市民裁判員先行記第41回/Winny事件第24回公判

 京都地裁Winny開発者が被告人となった,著作権法違反幇助に係る事件。第24回公判に傍聴に行ってきました,今回も最初から最後まで。


■傍聴前について

  • 入廷開始直前に京都地裁到着。カバンを預け,身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)後,101号法廷に。
  • 13:30 開廷。傍聴人は,30名ぐらい。報道陣がいつもより多め。テレビカメラもあり。後頭部が映ったかも。


■この傍聴録は、【情トラ】の個人的なメモをまとめたものであり、全てを再現できているわけではモチロンありません。また、【情トラ】の手による編集(表現簡潔化など)も加えておりますし、時には実際に発言されていないにもかかわらず、【情トラ】が理解した(思い込んだ)ものを勝手に付加しまっているトコロもあるかもしれません。さらには、私の理解不足や事実誤認なども、必ずあるはずです。と、イロイロと但書がありますので、その旨ご留意されるようお願いいたします。
■なお、第1回公判からこれまでのWinnyウィニー、ウイニー)事件公判傍聴録/【情トラ】まとめ(概要も含む。)は、次に掲げています。すべてを読んでみるだけの価値はあるのではないかと考えていますので,ご参考まで。
 ◆【おっかけ情トラ】市民裁判員先行記 - 【情トラ】附゛録゛*1



 今回は,刑事訴訟法293条1項*2に基づき,検察官からの論告(・求刑)でしたが,以下には,その概要だけまとめておきます。なお,改めて注意を喚起しておきますが,本日の公判内容の聴き取り及びそのメモについては,非常に困難なものだったため,以下のまとめには,私の理解不足や事実誤認などが必ずあるはずですし,そもそもメモにとれなかった部分がほとんどです。その旨ご留意されるようお願いいたします。

  • 幇助行為について
    • 被告人は,著作権侵害行為がなされることを広く認識し,認容して,Winnyに関し,あえて計238回ものバージョンアップを行い,その最新版を開発,公開することで,正犯をしてダウンロードならしめ,不当に著作物を自動公衆送信可能にしたことにつき,それを容易にしたことが,著作権法違反行為の幇助に該当する
    • これまで取り調べた証拠により,その証明は十分である
    • 被告人は,本公判において,Winnyの開発等は,実験・検証したにすぎないなどと弁解していたが,以上につき検察官の意見を述べる
  • Winnyについて
    • ※あとで
  • 開発・公開の経緯について
    • ※あとで
  • Winnyの機能等について
    • 徹底した匿名化機能として,キャッシュ機能,暗号化機能を有する
    • キャッシュ機能が,同一内容のファイルを無限に拡散させる
    • キャッシュ機能が,第一次送信者が誰であるのか不明にする
    • 中継ノードに蓄積されるキャッシュの内容の暗号化が,それをアップロードした第三者の犯意を立証することを困難にする
    • このような匿名性の確保が,利用者が逮捕・摘発から免れることができるとの安心感や,著作権侵害行為への動機付けとなる
    • 効率性の向上が,利用者を増やすことにつながる
    • ダウンロード枠増加機能が,著名で,人気がある,違法な著作物をアップロードしようとの動機付けとなる
    • クラスタ化機能が,趣味を同じくするような者の関係を,より緊密にする
    • 被参照量の閲覧機能が,どのファイルが人気があるの判別できるようにする
    • 検索機能が,必然的に利用者同士が知っている名称のファイルを利用しようという契機になる
    • ポートリストのジャンル欄の設定・公開が,違法複製著作物を共有することを促す
  • 匿名のまま効率よくファイル共有することについて
    • 匿名化機能が,著作権侵害行為をしても,逮捕・摘発を免れるとの安心感を与え,当該行為の拡散の連鎖をうみだした
    • 現に,正犯のひとりは,そうした匿名化機能が,誘因動機になったと証言している
    • これらの機能は,全くの無法状態を惹起し,著作権侵害行為を蔓延させる高度の危険性を有する
  • Winnyでやりとりされるファイルについて
    • 捜査結果によれば、Winnyでやりとりされているファイルの9割が,一般コミック,映画,ドラマ,アニメ,18禁アニメ,無修正,ゲーム,アルバム等の違法複製著作物であり,正犯のひとりが有していたファイル2447のうち,99%が違法複製著作物であった
    • ACCSが実施したアンケート調査の結果でも,多量の違法複製著作物がやりとりされていることがわかった,との証言がなされた
    • 被告人は,これらの違法複製著作物のやりとりについて,何ら防止措置を講じず,コンテンツ産業に打撃を与えた
    • Winny開発者の逮捕が技術開発に萎縮効果を及ぼす,などといったことを聴いたことがあるか,との質問に対し,言われたことはないとの証言もある
  • 被告人による違法性の認識等について
    • 被告人は,A*3とのメールで,「すぐ広まるものは,たいてい悪用ができる」,「作者が悪用できることを宣伝しなければよい」,「『悪貨が良貨を駆逐する』」,「テストのときは,ファイルを絶対にアップしないようにしている」と記した
    • 被告人は,違法性を意識して,周辺の者に対してすら,Winnyの開発者であることを秘匿していた
    • 被告人は,Winnyを特集した雑誌を所有していた
    • 被告人は,捜査における調書でも,さらに裁判官による勾留質問においても,犯意を認めている
    • 被告人は,違法なファイルのやりとりに関する話題にみちあふれるスレッドで,Winny開発に関する意見交換をしながら,開発・公開を行っていた
    • 被告人は,β版として試作品の技術検証を行っていたとしながら,α版を公開していた
      • これに対して,弁護側から,「α版とは,内部で開発中の試作品のことをいう」という旨の異議が申し立てられました
    • ※あとで
  • 情状について
    • 確定的犯意に基づく犯行であること
    • 匿名性を確保することにより,悪質かつ巧妙に,一般ユーザをして著作権侵害行為を行わしめ,その背後にいながらにして,違法複製著作物を得るなどの被告人の行為は,卑劣かつ悪質なものであること
    • 結果については,著作権侵害行為が蔓延し,膨大な著作物データが無償で送受信され,著作権者が収益を得られないなど被害は深刻で重大であること
    • 被告人には,真摯な反省の態度が見られないこと
    • 著作権侵害行為を助長するような行為に対しては,厳に対処しなければ,同種の事案がつづくおそれもあり,社会的影響が大きいこと
  • 量刑について
    • 懲役1年に処するのが相当
  • 次回について
    • 9月4日(月)13時30分から。弁護人からのいわゆる最終弁論及び被告人からの意見陳述が行われる予定


※以上は,すべて未定稿。特に「あとで」と記載したところは,あとで掲載します。「あとで」と記載していないところについても,適宜,訂正・追加・削除等がありえますので,ご注意を(7/3 20:40 現在)。


【参考】

*1:この連載の目的は、「この公判に関心がありながら実際に傍聴に行くのは難しい方々に、そして(『Winny』に興味がなくとも)、刑事事件の公判とはどのようなものかといった疑問を抱かれるような方々に対して、情報を共有してもらえれば、などと考えて連載しています」というモノです。cf. http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/20060301/p1

*2:証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。

*3:一応,Aとします