【おべんきょ情トラ】身につくロースクール/商法1/店舗や営業資金の借入と商行為法の適用

■あくまで個人的なまとめを掲げています*1


 「個人が、営業活動を開始する目的で、店舗や営業資金を借り入れる」ことは、商法501条及び502条に規定される商行為には該当しない。そのため、原則として、この行為には商行為法の規定が適用されることはない。
 しかし、その個人にとっては、まさに商法503条1項に定められるところの「営業のためにする行為」であり、両者の違いは、前者が商人以外の者によるものであり、後者が商人によるものであるとの差異ぐらいしか認められないであろう。それゆえに、この行為については、商行為法の規定を適用することが合理的とされることがあると考えられる。つまり、「営業活動を開始する目的で、店舗や営業資金を借り入れる」行為によって、その個人が営業を開始する意思を実現する結果、商法503条1項にいう商人たる資格を取得すると考えることが合理的と認められる場合があるのである。


 では、どのような場合に、「営業活動を開始する目的で、店舗や営業資金を借り入れる」行為に、商行為法の規定を適用することが合理的と認められるのか。これは、貸し方がこの借入を営業の為になす行為と認識していたか場合と認識していない場合で区別すべきであろう。
 すなわち、前者の場合には、借入の利息に関して別段の意思表示がなかったとき、民法404条ではなく商法514条の規定を適用することが、貸し方の利益に資するといえる。この場合、借り方にとっても、民法167条1項ではなく商法522条の規定を適用することが、有利であろう。また、この行為を数人が其一人又は全員の為に行ったときには、商行為法の規定が適用されないと、その債務は個々別々の負担となるが、これは貸し方及び借り方ともに負担となると考えられる。
 対して、後者の場合には、借入の利息に関して別段の意思表示がなかったとき、商法514条ではなく民法404条の規定を適用しても、それは貸し方の認識どおりの利息である。また、借り方も商法の規定を適用されるよりは有利であるといえる。そして、この場合、商法522条ではなく民法167条1項の規定を適用すること及びこの行為を数人が其一人又は全員の為に行ったときに商行為法の規定が適用されないことのいずれも、貸し方及び借り方ともに原則どおりの取引となるだけであって、何ら不利となるところはないと解される。
 ただし、営業資金を借り入れる行為であれば、貸し方はその外形から当該行為の目的を明らかにできないと考えられうるが、店舗を借り入れる行為は、その外形から「営業のためにする行為」と認識しうるのであるから、この後者の場合はありえないと考えられるところである。

*1:このまとめは、【情トラ】が作成したものであり、その内容については無保証ですので、ご注意ください