市民裁判員先行記第33回/Winny事件第17回公判
京都地裁。Winny開発者が被告人となった、著作権法違反幇助に係る事件。第17回公判に傍聴に行ってきました。途中で抜けましたけど。
■傍聴前について
- 13:00前 地裁到着。
- 13:20頃 入廷開始。カバンを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後、101号法廷に。今日は、PC等の用意はありませんでした。
- 13:30 開廷。
■本日は、私用のため、最初の1時間程度しか傍聴しておりません。傍聴したのは「Winnyに関する評価や意見に対する被告人自身の意見」に関する被告人質問の部分です。その後、被告人に関する調書や申述書等について、その詳細を確認する趣旨での被告人質問がありましたが、それはほんのさわりだけしか傍聴しておりませんので。スミマセン。
◆なお、公判内容については、あくまで【情トラ】の個人的なメモをまとめたものです。全てを再現できているわけではモチロンありません。また、公判内容についても、語尾表現を簡潔にするなど、様々なかたちで【情トラ】の手による編集等も加えていますので、細かいニュアンスなどは全く異なる印象を与えることもあるかと思います。それだけではなく、実際には発言されていないにもかかわらず、【情トラ】が理解した(思い込んだ)ものを勝手に付け加えてしまっているトコロもあるかもしれません。さらには、私の理解不足や事実誤認なども、必ずあるはずです。とまあ、イロイロと但書がありますので、その旨ご留意されるようお願いいたします。
■なお、これまでのWinny(ウイニー、ウィニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
◆【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛
今回も、前回に引き続き被告人質問。
■はじめに弁護側からの請求等々について。検証請求と弁20号証から26号証が提出されている旨を裁判長から検察官に伝えられ、これらの取り扱いに質問。
■検察官からの回答として、弁20号証については、公判との関連性についてわからないとして、留保。ただし、被告人質問において示すことは構わないとのこと。弁21〜24号証については不同意。とくに22号証については証拠物取調べに異議あり。あと、25、26号証に関しては検討するので留保とのこと。
■裁判長から、被告人質問において当該証拠物を被告人に示すことは構わないかとの確認がなされ、その都度確認するということに。
■なお、弁護人から、弁23、24号証は記事の存在自体を示すという趣旨であるとの説明。
■また、弁15号証(「Winnyの技術」のこと)に関して、これは前回も示しながらであったなど裁判長から話されたこともあり、検察官も「取調べに異議はありません」との返事。「弁15号証は本日の段階で(証拠に)採用」ということに。
◆被告人に対する弁護側からの質問
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))前回は、Winnyの技術に関して質問した
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))はい
- 今回は、Winnyに関する評価や意見に対する(被告人の)意見を尋ねる
- はい
- データの違法なやりとりに関して、被告人は注意書きなどをしていたか
- はい
- 具体的には
- 2つある。ひとつはWinnyを公開したWebサイトで注意書きを記載。もうひとつは、ドキュメントファイル(READ MEファイル)にも同様の記載をした。
- 甲113号証指示番号971号を示します。見覚えは
- Winnyを公開していたサイトですね
- 下から2行目「これらのソフトにより違法なファイルをやり取りしないようお願いします」という注意書きは、いつから記載していたか
- Winny2ではなく、Winny1の一番初めから
- いつから
- 一番はじめの段階
- 公開する際のあなたの配慮として、Winny本体にそうした(違法なファイルのやりとりを防止するような(?))機能はあったか
- 無視フィルタの機能
- 弁15号証、137ページ。問題のあるファイルの拡散を防ぐ、ただし多くのユーザーの協力が必要である
- はい、そのとおりです
- 甲127号証資料14の1枚目。2ちゃんねるのスレッド、10番目のカキコミ。「新作映画をダウンロードしないように無視リストに追加しました(?)」。次は、「本物なので、無視リストに追加しました」。これらをどう思った
- 使い方として正しい
- 無視機能のほか、開発の途中で何か考えたか
- 課金システム。Winny1開発の後半のほうで
- 今の認識としては、どのようなことが考えられるか
- ファイルのフォーマットの問題。DRM。また、暗号がとかれたときに、問題があるファイルをとめるシステム
- DRMとは
- Digital Rights Management
- 具体的には
- ファイルを暗号化して、認証を受けると中身がみれるというもの(?)
- 無視機能は多くの人の協力が必要か
- ほとんどの人の協力が必要
- 一括管理はできないのか
- 当時は思いつかなかったが、今はできる
- 今できるということを客観的に証明できるか
- 今、特許をだしている
- 弁20号証を示します。特許出願に関するもの
- はい
- これは、どのような内容か
- 全部で3つ。ひとつが、ファイルを強制的に消すもの。ふたつめが、問題のないファイルについて、ノードにこのベンダーさんであれば許可するといった電子認証のシステム(?) そして、特定のファイルを強制的にひろめるもの。
- この機能でセキュアなシステムが可能か
- セキュアの定義にもよるが、安全に管理できる
- 今Winnyネットワークでは、ウイルスが問題となっているが、これに対応できるか
- もちろん消せます。あと、今、問題となっているのは、ウイルスによって意図しない情報が流出してしまうこと。このような意図しない情報流出に対して、流出しないようにすることは、(この特許出願しているシステムを用いずとも)簡単に修正が可能である
- どの程度で修正可能か
- プログラム数行(の修正)なので、1時間ぐらいで
- 修正しないのは
- 警察にバージョンアップしないでくれと言われたから
- 念のために訊くが、ウイルスが問題になったのは、そう言われた前か後か
- 後です
- 証人尋問におけるKさん*1の証言は聴いていたか
- だいたい
- Kさんは(Winnyの機能として)ファイル名で検索することが問題といった(?)
- はい
- これは正しいか(?)
- 検索するためのキーワードは、ファイル名の一部だけである
- そのほかにあるか
- ハッシュ値がある
- ファイル名で検索することが著作権の侵害につながるという説明は(?)
- そうは思わない。ファイル名とその中身が同じであるという保証はない
- ファイル名から、その中身について利用を許諾しているかどうかわかるか
- わからない
- 特定の拡張子だけを除外すればよいとの考えは、どう思うか
- 中身は自由に変えられるので、その拡張子に対応しているという保証はない(?)
- 当時はあったか
- P2Pに限ればない
- どうして
- まずデータをみたとき、それが著作物かどうか判断することが無理である
- Tさん*2の報告には、一部、著作物でないものを著作物としてあげられていた。Tさんは法学部出身とのことだが、Tさんと比べてどちらが詳しいか
- Tさんのほうが専門
- 著作物の判断については、創作性の有無が重要であることは知っているか
- 今は
- 当時は
- そこまでは
- 創作性の有無をプログラムで判断することはできるか
- 無理
- (利用)許諾がなされているかが重要であることは
- 当時はあやしい
- 外国の著作物が日本では保護されないケースがあることは
- 当時は知らない
- どこでつくられたものか、ソフトウェアに判断させることができるか
- 無理
- 今、あなたはつくれるか(?)
- 誰もできないと思いますが
- 検察官の冒頭陳述において、著作権法違反を助長する機能として6つあげられていた(ので、それぞれについて、その機能の目的を訊ねる)。
- キャッシュ機能
- 効率をよくして、匿名性を確保する
- 暗号機能
- 多くはセキュリティ保護のため。ユーザーさんのプライバシー保護
- クラスタ化機能
- 主に検索の効率をよくするもの。他には転送の効率をよくするため
- 自動ダウンロード機能
- ユーザーさんの利便性の向上
- 今、ハードディスクビデオでも似たような機能がありますね
- はい
- 被参照量閲覧機能
- 流通量の目安
- どういうことか
- キャッシュがたくさんあるので、おとしやすいよ(ということの目安)
- この機能については「Winnyの技術」で、特に項目立てて説明していないがどうしてか
- かなりどうでもいいパラメータなので
- ダウンロード枠増加機能
- たしかに増えることがある
- 何によって
- アップロード枠に応じて
- 何のため
- ネットワーク全体の効率向上のため
- どうして向上するのか
- 詳細は本を
- 弁15号証123ページからが、ダウンロードに関してはこのあたり
- はい
- どうしてこのような冒頭陳述になったと思うか
- Winnyの機構を把握しきれず、勝手にシナリオをつくった(のではないか(?))
- 冒頭陳述のようなことは
- いや、ありえません
- 実際にあるか
- はい、あります
- その名前は
- NTTコミュニケーションズのNetLeader
- コンテンツを配信するところは
- 商用サイトとして「わざアリ」
- ※高画質コンテンツの無料ダウンロード配信サービスの開始について(平成15年11月5日)
- 弁23号証の資料部分を示したい
- (裁判長から検察官に対し)資料部分はよろしいか
- (検察官から)はい、どうぞ
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))NTTコミュニケーションズのホームページとPDFファイルである。5、6、7ページ目に「わざアリ」Webアーカイブが
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))これです
- 暗号化処理なしで配信するものとしては何が考えられるか
- 広告を含むようなもの。これは見てもらってこそのものであり、許諾があるというものなので(?)
- あなたが、(そうした)使い方として何かされたことは
- 自分の著作物をWinnyネットワークに流しました
- 報告書とCD-Rを示したい
- (検察官から)報告書は壇弁護士が作成したものですし、どうぞかまいません
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))それを、私がWinnyでダウンロードしたものを記録したCD-Rがこれですね
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))まあ、(CD-Rそのものを)見てもわかんないですけど
- 私からはあと1点なのですが、今回のあなたの逮捕により、他の技術者が開発に関して萎縮したなどといった話を聞いたことはあるか
- いくつかある
- 名前は
- 匿名プロキシの公開をやめたところで、「Aerie」
- 【参考】Aerie: 壇弁護士の事務室
- 弁24号証の資料部分を示してよいか
- (検察官から)示さずに質問お願いします
- (弁護人から)一番最後のページだけ、存在を示そうという趣旨
- (検察官から)一番最後だけなら
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))英語のページ。なんと書いてあるか
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))A Fast Decentralized Proxy
- 高速分散プロクシということ。Aerieに関して開発者が言っていたことを覚えているか
- 覚えていない
- 中断されたことは
- 覚えている
- どう思うか
- ソフトウェアの開発は中立なのであって、幇助となることは足枷である。私としては許すことができない
■ここで、被告人質問を行う弁護人が交替。以下、被告人に関する調書や申述書等について、被告人質問が続きます。
- (弁護人(特に注記がなければ、以下同じ))調書や申述書について訊く。平成15年11月27日に被告人の家宅捜索があった
- (被告人(特に注記がなければ、以下同じ))はい
- 経緯を話してほしい
- 家で寝ていたので、午前中、玄関の呼び出しや電話を無視していた。それでも玄関から呼び出しがあるので何だろうと思い、顔を出したら、「京都府警だ」と。「何ですか?」と訊ねると、「わかっているだろ、中に入れてくれ」と言われた
- わかっていたのですか(?)
- わかりませんでした
- それで
- (本当に警察かどうかわからなかったので)「令状ありますか」と訊ね、見せてもらって、しょうがないから中に入ってもらった(?)
- 令状にはどういったことが記載されていたか
- 家の住所とPC、著作権法違反関連先などといったこと
- (捜査や令状に関する)説明は
- 全くなし
- いつ
- 本富士署に行き、取調べを受けた一番最後
- 具体的な説明は
- ない
- プログラムソースを探しに来たということは
- 最後まで説明はなかった
- (そのとき、被告人が)被疑者であるのか、参考人であるのかということは
- 聞いてない、言われていない、説明を受けてない
- 捜査官は、何人か
- 5、6人
- 最初に何をしたのか
- それだけの人数だったので、足の踏み場もなく、部屋の片付けから
- そして
- 日常的にメインで使っているPCはと訊かれ、WiNDy製のものと。ただ電源は入っていないと言った
- そのあとは
- まずネットワークの接続状況。ルーターやモデムの写真を撮っていた
- そして
- 電源を入れていろいろ探していた。見ていたところ、「Winny」とか「ダウン」といった言葉で検索していたよう
- そのとき被告人は
- はじっこで座っていてくれと言われていたので、座っていた
- プログラムソースはどこにあるかと訊かれたか
- 訊かれていない
■ここまでで、14時30分頃。私用がありましたので、私は退廷しました。
◆このあとは、コメント欄に「ななしさん」さんから、概要をお教えいただきましたので、そちらも参照されてください(「ななしさん」さんアリガトウございます。)。
◆なお、知人が私よりも1時間ほど長く傍聴しており、いくつか教えてもらいましたので掲げておきます。モチロン私が傍聴した部分だけでなく、このまとめについても、大まかなモノに過ぎないこと等々ご注意ください。
- 検証調書によると、12:17に検証開始
- 捜査員はそれから2時間ほど送信実験を行うが、アップロード不可能なダウンロード専用ヴァージョンだったため送信できず困惑。被告人がその旨忠告すると、「まあ、ちょっとだまって見ていろ」と取り合わず継続
- 14:49に(捜査官が音を上げ)、被告人が代わってコンパイル作業を開始
- 15:06に作業完了
- その後、警察署に連行され、取調べ。主に、Winny開発の目的と経緯について。しかし、被告人が述べた内容はほとんど調書に書かれず。訂正要求は取り合ってもらえず
- Winnyに興味を持ったきっかけは、フリーネットの技術に共感し、あらたなアイディアが閃いたことによるほとんど発作的衝動。調書に書かれたような「著作権概念を技術者の立場から根本的に変えてやろうという意図」では全くない。調書はデタラメが多い
■【情トラ】まとめ
【参考】http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20051109k0000e040022000c.html
(前略)
著作権侵害をまん延させる意図や法律違反のほう助を認めた形になっている書面について「刑事や検事が勝手に書いた作文」などと述べ、真実ではないと主張した。
弁護側の質問で、金子被告は「自分が言っていないことについて、修正を求めたが直されなかった」などと述べ、署名したことについては「警察に協力するつもりだったので、機械的に押した」などと説明した。
(後略)
さてさて、次回以降の予定はどのようになっているのでしょうか。弁護側証人もお一人だけではないとも思われますし。「ななしさん」さんのカキコミによれば、検察官からの被告人質問が次回以降とのことですが、コレは見逃せない。
やはり、事件を一方当事者だけではなく、双方当事者からの視点でみると、それぞれの表現がコレだけ違うのかといったこと等々等々等々がベンキョーになります。一応、次回も傍聴に行きますので。何とか調整して、次回は最後まで傍聴しようかと思っています。