しみ。
*1:警察の方