市民裁判員先行記第40回/Winny事件第23回公判

 京都地裁Winny開発者が被告人となった、著作権法違反幇助に係る事件。第23回公判に傍聴に行ってきました、今回も最初から最後まで。とはいえ,本日は,20分程度で終了。


■傍聴前について

  • 入廷が開始している頃に京都地裁到着。カバンを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後、101号法廷に。
  • 13:30 開廷。傍聴人は,25名ぐらい。


■この傍聴録は、【情トラ】の個人的なメモをまとめたものであり、全てを再現できているわけではモチロンありません。また、【情トラ】の手による編集(表現簡潔化など)も加えておりますし、時には実際に発言されていないにもかかわらず、【情トラ】が理解した(思い込んだ)ものを勝手に付加しまっているトコロもあるかもしれません。さらには、私の理解不足や事実誤認なども、必ずあるはずです。と、イロイロと但書がありますので、その旨ご留意されるようお願いいたします。
■なお、第1回公判からこれまでのWinnyウィニー、ウイニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。ご参考まで。
【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛*1



 今回は、証拠の整理がなされました。次回は,証拠調が終わったということで,検察官からの論告(・求刑)が予定されています(刑事訴訟法293条1項 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。)。


■公判内容について

  • (被告人への告訴状に係る)弁護側からの求釈明に対する検察側の釈明書が,提出されていた模様。これに対して,弁護側からは,新たな証人請求がなされる
    • 弁66号証が,取調べを担当した検察官(?)を証人として請求するもの
    • 弁67号証も,(被告人への告訴状に係る)証人請求
  • また,68号証から72号証までについては,検察官意見は,同意したうえで,信用性を争うとのこと。28号証及び29号証も,同様
  • これをふまえて,裁判長から「取り調べますので,要旨の告知を」と
  • 弁護側から,それぞれにつき,要旨の告知
    • 28号証・29号証は,ローレンス・レッシグ教授及び(アメリカの○○財団の)弁護士による意見書(報告書(?))及びその翻訳文等。その内容は,本件につき,刑事責任を負わせることに反対するといったもの(?)
    • 68号証は,SONYのVTR事件の判決文の存在並びに判決文及びその翻訳
    • 69号証は,グロクスター事件の判決文の存在並びに判決文及びその翻訳
    • 70号証は,オランダのP2Pファイル交換ソフトであるカザーの提供者に対して侵害責任がないとの判決文の存在並びに判決文及びその翻訳
    • 71号証は,韓国のP2Pソフトであるソリバタに関する事件判決文の存在並びに判決文及びその翻訳
    • 72号証は,台湾のP2Pソフトに関する事件判決文の存在並びに判決文及びその翻訳
  • 証人請求の必要性についても,弁護側から要旨の告知
    • (被告人に対する)告訴状は,告訴権者から『(被告人が『著作権侵害が蔓延することを知りながら,あえて開発,バージョンアップを継続した』といった),被告人の主観的態様が,捜査において明らかになることを条件』とする旨の条件付きの告訴状となっており,告訴人の真意が明確でない」との求釈明が,前回公判でなされていたが,弁護側としては,検察側からの釈明に納得していない
    • 訴訟行為には原則として条件を附することは許されないのであって,無効である
    • 告訴とは,「告訴権者が捜査機関に対し犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求める意思表示」のこと。「親告罪においては訴訟条件(訴追を適法とし,実体審理・実体判決をするために必要な条件。これが欠けることが判明したときには,直ちに実体審理を打ち切り,あるいは実体審理に入ることなしに,公訴棄却等の形式裁判によって訴訟を打ち切らなければならない」とされる
    • 本件においては,被告人に対する直接の告訴状は,条件付きなのであって,そもそも告訴権者の主観が明らかではないものであるから,無効である
    • また,無条件に被告人に対しその効果が及ぶのであれば,本件では,そもそも正犯に対する告訴もなかったとも考えられる。つまりは,錯誤による告訴である
    • さらに,平成16年5月26日に出された本告訴状の内容は,平成16年5月26日に京都府警に提出されたACCS(?)からの意見書の内容と同様のものであるといえ,この意見書に基づいて告訴状が作成されたと考えられるが,その経緯等が明らかではない(?)
  • 続いて,裁判長から,弁19号証,23号証,24号証(いずれも壇弁護士作成の報告書(?))添付資料を,それぞれホームページの存在を示すためという立証趣旨で,弁73号証,74号証,75号証として証拠とすることにつき,検察官に意見を求めたところ,検察官からは,「同意しますけど,信用性を争う」との回答
  • 弁護側から,それぞれにつき,要旨の告知
  • 246号証から248号証までは,資料の存在という限りで取り調べるとのこと
  • 243号証から245号証は,一部同意があったが,証拠取調請求自体を撤回するとのこと
  • 告訴に関する証人請求については,裁判長から「必要性なしということで却下」との判断
  • これに対し,弁護側からは,刑事訴訟法317条(事実の認定は、証拠による。)違反(?)ということで,異議申立て
  • この異議について検察官意見は,「理由がない」とのこと
  • 以上をふまえ,裁判所の判断として,「理由がない」との判断
  • 一部同意しただけで,不同意とされる証拠で残っているものについては,双方ともに撤回するとのこと(?)
  • 裁判長から,「立証する証拠は残っていませんね」と確認。弁護側から,「訳文のみ,あと2週間ほどかかる」とのこと
  • 次回の期日では,検察官の論告。裁判長が「どれぐらいの時間が必要か」と問いかけ,検察官の回答が「1時間ほど」とのことだったので,7月3日(月)13:30から15:00までを次回期日として指定
  • 以上で,本日の公判は終了

■【情トラ】感想
 次回が,検察側からの論告(・求刑)。次々回が,被告人及び弁護人からの意見陳述(最終弁論)。ということは,とりあえず,あと3回ということなんですよ,,ね?

*1:この連載の目的は、「この公判に関心がありながら実際に傍聴に行くのは難しい方々に、そして(『Winny』に興味がなくとも)、刑事事件の公判とはどのようなものかといった疑問を抱かれるような方々に対して、情報を共有してもらえれば、などと考えて連載しています」というモノです。cf. http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/20060301/p1